自叙伝的エッセイ『どくとるマンボウ航海記』(1960)など数々の作品で愛される小説家・北杜夫。そんな北が学童誌に連載後、1972年に単行本として発行した小説『ぼくのおじさん』を原作とする同名映画が11月3日に公開される。


哲学者で変わり者の「おじさん」を演じた松田龍平、おじさんの甥っ子である小学4年生「春山雪男」を演じた大西利空の2人が、本作の見どころや「優しい温度を保てた」という撮影当時について語ってくれた。



松田、完璧に暗記した利空君にセリフを教えてもらう



──まずは今回のお二人が出演した映画『ぼくのおじさん』の印象、現在の心境などを教えてください。



大西利空(以下、大西):試写の時はドキドキしていたけど、観たらすごく面白くて、ちゃんと自分が演じられていてホッとしました。



松田龍平(以下、松田):脚本を初めて読ませて頂いた時は、どんな映画になるのか全く想像ができませんでした。最終的には、色んな意味で想像を超えた映画になったと思います。初めて、自分の映画を観て癒やされました。



──利空くんは、台本を現場で一切開かなかったという話ですが。



大西:セリフは台本もらってから毎日1〜2回読んで覚えました。毎朝起きてからとか、学校から帰ってきてからとか…とにかく毎日読んだので撮影には全部覚えてから行きました。



──「雪男くん」のイメージはどんな風に作り込みを?



大西:あまり役作りしちゃうと(意識し過ぎて演技が)固まっちゃうと思ったので、役作りし過ぎないようにして、撮影に行きました。



(C) 1972 北杜夫/新潮社 (C) 2016「ぼくのおじさん」製作委員会

(C) 1972 北杜夫/新潮社 (C) 2016「ぼくのおじさん」製作委員会




松田:利空はセリフが完璧で、僕のセリフまでちゃんと覚えていたんですよ。だから「次、おじさんのセリフ何だっけ?」と聞いたりしていました。頼もしかったです。僕の役は、台本を頂いた当初から「おじさん」と書いてあって名前がない。



ただただ「おじさん」、という役。でも叔父のおじさんだから、若いおじさんがいてもいい。そう思って色々イメージしました。



──松田さんが本作のために考えた「おじさん」のイメージとは?



松田:「おじさん」は哲学者であり、インテリぼんくらのぐうたらおじさん。割とうんちくが多いです。「おじさんはすごいこと言ってるぞ……!」という喋り出しは意識しました。小学生の雪男にもうんちくを語りかけるんですけど、それに対して雪男が心の声でツッコミを入れる。そのやり取りがすごく面白いです。



──本作でお二人は、まるで相棒同士のように始終一緒です。松田さんは、今までこんな風に子役の役者さんと絡んだ経験は?



松田:ないですねぇ。



──その分、緊張や苦労などは?



松田:現場では、完全に利空がムードメーカーでした。2人で撮影する時は、本番ギリギリまでキャッキャしていました。だからいい意味で変な緊張感がなくて、優しい温度を保ちながら撮影に臨めました。



──利空くんは、「おじさん」とのやり取りはいかがでしたか?



大西:「おじさん」は言い訳とか屁理屈とかが「毎シーン言ってるんじゃない!?」というくらいすごくいっぱいあった。それに、本当にぐうたらおじさんでした。



ハワイでの撮影も二人の息は乱れず 戸次重幸はウクレレで暴走?



ハワイの撮影は

ハワイの撮影は「浮かれないよう気をつけようと」(松田)




──映画の後半は、主にハワイが舞台となります。現地の人とも演技上の絡みなど、英語圏での撮影にまつわる苦労や思い出は?



松田:ライフルを持っているコーヒー農園の「ボブ」という役の外国人の役者さん(編注:サイモン・エルブリング)が、日本人キャスト皆が英語を喋れないから、場を和ませようと思ってウクレレを持ってきて、車で弾いてくれたんですよ。



そしたら弾き始めて5分後に、共演者の戸次重幸さんが「弾かせてくださいよ!」とウクレレを奪って、現場に着くまでコード表を見ながらずっと弦を触り続けていたんですよ。ほぼ弾けてなかった(笑)。



大西:あったあった(笑)。



松田:その外国人の役者さんが「ええ!? 弾けないのかよ、なら返してくれよ」みたいな顔してるけど、戸次さんは夢中(笑)。戸次さん、スゴい人だなと思いました(笑)。



──利空くんは、何か思い出に残っていることは?



大西:撮撮影が夕方には終わる事も多くて、空き時間にはスタッフさんと一緒に海とかプールとか、後はゲーセンとか行ったりしました。思った以上に遊べました。



松田:割と昼の撮影が多かったので、夜空いていた時にね。一緒にけっこうご飯を食べに行きました。ハワイはゆっくりとした時間が流れていて、居心地の良い場所だったから「浮かれないように気をつけよう」と思いました(笑)。



(C) 1972 北杜夫/新潮社 (C) 2016「ぼくのおじさん」製作委員会

(C) 1972 北杜夫/新潮社 (C) 2016「ぼくのおじさん」製作委員会




でも撮影が日本から始まって、「おじさん」と雪男の関係をちゃんと作った上でハワイに行ったから、2人の感じはあまり変わらなかったです。



──今回の映画、どんな人に観てほしいですか?



大西:う〜ん、クラスの皆とか。4年生。



松田: 全国公開なんだからもっとワイドな感じでいこうよ(笑)。





『ぼくのおじさん』は、誰でも楽しめる、全年齢対象の映画だと思います。映画としては「ぼく」の目線から描かれるストーリー。小学生の雪男が「おじさん」の観察日記を書いてて、それが一つの映画になっていくような、どこかファンタジックな雰囲気もあります。雪男と同じくらいの子供から大人まで、誰でも楽しめる映画です。見終わった後はほのぼのして、優しい気持ちになれます。



──お互いの役の見どころもぜひ。



このバディ、何をやらかす?

このバディ、何をやらかす? (C) 1972 北杜夫/新潮社 (C) 2016「ぼくのおじさん」製作委員会




松田:雪男は、万年床が好きなぐうたらおじさんと対照的にしっかりしている。おじさんはハワイに着くなり、迷子になるんですけど、小学生の雪男はそれをすごく心配している。その関係性が面白いし、撮影は雪男無しでは語れなかったです。



大西:おじさんは、雪男に叱られているとき変な感じで、すごいモジモジしている。そこが面白いです。



松田:おじさんと雪男は年が離れているけど、子供と大人の関係というより、バディ感のある関係です。この関係性が他にない映画になったかなと思います。ぜひ注目して観てみてください。



──ちなみに利空くんは、将来「おじさん」みたいな大人になりたいですか?



大西:う〜ん……試しに1回だけなら(笑)。



(文:桜井恒二)



【松田龍平】ヘアメイク:須賀元子 スタイリスト:坂元真澄(The VOICE)