所得税における配偶者控除の見直し論議は、早くも頓挫しかかっている。

なぜなら、来年1月に衆議院を解散するとの憶測が流れているからである。衆議院選挙をするのに、所得税で減税となる低所得世帯がある一方で増税になる高所得世帯が出るとなれば、(増税世帯からの)評判が悪く、とても選挙前の今年中に成案を得るのは難しいのだとか。選挙に怯えて、所得税の見直しには着手できないというのか。

大義なき所得税改革ならば、選挙には耐えられない。しかし、「働き方改革」に関連づけて、女性が就業調整を意識しなくて済む仕組みになるよう、所得税の控除を変える改革は、早期に求められており、選挙時の十分な大義となろう(本連載「配偶者控除見直しで焦点となる増減税の境目」を参照されたい)。しかも、税収中立という閣議決定を守りつつ、専業主婦世帯も共稼ぎ世帯も含む3分の2を上回る納税者が減税となるような控除の見直しは可能である。

安倍晋三首相は、今年6月1日の記者会見で、「正に税こそ民主主義」と述べた。多くの賛同が得られる可能性を秘めた所得税改革なのに、選挙が近いことを理由にして成案が得られなければ、税について選挙で信を問えるはずもない。それで「税こそ民主主義」といえるのか。

影響が大きい「130万円の壁」

ただ、女性が就業調整を意識しなくて済む仕組みに所得税制を変えるには、いくつか克服しなければならない課題がある。1つには、本連載で既述した配偶者控除である。もう1つは、いわゆる「130万円の壁」である。さらに、今月からはこれに「106万円の壁」が加わる。

配偶者控除にからんで「103万円の壁」があると俗に言われていることは、前回の本連載記事「『配偶者控除の見直し試算』の注目ポイント」でも述べた。

ただ、年収103万円を超えて就業しても、次なる「130万円の壁」が立ちはだかる。「壁」とは、手取りの逆転現象を意味する。つまり、130万円を超えて1万円多く稼ぐと、130万円までで稼ぐのをやめた時より、手取りの所得(可処分所得)が逆に減ってしまう、余分に働いただけ手取りの所得が減って損をする。だから、それを超えないように就業調整する。

なぜそうなるか。それは、社会保険料負担が生じるからである。規定により、課税前年収で130万円以上稼ぐ人は、自らが社会保険料を払わなければならないこととなっている。130万円に満たない人は、それ以上稼ぐ家族の誰かの扶養家族として、自分自身では保険料を一切払わなくても、社会保障の恩恵が受けられる。だから、130万円以上になると手取り所得が突然減るのだ。