「泣き虫だって言われてもいいんだよ!お前らと見た夢の先で泣けりゃいいんだよ!」。



田邊駿一(Vo・G)はいつものように涙で声を震わせながら熱く叫んでいた。BLUE ENCOUNTが結成12年目に辿り着いた夢の日本武道館ワンマン公演。チケットは即日ソールドアウトとなり、立ち見も含めて1万1,000人が埋め尽くした会場で、彼らは涙と汗、感動と興奮、祝福と喝采に包まれた一夜限りのメモリアルなライブを繰り広げた。


まずオープニングではインディーズ時代の映像がスクリーンに流れた。



2013年12月19日、渋谷O-WESTでの「絶対に武道館でワンマンやります!」宣言。2014年6月1日大阪Music Club JANUSでのメジャーデビュー発表、ときは流れて、今年1月17日Zepp Tokyoで発表した日本武道館決定の瞬間。



そうやって一つひとつ“約束”を果たしてきたバンドのヒストリーを振り返ると、田邊がひとり弾き語りで歌う英語詞のオープニングナンバーからライブはスタートした。そのままバンドサウンドが加わった「DAY×DAY」からは、重低音が効いたへヴィで骨太なブルエンのエモーショナルなバンドサウンドが炸裂。むらさき色の光が怪しげに照らしたシリアスな「MEMENTO」や、轟音が渦巻く「Survivor」では、辻村勇太(B)のスラップと江口雄也(G)のタッピングによる応酬が興奮を掻き立てた。







田邊駿一(Vo・G)


江口雄也(G)


辻村勇太(B)


高村佳秀(Dr)









MCで「アリーナ、元気かー!?」と問いかけたのは田邊。ライブハウス育ちのバンドにとって“アリーナ”という言葉の響きは新鮮だ。「いろんな人のDVDで見たやつだ!」と、いちいち反応も初々しい。



高村佳秀(Dr)が叩き出す軽快なリズムにのせたロックンロール「HEEEY!」では、「ウェーブって知ってる?」と切り出すと、「今日は俺もうベタをやり尽くす!」と、武道館をぐるりと1周するビッグウェーブも初体験。



このあたりから、はじめは少し緊張気味だった会場の雰囲気も目に見えてリラックスしていった。バンドが初の武道館なら、お客さんも初武道館だった人が多いのかもしれない。ツイッターでは“人生初の武道館をブルエンの捧げた”というコメントも見た。そうやって少しずつ武道館の感触を掴んでいく様子もバンドとファンとが一緒に成長していくブルエンらしかった。







高村の高速ドラムソロから突入した「ONE」ではフロント3人が頭の後ろで楽器を弾くという鮮やかなプレイで魅せると、強く生きるためのメッセージを丁寧に届けた「ANSWER」がこの日ひとつめのハイライトだった。そこからストリングスカルテットを迎えたバラード「YOU」と「はじまり」はふたつ目のハイライト。《ずっと僕たたちが見たこの夢は/何度でも明日を強く繋いでいくよ》。



まるでこの場所で鳴らされることを待っていたかのように届けられたその歌の、最後の1音が消えるまでじっと聴き入っているフロアのムードがとても良かった。同時にブルエンがずっと大切に育ててきた楽曲たちは、間違いなく武道館に相応しい風格を兼ね備えていることを改めて感じる瞬間でもあった。







MCでは、ここまでバンドが一つひとつ約束を果たしながら進んできたことに触れると、実は高校1年生のときに江口のギターを壊した田邊は「武道館で返す」と約束していたことを明かす。江口はメンバーに「それで納得したの(笑)?」と突っ込まれていたけれど、その約束も果たされるときが来た。田邊が「高校のときはすまんかった!」と、江口に新品のギターを渡して、がっちり抱き合ったふたり。田邊は「恥ずかしい!」と照れていたが、そんな約束をきちんと覚えているのも律儀だ。



そこからは、いよいよライブはラストスパートへ。ドラマ『THE LAST COP』の主題歌にもなっている新曲「LAST HERO」ではレーザーがお客さんの頭上を飛び交い、「JUST AWAKE」ではステージ前面に10個の炎がボコボコと噴射、「LIVER」では壮観のタオル回しと、これまでバンドが築き上げてきた全てをぶつける渾身の演奏で、武道館に決して忘れられない光景を生み出していった。





「力貸してくれよ、武道館!」と訴えて届けたのはラストソング「もっと光を」。田邊は語りかけた。「ロックバンドをやっていてわかったことがある。残酷な話、みんなが最初から満場一致で応援してくれる夢なんてない。12年間夢を追いかけたら、バカにしてたやつの何倍も応援してくれる人がいたんだよ!」と。そこからは涙を流しながら、両親、マネージャー、レコード会社、集まってくれたお客さんに感謝を伝えると、「まだ終わりたくねえんだよ!」と何度も叫んだ。「お前らを勇気づける曲を死ぬ気で作り続けるから!」。



そうやって終わりのない約束をお客さんとかわすと、客席には明るい光が溢れ出し、銀テープが舞った。《光は誰もくれない だから進むんだ》。1万1000人の心を奮い立たせる勇気の歌に導かれて、最後は広い日本武道館の会場にはいくつものこぶしが突き上がっていた。



アンコールでは、「江口が泣きすぎて倒れた(笑)」と言いながら、再び登場したメンバー。お客さんが用意していた寄せ書きのフラッグを受け取り、ドラム台のよく見える位置に飾ると、来春リリースが発表されたアルバム『THE END』からの新曲が早くも披露された。いままでのブルエンにはないタイプのミディアムテンポのポップソング。



それは新たなバンドの始まりを予感させる1曲でもあった。そこから辻村による「武道館!」「九段下!」というコール&レスポンスで湧いた「NEVER ENDING STORY」に突入すると、さっきまで感動で泣いていたお客さんも笑顔に変わっていた。ラストはバンドを象徴する色=ブルーの照明を受けて「HANDS」。客席に一斉にあがる手を見て、田邊は「いつまでもついて来い!その手絶対に離しませんから!」と叫び、3時間におよぶライブを締め括った。







“努力すれば夢は叶う”なんて信じることは難しい。だけど、誰かと一緒に夢を追いかけてみること、誰かの夢を信じてみること、そこに何かが変わるきっかけがあることを、この日の武道館でブルエンは教えてくれた気がした。「俺はお前を信じてる。お前も俺を信じてくれ!お前らと俺らはBLUE ENCOUNTだ!」と、田邊は言った。その名のもとに集まった仲間の存在を力にして、BLUE ENCOUNTはまた新しい夢へと踏み出してゆく。(文:秦理絵 撮影:浜野カズシ)



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