W杯出場枠の拡大は問題山積だ。国際サッカー連盟(FIFA)の理事を務める日本サッカー協会の田嶋幸三会長(59)が12日、理事会が行われたスイスから帰国し、都内で会見を行った。W杯出場枠が2026年大会から現状の32から48へ増えることが決まった経緯を説明。だが、指摘されている様々な問題点に関しては具体的な解決策がないことが浮き彫りになった。

 今回の増枠で最も懸念されていることの一つが公平性の確保だ。

 現時点で最有力となっている大会方式は1次リーグを3チームずつ16組に分ける案。そのため試合を行うのは各節2チームのみで、1チームは待機する形となる。決勝トーナメント進出国の決定が最終節までもつれた場合、そこで試合を行う2チームが結果を“操作”することが可能なため、無気力試合や八百長を引き起こす危険性がある。

 田嶋会長は「(従来の)4チームでもそういうケースが出てこないわけではない。1チームが残ることで不平等は以前よりあるかもしれないが、目をつむれる程度なんじゃないか。(公平性は)項目としては小さい評価だった」と説明。具体的な対策は不透明なままで「他のこととてんびんにかけたということでは」とFIFAが目先の収益増を優先させ、近年深刻化している八百長問題への対応はなおざりになった感が否めない。

 欧州を中心に広がっている“レベル低下”の批判。これについては「今、アジアの予選も年々厳しくなっている。(アジアで)あと2〜3チーム増えてもそれほどおかしいことではない。(昨夏の)欧州選手権でもアイスランドがイングランドに勝つ時代。W杯に(出るのに)ふさわしい国がどんどん増えてきている」と答えた。

 しかし欧州ならいざ知らず、出場枠の大幅増が濃厚なアジアやアフリカでは、FIFAランキング100位以下の国が出場するケースも予想される。最高峰の舞台であるはずのW杯であまりに大差がつく試合が増えれば大会の魅力が薄れ、ファン離れにつながりかねないが…。

「最初は3―0、4―0の試合が出てくるかもしれない」と認めつつ「W杯に出ることによって得る収入、それを使うことによってマーケティングの価値も上がる」。FIFAの収入増が弱小国の強化につながり、世界各地でファン層が拡大する側面を強調した。

 出場枠の大幅増のメリットは、田嶋会長の言葉を借りるまでもなくFIFAの収益アップだ。

 決定の経緯について田嶋会長は、40チーム案や、16チームをシードしたうえで32チームがプレーオフを行う案など4案があったと説明。FIFAが各案をさまざまな視点から点数を付けて評価し、今回決定した方式は「ファイナンシャルの部分で1位だった。お金の収入が一番良かった」。つまり収益増を最重視して決めたというわけだ。

 もちろんサッカー界全体の発展を考えれば“カネ”が必要なのは確かだが、商業路線の急進的な拡大は大きなリスクもはらんでいる。

「カネにフォーカスしすぎると、これまで散々問題になってきた賄賂とかそういうほうの危うさはあるのでは」と大手広告代理店関係者は指摘。収入の金額と構造の拡大は様々な利権を生み、贈収賄といった汚職の温床となるリスクも増大する。FIFAは昨年発覚した汚職スキャンダルから再生を図っているにもかかわらず、かつてと同様の拝金主義を加速させれば“元のもくあみ”になりかねない。