「どう見たって冷遇されているわよね」。そんな風に私が文句を言っていたのは金曜日、CLグループリーグ第2節を控えたこの週末、参加32チーム中、日曜に試合をするのがアトレティコだけという事実を知った時のことでした。いやあ、彼らの日程は把握していましたし、最初はハードなカンプ・ノウ訪問の後とあって、次のリーガ戦の前に1日多く休めるのは吉。おかげで木曜夜には選手たちが集まって、バルサ戦お疲れ様会兼バイエルン襲来に備えての決起ディナーを開く余裕もありましたし、今の時期、午後4時15分(日本時間午後11時15分)キックオフ試合は暑くもなく寒くもなく、しかも早い時間に帰宅できるという点で好ましかったため、デポルティボ戦が日曜なのはまったく気にならなかったんですけどね。

ところが他の国ではCL出場チームは配慮されているのか、どこも早めにリーグのお勤めを果たし、次の相手のバイエルンもハンブルク戦は土曜にプレー。何せ、最後にビセンテ・カルデロンの土を踏んだ2014-15シーズンにはマドリーダービーで4-0という、驚愕のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったアンチェロッテ監督が率いているだけに、相手もそのことは肝に命じているはずですしね。そこへ開幕から公式戦全勝中で絶好調、なおかつ休養日が1日多いとなると、来週の水曜はまた守ってばかりの試合になりそうな気がしてならないんですが…。

まあ、その辺についてはまた次回にでも話すとして、とりあえずこのミッドウィーク開催のマドリッド勢の様子をお伝えしていくことにすると。両雄の方は水曜試合だったため、まずサンティアゴ・ベルナベウへ向かった私だったんですが、昨季はヘタフェを降格から救えなかったエスクリバ監督率いるビジャレアルとの対戦は意外な展開に。いえ、主に原因は「Salimos menos enchufados. Nos ha faltado intensidad/サリモス・メノス・エンチュファードス。ノス・ア・ファルタードー・インテンシダッド(ウチは試合にあまり没頭してピッチに出なかった。プレーの激しさが欠けていた)」(ジダン監督)というレアル・マドリーにあったんですけどね。

それでもその日はモドリッチがお休みだったとはいえ、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)は勢揃いしていたため、あまり心配はしていなかったんですが、想定外の事態が起こったのはもうハーフタイムも近くなっていた前半42分のこと。マルセロがケガしてしまったんですが、それはともかく、当人が座り込んで時間稼ぎをすることもなく、スタスタ自分の足で歩いてピッチを出て行ってしまったから、困惑したの何のって。だってえ、ジダン監督が急遽、投入する予定だったカルバハルはまだ準備中だというのに、あまり相手が攻めてこなかったら大丈夫と思ったのか、マドリーは10人のまま、プレーを続けているんですよ。
実際、その直後のことでした。彼らの過信が裏目に出てしまったのは。バランがエリア前でボールをトリゲロスに奪われてしまい、ライン上でそのシュートを防ごうとしたセルヒオ・ラモスの手にボールが当たってしまったから、さあ大変! 前節のエスパニョール戦同様、すぐさま顔を覆ってみたラモスでしたが、その日はさすがに審判も騙されず、PKを献上することになったんですが、そうなってからカルバハルが入ってもねえ。ブルーノ・ソリアーノがパネンカ風のキックでGKカシージャを破るのを防ぐ役には立ちませんでしたが、大丈夫。ロッカールームでジダン監督にゲキを飛ばされた後の後半開始早々には、お馴染みのラモスの面目躍如が見られます。

そう、3分にはハメス・ロドリゲスのCKを彼が頭で叩き込んで、マドリーは1-1に追いつくことに。ただ、もしかしたら、これはロスタイム3分まで待った方が良かったのかもしれないと私が思ってしまったのは、後半は打って変わって攻めたてていたマドリーでしたが、勝ち越し点がなかなか奪えなかったから。うーん、CLスポルティング戦の2匹目のドジョウを狙ったか、ベイル、ベンゼマに代えてルーカス・バスケス、モラタも投入してみたんですけどね。最後のロナウドのFKもGKアセンホにキャッチされてしまい、「No siempre se puede ganar en el ultimo momento/ノー・シエンプレ・セ・プエデ・ガナール・エン・エル・ウルティモ・モメント(いつも最後の瞬間に勝てる訳ではない)」(ジダン監督)という結果に終わってしまいましたっけ。

え、タイムアウトの笛が鳴った後、どうしてマドリーの選手たちは審判に詰め寄っていたのかって?その理由は追いつかれたビジャレアルが勝ち点1の守りに入り、時間稼ぎなども結構していた割にロスタイムはたったの3分だったからで、それに怒って、カルバハルなど「Que facil es pitar aqui!/ケファシル・エス・ピタール・アキー(ここで判定を下すのは何て簡単なんだ)」と主審に悪態をついてイエローカードをもらっていたりしましたが、逆に私が感心したのは、グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)がバルサで打ち立てたリーガ16連勝を新記録の17連勝に更新する機会を逃した上、せっかく優勝争いのライバルに差をつけるチャンスだったにも関わらず、記者会見でのジダン監督が寛容だったこと。
曰く、「no podemos siempre jugar bien y salir desde el minuto uno a tope/ノー・ノデモス・シエンプレ・フガール・ビエン・イ・サリール・デスデ・エル・ミヌート・ウノ・ア・トペ(常にいいプレーをすることはできないし、開始1分からトップギアで行くこともできない)。そういうことは起こりうる。それが今日だった」とはさすが現役経験者。ええ、彼がプレーした頃だって、マドリーが気の抜けた試合をしているのを見たのは1度や2度ではないですからね。それだけに選手たちのやる気のアップダウンが理解できるのでしょうが、そんな中、木曜には悪い知らせも入っていて、前節のエスパニョール戦でディオプに蹴られたカセミロの右足腓骨にヒビが入っていることが判明。

全治1~2カ月となってしまっただけでなく、金曜に検査を受けたマルセロも右ふくらはぎのケガで2週間、出場できないことに。左SB、守備的ボランチと、たまたま頼りになる代役がいないポジションに負傷者が固まってしまったのは不運ですが、ただ次戦となる土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からの相手はラス・パルマスですからね。丁度、ミッドウィークはレアル・ソシエダに4-1と大敗、3位から5位に転落して、開幕からのスタートダッシュももう息切れかと思われたか、金曜にあったバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場での試合前会見でもジダン監督にはライバルについて、何の質問もなかった程ですから、あまり心配することはない? そうそう、金曜の招集リストには昨季終了後にアキレス腱の手術をして、ずっとリハビリをしていたGKケイロル・ナバスがとうとう復帰。指揮官の腹積もり次第ですが、今季初出場もあるかもしれませんよ。

え、それでマドリーの次にプレーしたアトレティコはどうしたんだって? いやあ、その日もMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)厳重警戒網を敷き、一生懸命守っていた彼らですが、私がベルナベウ近辺で座れるバル(スペインの喫茶店兼バー)を探していた前半終了近く、41分にはうっかり気が緩んでしまったんですかね。イニエスタのクロスをラキティックにヘッドで決められ、ようやく腰を落ち着けられたハーフタイムにはすでに1-0とリードを奪われている始末。ところが妙な偶然で、こちらも事態の打開のキッカケとなったのは敵選手の負傷交代でした。
そう、「en el descanso ya estaba bastante mal por un proceso gripal/エン・エル・デスカンソ・ジャー・エスタバ・バスタンテ・マル・ポル・ウン・プロセソ・グリパル(風邪のせいでハーフタイムにはもうかなり状態が悪かった)」(ルイス・エンリケ監督)というブスケツが後半に入り、たったの5分で交代した後、メッシがゴディンとの接触プレーがキッカケとなって、止まってしまったんですよ。うーん、前回のアルゼンチン代表戦でも恥骨炎で2戦目に出ず、帰国した彼ですが、その後、CLのセルティック戦、マドリッドの新弟分、レガネスを大量得点で破った試合にはフル出場していたため、ここでまたケガをするとはチームメートたちも意表を突かれたんですかね。

13分に彼がアルダ・トゥランと代わらざるを得なかったことで敵に動揺が走ったのをシメオネ監督は見過ごさず。即座にサウルとガメイロを引っ込め、フェルナンド・トーレスとコレア、2人のFWを投入すると、それがバッチリ当たります。そう、コケがファールを受けて座り込んでいる間にガビが素早いFKをトーレスに出すと、彼からのパスがピケの股間を通ってコレアへ。するとその前をふさぐはずだったマスチェラーノが滑ってくれたんですよ。これも本来だったら先発していたはずのウムティティがケガで出られなかったおかげかもしれませんが、コレアが放ったシュートにはGKテル・シュテーゲンもどうすることもできず。ゴールポストに当たったボールがネットに収まってくれたから、ホッとしたの何のって。

いえ、丁度その時、バルにいたベルナベウ帰りの他のお客さんたちも大喜びしていたのは別にアトレティコファンだったからではなく、相手がバルサだったからだと思いますけどね。ただ、シメオネ監督は「El equipo respondio muy bien en los primero 20 minutos de la segunda parte/エル・エキポ・レスポンディオ・ムイ・ビエン・エン・ロス・プリメーロス・ベインテ・ミヌートス・デ・ラ・セグンダ・パルテ(チームは後半最初の20分、とてもいいリアクションをした)」ことで満足してしまったか、畳みかけることはなく、残り20分にはカラスコに代えてボランチのトマスを投入。どうもこういうところを見ると、せっかく同点に持ち込みながら、追加点を狙わず、最後は延長戦、PK戦で涙を飲んだ昨季のCL決勝の教訓がまったく生かされていないんじゃないかと思ってしまいますが、選手たちの限界をよく知っているのは監督ですからね。

おまけに終盤にはルイス・スアレスがフィリペ・ルイスの足を蹴ってケガさせたにも関わらず、謝りもしないで「Te tiraste, payaso!/テ・ティラステ、パジャソ(自分で転んだくせに、道化者)」と挑発していたり、それに怒ったコケが柄にもなく、次のプレーの時まで相手に「cagon, eres un cagon!/カゴン、エレス・ウン・カゴン(臆病者、あんたは臆病者だ)」と悪態をついていたりと、どうにも収拾がつかなくなっていたようなので、その日はアトレティコの選手が誰も退場させられず、そのまま1-1で勝ち点1を獲得できたのは良かったのかも。ええ、試合後はキャプテンのガビも「ウチは常に勝つつもりでいるけど、1ポイントは悪くない。nos vamos satisfechos/ノス・バモス・サティスフェッチョス(ボクらは満足して帰るよ)」と言っていましたしね。

敵方のルイス・エンリケ監督もこの引き分けには、「凄く高いレベルで自陣エリアに引くチームが相手だとプレーの最後の数メートルが難しくなる。その点に関して、ウチはかなりいい方だけどね。Quizas ellos sean los mejores del mundo replegandose/キサス・エジョス・セアン・ロス・メホーレス・デル・ムンド・レプレガンドセ(おそらく彼らは引きこもることで世界最高のチームなんだろう)」と一体、バカにしているのか、感心しているのか、わからない言葉でアトレティコを賞賛してくれていたため、まあ、悲観することはないんですが、そのすぐ後に出回ったフィリペ・ルイスの足の写真にはドッキリされた人も多かったかと(https://www.instagram.com/p/BKolynygq9u/?taken-by=filipeluis)。

いやあ、まるで甲に穴が開いているように見えたからですが、その傷に対しても、ルイス・スアレスが「El futbol es para hombres, todo queda en la cancha/エル・フトボル・エス・パラ・オンブレス、トードー・ケダ・エン・ラ・カンチャ(サッカーは男のためにある。全てはピッチに残るもの)」と一切、反省の色を見せず、後日、女子サッカー選手たちから猛反発を受けていたなんてのは当人の自業自得。幸い、蹴られた時、足が空中にあったフィリペ・ルイスは翌日の練習で他の選手たちと一緒に普通に走っていたため、皮膚が裂けただけだったとわかりましたしね。これからしばらくは両チームが顔を合わせることもないですし、メッシが太もものケガで全治3週間となってしまったバルサやお隣さんと違って、今回はアトレティコが負傷者ゼロで終わったことを喜ぶにとどめましょうか。

そして翌木曜には、ラ・コルーニャ(スペイン北西部の避暑地)で前半、デポルティボに先手を取られながら、後半に先日のバルサ戦でも一矢を報いるゴールをFKから入れたガブリエウが1ゴール1アシストと活躍して、レガネスが1-2の逆転勝利でマドリッド勢今節、唯一の白星をゲット。おかげで彼らも10位に上昇した上、この日曜にはアトレティコも弟分には引けを取るまいと頑張ってくれるのは好材料かと。

ちなみにレガネスの方は今週末、日曜正午にブタルケにアジェスタラン監督解任後、お馴染みの普段はチーム付き役員をしているボロ暫定監督の下でアラベスに2-1と勝ち、今季初勝利を手に入れたバレンシアを迎えるんですが、そろそろホームでの1部初白星をファンたちにプレゼントしてあげたいところでしょうか。ただ、小規模チームにとって、リーガ3連戦の最後はメンバーの体力的にきついのがちょっと心配ですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。