海外へ出かけると、空港でその国独特の香りを感じる。ドバイなど中東の湾岸諸国の空港に降り立つと、白い民族衣装の地元民がつける香水と、お香の香りとが複雑に混じり合った香りがたちこめ、中東に来た事を実感する瞬間だ。



香りはアラブ式おもてなし



強烈な香りで人を引き寄せるショッピングモールでの香水販売

強烈な香りで人を引き寄せるショッピングモールでの香水販売




中東湾岸諸国は一年を通して高温。体臭や身だしなみに対する意識の高い文化背景もあり、香りは伝統かつ日常のたしなみだ。外出前に香りを身にまとうのはもちろんのこと、家の中でも頻繁にお香を焚く。特に来客に対してお香を焚くことは、アラビックコーヒーをふるまうこと同様に大切なおもてなしの儀式。高級ホテルのロビーで、もくもくと煙を上げる香炉を目にすることも多い。



日本と同じ?! お香の楽しみ方



バコゥールには木片状の他、紅茶の葉状のものもある。品質によって値段はさまざま。

バコゥールには木片状の他、紅茶の葉状のものもある。品質によって値段はさまざま。




このアラブのお香、沈香木やサンダルウッドがベースで木の香りが強い。どこかお線香にも似ていて、神社やお寺が身近な日本人には馴染みの香りだ。専用の香炉で熱した炭にバコゥールと呼ばれる乾燥した木片や茶葉に似たお香を少量載せると、白煙とともに香りがたつ。煙をまくように部屋を歩き回ったり、頭から被っているベールに手でこの煙をたぐり寄せたり、衣服に香りが移るよう香炉を胸の前で左右に振ったりする。ちょうど、浅草寺の常香炉から身体に煙をかけているイメージで、ベールや衣服の布に煙と香りをたっぷり染み込ませるのだ。



©Visit Abu Dhabi

©Visit Abu Dhabi




残る香りでなければ意味がない



アラブ人の日常には香水も必需品だ。数千年前から使用されていると言われる沈香、サンダルウッド、ムスクやバラの香りが伝統で、流行こそあっても、このベースにぶれはない。濃厚なこれらの香りを使った香水の人気が根強く、欧米のブランドも中東市場向けにカスタマイズされた製品を発表している。





ドバイ市内で一番売れている男性用香水は沈香、バラ、杉、サフランがベース。香りもお値段も濃厚!100ml約10万円

ドバイ市内で一番売れている男性用香水は沈香、バラ、杉、サフランがベース。香りもお値段も濃厚!100ml約10万円





中東市場を意識して販売されたディオールの香水。日本ではイベント開催時に限定販売された。

中東市場を意識して販売されたディオールの香水。日本ではイベント開催時に限定販売された。






ドバイの街中ではアラブ人が通り過ぎた後、強い香りがしばらく空気中に漂っている。またエレベーターに乗り込むと、香水の瓶が乗り込んでいるのではと錯覚するほどの残り香ということも良くある。これほどまでに日常的な存在の香り、地元の人たちは自身の香水にお香を重ね付け出来るほど香りの上級者。香りをつけずに外出することはまずない。



香水の自販機も登場。つけ忘れて外出することがないので人気はいまひとつ

香水の自販機も登場。つけ忘れて外出することがないので人気はいまひとつ




香水は体や衣服にたっぷり振りかけるのはもちろんのこと、男性が手のひらにスプレーするのも地元流。というのも男性は握手をする機会があるためで、ビジネス・パートナーの香りがいつまでも手のひらに残り、移り香とともに強烈な印象残すのもドバイならではの体験だ。



販売数も桁はずれ。各業界が注目する湾岸諸国の香り市場



ドバイの空港免税店で一番の人気商品もやはり香水、年間300万本、約315億円以上もの売り上げだ。この統計には旅行客の購入分も含まれるが、市内での販売を含めると湾岸諸国での香水消費量は全世界の20%を占め、一人当たりの使用量は世界でも上位というデータもある。



またアブダビの銀行ではついに「香るクレジットカード」が登場。特別なアプリが装備され、支払いをするたびにカードが香る仕組みで「成功者の香り」を認識されたい人にピッタリだとか。



石鹸や柑橘系のほのかな香りを好む日本で、いきなり中東流の香水は少々ハードルが高いかもしれない。日本で買える洗濯用品のアラビアの香りや、現地で手に入る人気の香水ラインの石鹸など、まずはこちらから鼻慣らしをしてはいかが。



マダムの香りが濃厚に漂うオマーンの有名メーカーの石鹸約4, 000円。香水は約3万円。

マダムの香りが濃厚に漂うオマーンの有名メーカーの石鹸約4, 000円。香水は約3万円。




(文:伊勢本ゆかり)



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■取材国・都市:ドバイ



伊勢本ゆかり(いせもと・ゆかり)



ヨルダン、ドバイの中東12年半を経て、上海経由蘇州が現在地のライター。編集協力『ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか』、共著『ニッポンの評判』他、中東と中国の情報を機内誌や雑誌、機関紙等に寄稿中。



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