今シーズンから「EFLカップ」と銘打って行われているリーグカップ。その3回戦・16試合がこの2日間で行われた。波乱らしい波乱は、エヴァートンがホームでノリッチに敗れたのみ。ただし、過去1年間の“序列”に照らし合わせる限り、レスターがホーム、キング・パワー・スタジアムでチェルシーに喫した逆転負けも数えておくべきかもしれない。このゲームについて、日本では「いずれもネットを揺るがすことなく決まった」岡崎の珍妙な、もとい、オカザキらしい2ゴールにスポットを当てる一方で、現プレミア王者がトーナメントから姿を消した“番狂わせ”などそっちのけ。まあそんなものだろうと悟ってしまえばそれまでだが、相変わらずの手前味噌な“切り取り報道”には、う〜ん、どうにも割り切れない。個人的には、ノリッチ勝利の立役者が前エヴァートンの好漢スティーヴン・ネイスミスだったドラマが「ニューズの価値」で上。いや、言っても仕方ないか。多分、レアル・マドリードが17連勝の新記録を逸したことの方がインパクト大だろうから。

さて、密かに気がかりだったのは突如“絶不調”の負のスパイラルに入った感のあるマンチェスター・ユナイテッドが「よもやの悪夢」に見舞われるのでは、というそこはかとない不安。鬼が棲むカップ戦、相手が3部のノーザンプトン(この時点でリーグ戦8試合消化の11位:首位と勝ち点差7)だからこそ、「まさか」の事態もなくはないと(きっと一部のユナイテッドファンの間には)嫌〜なデジャヴもちらついたりしていたのではないか。実際、ハーフタイム直前のデイリー・ブリントの“粗相”からPK失点でイーヴンにされたときは、彼らも思わず眉をしかめたに違いない。結局は3-1の(まずまずの)快勝で杞憂に終わったが、この試合の成り行きを振り返ってみたとき、悩めるジョゼ・モウリーニョが一つの路線変更に舵を切るか否かに、現地識者の間で注目が集まっている。それはずばり、このノーザンプトン戦で先制点を叩き込み、トレードマークの懐の深いボールさばきと広い視野でチームを文字通りに仕切ったベテラン、マイクル・キャリックの、今後の取り扱い。と、その前に改めてノーザンプトンが“難敵”に見えた理由に触れておこう。

実はこのノーザンプトン・タウン、昨シーズンの舞台は4部のリーグ2。だが、ほぼ余裕をもって同ディヴィジョンで優勝を果たし、3部・リーグ1に昇格後7試合消化の時点まで、31戦無敗の快進撃を続けていたのである。記録は先週土曜日の対チェスタフィールド敗戦で途絶えたものの、ホーム、シックスフィールズ・スタジアム(収容7800弱)に詰めかけた地元ファンの中には、「互角に戦えないこともない」という期待に胸ときめかせていた者も多かったという。ところが、皮肉にもそんなコブラーズ(ノーザンプトンの通称)いちの期待の星、23歳の守護神アダム・スミス(かの世界的経済学者と同名だ)のボーンヘッドが、ユナイテッドの先制ゴールを生む結果となったのだ。結果論かもしれないが、今季昇格決定後からプレミアのクラブからも熱い視線が集まっていた「スミスのミスがミソをつけた」ことが、大波乱を起こす芽を摘んでしまった。裏を返せば、ユナイテッドはその隙に救われ、たまたま今季初先発のキャリックがその“運”をものにした・・・・。

これはちょっとした新しいドラマの始まりの兆しとは言えまいか。無論、まだ何もわからない。モウリーニョがこの“運”に目をつけて、次戦(プレミア)・対レスターにキャリックをスタメンに“抜擢”するという保証は何もない。が、ノーザンプトン戦の経過を総括すれば、明らかにキャリックの存在を表す形容詞は「絶大」だった。そこで、一つ前のワトフォード戦を振り返ってみると・・・・最大の課題、それは新・世界最高額男のポール・ポグバが見るからに窮屈なプレーに終始していたこと。では、キャリックと組ませてみたらどうなるか。言うまでもない。ポグバははるかに自由に、気楽にポジションを取りながら、本来の能力、影響力を存分に行使する図が目に浮かぶではないか。そもそも、ポグバも、ここまでモウリーニョに優遇されているフェライニも、司令塔タイプというには大きに物足りない。加えて、肝心のルーニーに何か迷いでもあるのか、どうもピリっとしない。ならば、答えは「今、そこにある」のでは? キャリックをベンチでは「もったいない」!

モウリーニョは就任に当たって、ルーニーの役割を「よりストライカー寄り」と示唆していた。だとしたら、今こそプラン修正の絶好のヒントが、キャリックという、いまだ健在の「軸」からひもといていっても罰は当たるまい。例えばこうなる。イブラのワントップに、中盤上がり目にルーニーとポグバ、両ワイドは機動力のあるマタ、エレーラ、ムヒタリアン、リンガード、ヤング、デパイらからピックアップする。場合によってはマーシアル、ラシュフォードもそのリストに入れればいい(順当なら、ラシュフォードはここぞというときのスーパーサブでよさそうだが)。フェライニこそ、アクセントをつける、あるいは変える切り札として使える。なお、個人的には先のワイドマン候補の筆頭にヴァレンシアを挙げたいところである。サイドバックなんてそれこそ「もったいない」。以上はあくまでも“外野”からの一案。モウリーニョともあろう者なら、ずっと効果的な修正案をひねり出すだろう。ともあれ、今このとき、軸にすべきはキャリックしかありえない?!

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。