ボーイングのロングセラー旅客機「767」をベースとした貨物専用機「767F」は、近年航空会社に好評を博しているモデルです。その要因はどのようなものなのでしょうか。

旅客型デビューから40年超

 ボーイングの旅客機「767」は、1981年9月に旅客型が初飛行して以来、貨物機と空中給油機の受注が続き、737に続くロングセラーモデルとなっています。ANA(全日空)では2023年6月に就航40周年を迎えます。

 とくに、近年航空会社に好評なのが貨物型の767Fです。2023年5月にJAL(日本航空)が13年ぶりに導入すると発表した貨物専用機も、旅客型改修の-300Fです。なぜ、この767Fが人気を集めるのはなぜでしょう。

 ボーイング767は2014年に旅客型の生産を事実上終了したものの、貨物型と軍用の空中給油機の生産は続いています。胴体の短い-200Fと長い-300Fがある767Fのうち人気は767-300Fのようで、JALが導入する貨物専用機も、旅客型改修のこのモデルでした。

 ボーイングのライバルとなるエアバスにはA300Fがあり、これが767Fの対抗馬とされていましたが、エアバスの公式サイトには、現有機としてA300シリーズの紹介は既にありません。それよりもエアバスは、A300の後発タイプで、貨物コンテナ搭載の自由度が勝るワイドボディ(複通路)機であるA330-200Fを、複通路機としては胴体直径が小さい「セミワイドボディ機」の767Fのライバル機として充てているのでしょう。

 767Fの人気はなぜ続いているのでしょうか。まずひとつ目には、後継機とされた787の貨物型がまだ登場していないこともあります。しかし、767シリーズ自体の実績も考慮すべき点といえそうです。

今なお人気「767F」の強みとは

 ボーイング製ハイテク機の先駆けとして登場した767の旅客型は、航空機関士を廃し、正副パイロットの2名体制での運航を可能にして人件費を減らしたうえ、省燃費や中型の機体サイズが航空会社の路線網展開に合い、多くの航空会社で使われました。信頼性も高く、JAL・ANAなどでも長い間旅客型が使用されています。一方で、軍用の空中給油・輸送機のKC-46Aも生産継続中で、製造ラインも維持しています。

 767-300Fの計画が正式に始まったのは1993年と、旅客型の初飛行から12年後と遅めでしたが、767自体の良さは航空会社で知れ渡り、大西洋および太平洋横断での運航費が優れていることも示されました。

 たとえば米航空貨物会社の大手フェデックスでは、767と同時に開発された姉妹機で、コクピットも共通化が図られている「757」の貨物型も使用。両機の共通性を活用して運航費の削減に努めています。航空会社によっては、こうした使いやすさの秘訣になっているのでしょう。

 また、新型コロナがまだ流行する前だった2019年10月、海外メディアなどを中心に、767-XFと称したリニューアル構想が検討されていることも紹介されています。これは旅客機767-400ERをベースに、ボーイング787などにも搭載された、ゼネラル・エレクトリック製大直径エンジン「GEnx」を載せたもので、着陸装置の設計なども変更されたモデルとされています。ただしこの構想は、現在大きな進展はないようです。

 しかし、旅客型の事実上の生産終了から5年後にこういった新型機の構想が挙がることは、767Fの人気ぶりを示しているといってもよいでしょう。

 なお、後継機とされる787の貨物型は、胴体にアルミ合金ではなく、複合材が多く採用されているため、貨物ドア周囲の強度問題が取り上げられ、開発のゴーサインは明確に下っていません。その一方で、767Fは設計が従来のものであることから、新型機と比較して二酸化炭素排出量が多くなる傾向です。その抑制のため、767Fは既存の777Fともども2027年末に生産を終了する必要があるとも言われています。

 高い評判を保ち続ける貨物機767F。その将来は、787貨物型の開発計画がどのように進んでいくかも、大きく関わってきそうです。

※誤字を修正しました(6月2日12時00分)