脳の性質を理解すれば、度忘れや不注意、勘違い、さらには誤判断も予防できるという。『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』を書いたトレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏に詳しく聞いた。

──私自身、「おっと、忘れた」など、日常茶飯事ですが。

仕事のミスは、記憶力や注意力、コミュニケーション力、あるいは判断力が低いから起こるのではない。中堅やベテランになれば自然とミスが減るわけでもない。実はわれわれの脳自体がミスを起こしやすいメカニズムになっている。それは、「忘れた」というミスに限らず、そのほかのミスも脳の「記憶」にほとんどの第一原因がある。

脳は現代の生活には適していない

──記憶が原因ですか。

脳は今のわれわれの生活に完全には適応していない。動物だったときの記憶に適したままで、今のようなたくさんの情報を処理するように作られてはいない。ミスは脳の持っているメカニズムからして十分起こりうる。記憶のメモ帳であるワーキングメモリが端的な例だ。基本的にそんなに容量は大きくない。ただ、そこで瞬間的に覚えることはでき、覚えたという実感もある。だが、容量が小さいので、続いてほかのところに注意が行くとすぐに忘れる。そういう性格がメモリにある。

──不注意とも関係する?

自分が信じられなくなるような「見落とし」もそう。いつも物事をちゃんと見ているつもりでもほとんど省略していて、基本的にはきちんと見ているわけではない。手品師にあるところに注意を向けられると、手品の種にかかわるところに注意が向かないのと同じ。これは認知科学の実験で立証されている。だから度忘れや見落としのミスは普通に起きる。自分の注意や頑張りが足りなかったと責める必要はない。

逆に、自分を責めて、頑張ろうとすると、そのためにワーキングメモリを食って圧迫してしまう。そこに注意が行ってしまい、目の前の仕事に行かず、かえってミスを起こすようになりかねない。