9月21日に公表された日本銀行の「総括的検証」。日銀はこれまでの金融緩和によって「失業率は3%まで下がり、ベアは3年連続で実施された。日本の経済・物価は好転し、デフレではなくなった」と自画自賛した。仮に異次元と言われた金融緩和をやっていなければ、4つのうち3つのケースでデフレが続いていたとの試算も公表した。

評価の定まらない日銀の枠組み

しかし、国民にそんな実感があるだろうか。2013年、異次元緩和が始まった当初は株価が上がり、経済に好転の兆しがあったが、その後は円安になっても輸出が伸びず、企業収益が改善しても賃金は思ったように上がっていない。

そもそも日銀が目標としていた「2年で物価上昇率2%」は、3年強がたった今も実現していない。日銀はその理由として原油価格の下落や、2014年の消費増税後の需要の弱さなどを挙げている。

そこで日銀は総括的検証に合わせて、金融政策の新たな枠組みを発表した。ポイントは膨大な国債の購入によって金利を引き下げる「量」を軸とする政策から、「金利」を軸とする政策に転換すること。そして金利を短期だけでなく、長期まで含めコントロールすることだ。

中央銀行が操作できるのは短期金利だけで、中長期金利は市場で決まっていくというのが金融政策の常識。今回の日銀の枠組みはその常識を破っている。それでも黒田東彦総裁は、当日の会見で「長期金利は十分コントロールできる」と自信を見せた。これまでの膨大な国債やETF(指数連動型上場投資信託)の購入も常識離れしていたが、そこに今回、長期金利の操作が加わる。

日銀の新しい枠組みは常識破りだ(撮影:今井 康一)

日銀の新しい枠組みに対する評価はまちまちだ。金利を政策目標にすることで金融政策の持続可能性が高まったという評価。マイナス金利の深掘りが回避され、銀行に対する悪影響が回避されたという評価。他方で国債購入の弾力化によって金融緩和が後退したという評価もある。つまり金融緩和が強化されたのか、後退したのかの判断すら定まらない。

日銀の今回の試みは、金融政策の「新常識」となりえるのか。