米国の政治に前代未聞の事態が生じた。8月8日、共和党の国家安全保障問題の専門家約50人が、共和党の大統領候補である不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領に就けば、「われわれの国家の安全保障と国民の幸福が危険にさらされる」との声明を発表したのだ。

専門家らの一貫した言い分は、「トランプ氏には大統領としての資質、経験が欠けている」というものだ。8月半ばには共和党のアジア外交の専門家8人もトランプ氏を非難し、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏の支持に踏み込んだ。

2001年から05年までジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障会議アジア責任者を務めたマイケル・グリーン氏は、「これから数カ月間で共和党の元国務長官でトランプ氏を非難する人物が出てくる可能性が高い」と言う。

まさに身から出たサビ

こうした反発を招く元凶は、言うまでもなくトランプ氏の有害な思想と常軌を逸したパーソナリティにある。グリーン氏はこう話す。

「最近の大統領もそれぞれ有害な思想を持っていたのは確かだ。しかし彼らは世界について学び、適応しようとしていた。それに対しトランプ氏は自分自身に陶酔しており、複雑な国際問題について誰からも学ぼうとしていない」

トランプ氏は毎朝起きると、オフィスで自分の名前をグーグルで検索し、自分について書かれたページを何十枚か印刷するという。それを読み終えた後、ツイートを始める。そこからも、学ぼうとする姿勢は伝わってこない。「トランプ氏は政策アドバイザーの誰からも、要約すら聞いていないのだ」(グリーン氏)。