怪物が怪物と呼ばれる所以を形で示した。ガンバ大阪に所属するMF井手口陽介は、18日に行われた明治安田生命J1リーグ・1stステージ第12節の名古屋グランパス戦で1ゴール1アシストと活躍。2ndステージ優勝争いの真っ只中にいるチームを今シーズン2度目の3連勝に導いた。

「至宝」から評される「怪物」
福岡県出身の井手口は、G大阪ユース出身の生え抜き選手。当時高校2年生だった2013年に2種登録選手としてトップチーム登録されると、翌年に現アウグスブルクのFW宇佐美貴史以来、クラブ史上5人目の飛び級昇格を果たした逸材だ。さらに、「至宝」と呼ばれてきた宇佐美をして「怪物」と言わしめるなど、才能を高く評価する者も少なくない。
Getty Images
監督の心を着実に引き寄せる
その井手口が長谷川健太監督に戦力としての手応えを感じさせ始めたのは、2015シーズン。サンフレッチェ広島と対峙したチャンピオンシップの2試合や、浦和レッズとの天皇杯決勝といった、タイトルが懸かった大一番でも起用されるなど、当時19歳ながらも指揮官の心を徐々に引き寄せ始めていた。

来る今シーズン、井手口はここまで公式戦24試合に出場。長谷川監督の口から「ボランチの選択肢が増えた」との言葉が出るなど、MF遠藤保仁、MF今野泰幸に続く3番手のセントラルMFとしての地位を完全に確立。それは、長谷川監督がケガから復帰した今野をすぐに先発復帰させず、遠藤の相方として、井手口を起用し続けたことからもうかがえる。
Getty Images
突然訪れたテストの場
そんな中、井手口にこれまでの成長か試される場が突然訪れる。それが、18日の名古屋戦だ。この試合に遠藤とともにボランチの一角で先発した井手口は、持ち前のボール奪取能力と、豊富な運動量で広範囲を監視。ときおり、売りとする激しさが仇となり、相手にFKのチャンスを与える場面もあったが、随所で持ち味を発揮していた。

しかし42分、遠藤が右足太ももを打撲してプレー続行が不可能となり、ベンチに控えていた今野と途中交代。絶対的な組み立て役を担う遠藤がベンチに下がったことにより、中盤には井手口、今野という守備的MFが並ぶことになった。しかし、この逆境下で、井手口がこれまでアピールしきれずにいた課題の攻撃面で才能の片りんを見せつけた。
Getty Images
遠藤不在下で残した1G1Aという数字
1-1で迎えた65分、敵陣でボールを刈り取った井手口が自ら左サイドにボールを持ち込むと、ファーサイドに走り込んだMFアデミウソンの侵攻スピードに合わせて、利き足ではない左足でクロス。これがアデミウソンのヘディングシュートへのアシストとなり、G大阪が勝ち越しに成功した。

さらに、後半アディショナルタイム1分には、敵陣のやや左サイド寄りでボールを受けた井手口がFW川又堅碁のチャージを背中に受けても重心がぶれることなくバイタルエリアのスペースに侵攻。鋭く右足を振り抜くと、GK楢崎正剛もノーチャンスのゴール右上にドライブシュートを突き刺した。

大きな意味と価値を持つ初ゴール
これは井手口にとって、記念すべきトップチーム初ゴール。さらに、遠藤という攻撃の軸を失った中で残した結果であることを踏まえると、このゴールが持つ意味、価値はより高まる。しかし、「優勝争いの中に、自分がもっともっと中心となってやっていけるようになりたい」と語る本人に慢心はない。怪物が怪物と呼ばれる所以を形で示した日――。今後の長いキャリアを考えても、大きな分岐点となる1試合だったに違いない。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》