『熱狂の王 ドナルド・トランプ』の著者で、トランプの動向を追い続けてきた米国人のピューリッツァー賞受賞ジャーナリストが迫った実像。

まるで意地悪な女の子のように、ドナルド・トランプは二度と私と口をきかないと決めた。交渉で話をまとめる達人のはずの彼は、全7回のインタビューが5回目まで終わったところで、アシスタントを使って話をぶち壊した。その後はまったく話していない。理由は……彼が嫌っている人物と私が話をしたからだ。あの気性の激しさを考えれば、驚くことではない。

トランプは、相手が自分の言うことを聞かないと機嫌を損ねる。そして機嫌を損ねると、その相手を死んだものと見なす。以前に本人が言っていたとおりだ。「私に何かしてきたやつは、死んだのと同じだ。もう終わり。やり直しなどない。世界には何十億も人がいる。そんなやつらは必要ない」のだと。

トランプはそのキャリアを通じ、幾度となく訴訟をちらつかせては記者たちを脅してきた。それがあまりに頻繁なため、記者は「訴える」と言われないと、自分だけ無視されているのではないかと感じるほどだという。私との初対面のときも、トランプはちょっとしたやり取りや冗談まじりの会話を交わしながら、先々にこちらを訴えることを考えていた。

大統領候補としてのトランプ

2015年6月の晴れた日に、彼はトランプ・タワーのロビーに報道陣を集めた。指定の時間になると、トランプは妻のメラニアの何歩も後ろからエスカレーターで降りてきて、大統領選への出馬を表明した。

大統領候補のトランプにとってタブーはないも同然で、Twitterでアメリカの殺人統計に関する人種差別的なデマをリツイートしたこともある。実在しない「犯罪統計局」を出所とするその偽の「データ」では、白人のアメリカ国民が殺された際に、その加害者の81%が黒人だとされていた(FBIの2014年の統計によれば、実際は白人被害者の82%が白人に殺されている)。