9月のベルリンには世界中から熱い視線が集まる。9月1〜6日には欧州最大の家電見本市「IFA」が開催され、さまざまなスマートフォンの新製品が披露された。9月25日には世界を代表する都市マラソンの一つ、ベルリンマラソンが行なわれる。その間隙を縫って開催されるのが、世界最大の鉄道見本市「イノトランス」である。20日朝10時(日本時間20日17時)のオープニングセレモニーを皮切りに、23日まで4日間にわたって開催され、各社が新製品や経営戦略の発表を行う。

高速列車は見本市の花形

世界の鉄道見本市の中でもイノトランスのスケールは群を抜く。会場内に鉄道の引き込み線があり、鉄道車両を1編成丸ごと持ち込むことができるのだ。ゆえに新型車両の初披露はここで行われることが多い。

そして、イノトランスで最も脚光を浴びるのは高速鉄道車両の展示だ。世界の鉄道産業を牛耳る「ビッグスリー」、すなわちアルストム(フランス)、シーメンス(ドイツ)、ボンバルディア(本社カナダ、鉄道部門の本拠地はドイツ)の3社が競い合うように新型の高速鉄道車両を出展する。

前回、2014年開催時の目玉は、ボンバルディアが中心となって開発したイタリア鉄道の高速鉄道車両「フレッチェロッサ1000」だった。営業最高時速360キロメートル、設計最高時速400キロメートルを誇る怪物マシンだ。

だが、高速鉄道車両の展示はこれだけ。会期中に各社の経営トップが示した高速鉄道車両の開発構想の中で、速度性能の向上に関する言及はほとんどなかった。前回のイノトランスで、「高速鉄道開発のトレンドが変わったのではないか」という異変の兆候は見えていた。

その兆候が現実化したのが、今年のイノトランスの特徴ともいえる。シーメンスが出展した高速鉄道車両は、トルコ国鉄で来年から営業運転を開始する「ヴェラロ・ターキー」である。ヴェラロは、ドイツ鉄道の高速鉄道車両「ICE3」をベースに開発され、シーメンスは各国に対し売り込みに躍起だ。トルコ以外にはドイツ、スペイン、ロシア、中国などに納入実績がある。2015年からは英国とヨーロッパ大陸を結ぶユーロスターにも採用されている。トルコ向け車両の最高時速は300キロメートルだが、ユーロスターは最高時速320キロメートルで走る。