ブルエンことBLUE ENCOUNTが、10月9日にバンド結成当時からの夢だった武道館公演<LIVER’S 武道館>を大成功に納めた。



開演直前、会場に過去の彼らのライヴVTRが流された。ヴォーカル田邊がMCをしている映像だ。「今日ここにいる半分が笑うと思うけど、日本武道館ワンマンを必ずやる」と田邊が言っている。2013年の映像ということは、当時彼らはメジャーデビューも果たしていないバンドであり、当時としては、いちインディーバンドの突拍子もなく行った決意表明である。しかし、スクリーンの中の過去の田邊は涙ながら決然と言うのだ。「君たちの姿の先に、1万数千人が見えた」。

開演直前にこれらの映像を流すこと自体がメンバーにも内緒の演出だったそうで、後のMCでは、田邉は出番前から大きな感慨を覚えたと語っていた。



バンド結成12年にして掴んだ夢の舞台は、バンドと観客が、そんな感慨と感動をわかちあっていくライヴとなった。ファンクラブ内で「武道館で聴きたい曲」を募集しセットリストに反映したこともあってこの日のセットリストはまさにベスト盤的な選曲で、ブルエンというバンドの魅力を凝縮した内容となった。



結成以来、彼らは非常に多彩な楽曲を発表してきた。メロディック・パンク、ラップロック、エモ、そしてきわめてJ-POP的ともいえるバラードも。アルバムごとに興味の中心が変化する、テーマが変わる、というようなことはない。いつでも、どんなアルバムでもシングルでも、さまざまなジャンルの楽曲が披露される。作品だけでなく、1曲のなかですら世界観がめまぐるしく移り変わっていく。楽曲の激しい変化に合わせて、メンバーの表情やステージアクションもその色を次々と変えていく。ファンは、それをジェットコースターのように楽しんでいくのだ。



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何しろこの日のライヴでは中盤、ドラマー高村がアリーナ席中央に突如通称「DJ高村」として登場、たどたどしいラップを披露して会場は笑いと歓声に包まれた。にもかかわらず、その直後にはステージにストリングスのチームが登場し(田邊曰く「ライバーズ・カルテット」)、ストリングスアレンジを施した武道館特別の「YOU」と「はじまり」を披露、多くのファンが感動の涙を流していたのだった。



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田邊は、まるで人気司会者のようなMCの上手さで観客を楽しませることもあれば、熊本訛りを隠さず涙ながらに不器用に、心情を吐露することもある。ファンも泣き笑いで大忙しだが、どっちが本当なんだ?といぶかしがることもない。どちらも彼らの本気であることをよく知っている。彼らと彼らの楽曲の泣き笑いは、自分たちが過ごす日々の、日々揺れ動く心そのものであることも知っているのだ。



このバンドが、これまでに日々のライヴで表現してきたカラフルな感動と熱狂を、多くのファンたちとともに武道館という特別な場所を使って共有していくステージだった。 オープニング曲の「DAY×DAY」では爆発音の演出、「Survivor」をはじめとしてレーザー光線の演出は随所に、本編最後の「もっと光を」では、楽曲のテーマに沿うようにキラキラと光る紙テープが会場に舞った。アンコール「HANDS」では、会場に紙吹雪が舞った。日本武道館で実施可能なライヴ演出はほぼすべてやりつくす勢いだ。



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ライヴ後半で披露された11月23日リリースのニューシングル「LAST HERO」も型破りな披露の仕方だった。これは日本テレビ系のドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』の主題歌ということで、ドラマの制作スタッフ達も1階席最前列でブルエンTシャツを着込んで大応援していることが明かされ、「僕らをドラマに出させてください!」という田邊の問いには腕でマル印を作って応え、会場も大歓声を経ての披露となった。



ライヴ直前の映像のようなサプライズは、本編でも行われた。学生時代、軽音楽部の部室で田邊が誤って江口のギターを壊してしまい、田邊が「俺達が将来、武道館にステージに立ったら、その時はギターを買って返すと言った」というエピソードが披露された。これ自体はこの夏放送されたNHKのドキュメンタリー『地元熊本に届ける想い〜もっと光を〜』でも語られたエピソードでもあるので広く知られるが、田邊はこの武道館のステージで自ら買ったギターを江口に手渡し驚かせ、熱くハグを交わすシーンもあった。



まるで解散ライヴのような盛りだくさんの華やかさだ、とすら思った人もいるかもしれない。何しろブルエンのバンド・ヒストリーにおける数々のエピソードや伏線が、武道館という場所で、ベストともいえるセットリストで、たくさんの華やかなライヴ演出とサプライズで、見事に次々と回収されていったのだから。



ライヴ終了後に発表された、来春リリース決定のアルバムのタイトルに観客席から悲鳴混じりの驚きの声があがったけれど、悲鳴をあげた人はこの華やかなライヴにどこか「終わり」を感じとっていた人かもしれない。アルバムタイトルは『THE END』だという。しかし田邊の声とメンバーの表情はあくまで明るい。終わりとは始まり、ということだ。念願だった武道館ワンマンの終わりは、バンドとファンにとっての新たな物語のスタート、ということなのだろう。



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来年は新作のリリースだけでなく、幕張メッセワンマン公演を含めて、過去最大級の規模の全国ツアーが行われることも発表された。

この日の終盤のMCで、田邉は「もっともっとデカい夢をみんなでいっしょに見たい」と涙ながらに絶叫したのだ。それは、メジャーデビューも果たせていないのに武道館ワンマンを約束してみせた、過去の彼の姿に重なる。彼らはまたここで新たに、そしてとてつもなく大きな夢と約束をかかげた。この先には、新たな感慨と感動が、バンドとファンのことを待っているのだ。



写真:浜野カズシ



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