農薬を舞台に世界的な大再編が相次いでいる。今年9月中旬、独バイエルによる米モンサントの買収交渉が両者間で合意に達した。買収額は7兆円近くにも及ぶ。独禁法をクリアして買収が実現すれば、売上高は農薬だけで1.5兆円、種子を含めて2.7兆円規模と世界で断トツになる。

バイエルはシンジェンタ(スイス)と並ぶ農薬の世界最大手。一方、種子で世界最大手のモンサントは大豆、トウモロコシの遺伝子組み換え種子(GMO)で圧倒的なシェアを有し、農薬でも除草剤のベストセラー「ラウンドアップ」を有する。

世界の農薬分野では、昨年秋に米国のデユポンとダウケミカルが経営統合を発表。ダウは汎用の石化製品、デュポンは機能性材料で有名だが、両社は農薬でもそれぞれ「世界ビック6」の一角だ。今回の経営統合は収益性の高い農業関連事業の規模拡大が目的の一つと見られており、統合後に事業分割で農薬・種子の専門会社を立ち上げる。

また、今年2月には、中国の化学メーカー、中国化工集団(ケムチャイナ)がシンジェンタ買収を発表。中国化工は2011年にジェネリック農薬のADAMA(イスラエル)を買収しており、今度は4兆円以上の資金を投じて、世界大手のシンジェンタをも傘下に収める。

大手企業の相次ぐ再編で、寡占化が一段と進む世界の農薬業界。こうした中、日本の農薬メーカーは、果たして海外を舞台に戦っていけるのか。国内勢で最大手、住友化学の農薬事業を率いる西本麗・専務執行役員に生き残り戦略を聞いた。

増加する開発費負担が再編のトリガー

――海外勢による相次ぐ大型再編の背景をどう見ているか。

農薬や種子は成長産業だ。過去40年間で世界の穀物需要は2倍に増えた。新興国の人口増加や中間所得層の拡大などにより、今後も穀物需要は増えていく。となれば、農薬や種子の市場も中長期的に伸びていくわけで、事業の成長性は非常に高い。

一方で、医薬と同じように、農薬でブロックバスター(大型の新商品)を生み出すには多額の研究開発費がかかる。近年は安全規制の強化で開発費の負担がより重くなっており、それが再編のトリガーになっている。

また、長期的には成長産業だが、足元の事業環境は良くない。穀物市況の下落により、農家の農薬購入意欲が減退しているからだ。特にブラジルは需要の落ち込みが大きい。海外メジャーは軒並み関連事業の収益が悪化しており、再編で効率化を進めたいのだろう。中国化工によるシンジェンタ買収に関して言えば、これはちょっと特殊で、中国の人口を養うための完全な国策だと思う。