父親。母親。人間である以上、誰もがいつかは亡くなってしまいます。親が亡くなった日、あなたは悲しみに暮れることでしょう。同時に悲しむ時間を与えられないくらいのスピードで、いろんな決断を迫られます。葬式、相続、お墓、ほかにもたくさんのこと――。

私は葬儀社の役員として、15年以上にわたって年間1000件を超える葬儀供養などの相談に携わり、子どもが親を見送るという儀式に何度も立ち会ってきましたが、親が亡くなることで起きる悲劇も多く見てきました。わずかな遺産をめぐって、遺族間で骨肉の争いに発展したり、誰が墓の管理をしたらいいのかでもめたりします。

拙著『親とさよならする前に〜親が生きているうちに話しておきたい64のこと』でも詳しく解説しているように、親が元気で生きているうちに話して決めておけばいいことはたくさんあります。その1つがおカネの問題でしょう。私が開いている終活セミナーでも最も関心の高いテーマです。

早めに親の資産状況を把握する

2015年に総務省が発表した「高齢夫婦無職世帯の家計収支」によると、高齢の夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の場合、1カ月の生活にかかるおカネは平均27.5万円。年金などの収入は平均21.3万円で、毎月6万円以上が不足している計算になります。2013年に生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」によれば、ゆとりある老後生活を送るためには1カ月あたり35.4万円が必要になるという結果も出ています。

たとえば65歳のリタイア後から男性平均寿命80歳までの15年間、最低限の生活を送るために毎月6万円が不足したとすると「6万円×12カ月×15年=1080万円」。ゆとりある生活を前提とすれば毎月の不足は14万円となる計算で、「14万円×12カ月×15年=2520万円」という莫大な支出になります。

足りないぶんは、貯金をはじめとする、資産を取り崩していくしかありませんが、この35.4万円の中には介護や医療に必要なおカネは含まれていません。健康であることが大前提なのです。状況によっては、親の介護費用や入院代、葬儀代を、子どもであるあなたが負担することもありえます。まずは、早めに親の資産状況を把握しておきましょう。