フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71)が今、世界の関心を引き付けている。米国のオバマ大統領に対する侮辱発言、超法規的な処刑もいとわぬ「麻薬撲滅戦争」を始めるなど、スキャンダラスな人物としてとらえられているが、国内の支持率は8割超と圧倒的だ。

ドゥテルテは、既得権益の集積で凝り固まったフィリピン国家の非効率で腐敗した構造を、断固たる姿勢で破壊しようとしている。

規制の数だけ賄賂を求める役所の腐敗、故障ばかりの高架鉄道、5カ月ごとにクビを切られる短期契約雇用の横行、警察と犯罪集団がグルになった麻薬ビジネスの蔓延……。腐敗したシステムに対する怒りと不満が人々にドゥテルテの鉄拳を渇望させた。

弱き者への優しさも

その経歴を振り返えると、まるで「世直し義賊」の姿が浮かび上がってくる。

生まれはレイテ島マアシン町という海沿いの田舎町だ。父は華人系セブアノ人の法律家で、教師だった母はミンダナオ島の先住民マラナオ人(その多くがイスラム教徒)の血を引く。貧しい地方で生まれ育ち、社会的に周縁化された少数者の子孫であることは、ドゥテルテの人格形成に決定的な影響を与えた。

成人すると、マニラの既得権益層に反逆する一方、貧しい地方出身者やイスラム教徒、先住民には共感的な態度を取る。自身がさまざまな民族集団の混血であり、子どもがイスラム教徒と結婚し、8人の孫のうちイスラム教徒とキリスト教徒が半々であることを、国民融和の象徴として誇らしげに語る。

高校時代には悪友とつるんで悪名を馳せ、高校を2回退学させられた過去もある。その後、マニラのリセウム大学政治学部を卒業するが、エリートが学ぶ名門校ではない。