『淵に立つ』ってどんな映画?



郊外で小さな金属加工業を営む鈴岡家のもとに、ある日“夫の旧い知人”で最近まで殺人罪で服役していた八坂草太郎が現れ、夫・利雄、妻・章江、娘の蛍との奇妙な共同生活がスタート。最初は戸惑いを見せたクリスチャンの章江だが、自分の教会活動に参加したり、蛍にオルガンを教える草太郎に次第に好意を抱くようになる。一方、草太郎に負い目がある利雄は、妻と草太郎の親密さを黙認する。そんなある日、事件が起こり…。



観るべき理由:1――日本映画界の救世主・深田晃司監督の最新作



最近の日本映画は漫画原作ものや、よく見る俳優ばかりが出演していて興味が沸かない…。もしそんな風にお嘆きならば、ぜひ深田晃司監督の作品に触れてみては? 深田監督は1980年生まれの俊英監督で、これまで東京国際映画祭日本映画「ある視点」作品賞やプチョン国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞した『歓待』、二階堂ふみが主演し、ナント三大陸映画祭グランプリに輝いた『ほとりの朔子』、放射能汚染された近未来を舞台に難民とアンドロイドの交流を描いた『さようなら』といった作品で、数々の栄冠に輝いている。



最新作『淵に立つ』もまた、第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門の審査員賞を受賞し、国際的な評価を確固たるものにした深田監督。日本映画界に漂う閉塞感を打ち破る“救世主”として注目すべき存在なのだ。



表彰状



観るべき理由:2――家族の崩壊と再生、その先に衝撃の結末!



そんな深田監督が『淵に立つ』で描くのは、「異分子の侵入によって崩壊する家族」がたどるミステリアスで驚くべき8年間の出来事だ。異分子とは突然、鈴岡家にやってきた殺人犯、草太郎のこと。一家の主である利雄との間にはただならぬ過去がありそうだし、そんな危険な男に妻の章江はなぜか心惹かれてしまう。



もともとは他人だった男女が結婚し、夫婦、そして家族となるという“当たり前”の事実が、実は当たり前だからこそ壊れやすいという真実。日本映画において、もはやテンプレ化した家族愛にメスを入れる深田監督の鋭くも独創的な切り口には目が覚める思いだ。「観客とともに崖の淵に立ち、人間の心の奥底の暗闇をじっと凝視するような作品になってほしい」(深田監督)。衝撃の結末は、観客の感性を刺激し、日本の映画界全体を大きく揺さぶるはずだ。



観るべき理由:3――主演作が2年連続でカンヌ栄冠、俳優・浅野忠信の躍進止まらず



家族を崩壊させた途端、姿をくらませてしまう主人公の八坂草太郎を演じるのは、国際的に活躍する俳優・浅野忠信。昨年、主演作『岸辺の旅』(黒沢清監督)が第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞を受賞しており、浅野にとっては2年連続で主演作がカンヌで栄冠を手にする結果となった。長年、第一線を走り続けたキャリアは今、何度目かのピークに達していることは間違いない。



本作でもその存在感は圧倒的。悪でもなく善でもなく、「ただそこにいるだけ」ですべてを破壊する草太郎の怪物的な魅力と魔力が、スクリーン越しに見る者の心にまで侵入してくる感覚だ。この年末には、出演したマーティン・スコセッシ監督作品『沈黙−サイレンス−』が全米公開され(日本公開は2017年)、アカデミー賞レースにも本格参戦する浅野忠信の躍進が止まらない。



舞台挨拶にて

舞台挨拶にて




(撮影:文・内田涼)


映画『淵に立つ』

10月8日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー







監督・脚本・編集:深田晃司(『歓待』『ほとりの朔子』『さようなら』)

出演:浅野忠信、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治

主題歌:HARUHI「Lullaby」(Sony Music Labels Inc.)

配給:エレファントハウス、カルチャヴィル