「トランプは米国の『暗黒面』を巧みに利用した」(9月30日配信)に続いて、『熱狂の王 ドナルド・トランプ』の著者であり、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストがトランプのルーツに迫る。

「遺伝子」と「幼少期の経験」

筆者はドナルド・トランプの私生活・事業・政治活動などを調べる仕事に3年を費やした。そして、どういった経験から、また何の影響によって、横暴や誇大妄想といった特性を備えるようになったのか、その答えといえそうなものを見出した。

トランプは、私たちがどのような人間になるかを決めるのは、「遺伝子」と「幼少期の経験」だと考えている。彼の父親のフレデリック(フレッド)・トランプは、多くの関係者の話から、極めて厳格で多くを求めるだけでなく、抜け目なく、欺瞞に長けた人物だったといえる。また、後で述べるが、復員軍人や中間所得層に住宅を供給するためのプログラムを利用して不当な儲けを手にしていたことが、政府による二度の捜査で暴かれている。

フレッドには、友達をつくったり社交の場で活躍したりするのに必要な人当たりの良さや社交性はなく、「上手な話し方と人付き合い」教室に通ってまでどうにかしようとしていたが、効果はなかった。一方、母親のメアリー=アンは気が強く活発な女性で、パーティの中心になるような愛嬌と度胸があり、人を楽しませるタイプだった。夫とは対極の性格だ。

さらにもう少し時間をさかのぼってみよう。フレッドの父で、ドナルド・トランプの祖父にあたるフリードリヒは、ドイツで生まれ育ち、1885年、16歳のときにアメリカに渡った。当時、入国管理官が移民の名前の綴りを間違えることがよくあり、トランプという名字も、ニューヨークの入国管理局で、もともとの綴りである「Drumpf」ではなく、「Trumpf」として登録された。