「無理に誰か連れて来なくてもいいのにね」そんな風に私が首を捻っていたのは日曜日、正午からの試合でマドリッドの新弟分、レガネスがバレンシアに1-2の逆転負けの報を知った時のことでした。いえ、未だ彼らがホームゲームでリーガ1部の試合未勝利なのは、アシエル・ガリターノ監督も「Por la entidad de los rivales, no esta mal/ポル・ラ・エンティダッド・デ・ロス・リバレス、ノー・エスタ・マル(ライバルとなったクラブを考えれば悪くない)」と言っていたように、最初の2試合もアトレティコとバルサが相手。となれば、マヌケな兄貴分がプレゼントしてくれた勝ち点1しか、挙げられていなくても仕方ないんですけどね。

それより私が驚かされたのは、いえ、バレンシアの決勝点を入れたのが数年前にアトレティコを出て行ったマリオ・スアレスだったことじゃありませんよ。チームの復調ぶりの方で、開幕から4連敗した後、クラブはアジェスタラン監督を解任。新監督を招聘するまでの間、チーム付き役員のボロ氏に指揮を任せたんですが、彼が暫定監督を引き受けるのはもうこれで4度目のことだったから。しかも毎回、その成績は優秀で2008年にクーマン監督とウナイ・エメリ監督の橋渡しをしたのから始まって、2012年にはペジェグリーノ監督とバルベルデ監督の間、2015年にもヌーノ・エスピリト・サント監督からネビル監督の間と、通算10試合で8勝1分け1敗。しかも勝てなかったのはバルサ相手だけとなれば、新しい監督なんていらないのでは?

まあ、それはシンガポールにいるピーター・リン会長やフロントが考えることなので、私が意見を言っても仕方ありませんが、早いうちから候補に挙がっていたマルセリーノ監督はプレシーズンに1回、ビジャレアルで登録してしまったため、開幕前に解任されて今はフリーでも、今季はリーガのクラブを率いることが協会規則でできず。もう1人の候補、ラウドルップ監督もカタールのチームに職を得たようですし、残るはカパロス、バラハ、ルディ・ガルシアといった名前が聞こえてきますが、さて。どうやら今週末日曜の試合も引き続きボロ氏がベンチに入るっていうのは、メスタジャ(バレンシアのホーム)を訪ねるアトレティコにとって、あまり朗報じゃない気もするんですが…。

え、そんな先の話より、今はもっと大切なことがあるだろうって? そうですね、まずは先週末のリーガの結果をお伝えしないといけませんが、土曜の夜にラス・パルマスとのアウェイ戦に挑んだレアル・マドリーはミッドウィークのビジャレアル戦に続いて残念な結果に終わることに。いえ、前半32分に前節に負傷したマルセロの代役として左SBに入ったナチョが、本人もかくあるやとばかりの攻撃参加を見せ、エリア内からシュート。これはGKハビ・バラスが弾いたんですが、詰めていたアセンシオがヘッドで撃ち込んで一応、先制はしているんですけどね。

後でラス・パルマスのステイン監督も「Hemos sufrido mucho porque el Madrid ha sido intenso/エモス・スフリドー・ムーチョ・ポルケ・エル・マドリッド・ア・シードー・インテンソ(マドリーのプレーが激しかったから、ウチはとても苦しんだ)」と言っていたように、ジダン監督曰く、ビジャレアル戦前半に欠けていた点は補えていたようなんですが、この日の敵は「Nos ha faltado concentracion/ノス・ア・ファルタードー・コンセントラシオン(ウチは集中力が足りなかった)」。ええ、その5分後にはバランがエリア内でクリアしたボールがたった1人、ポツンと真ん中にいたタナへ。そのシュートが決まり、前半は1-1で終わります。

後半もジダン監督が早めに手を打ち、アセンシオに代えてベンゼマを入れたため、4人FW体制で攻撃したマドリーは21分には勝ち越し点をゲット。今度もまた、クリスチアーノ・ロナウドのシュートは弾かれてしまったものの、ベンゼマがネットに収めてくれました。ただねえ、これで勝利は堅いと信じたか、ジダン監督は27分にロナウドを引っ込めてしまったんですよ。当人によると、理由は「Habia que dejarle descansar y pensar en el martes/アビア・ケ・デハールエ・デスカンサール・イ・ペンサル・エン・エル・マルテス(彼を休ませて、火曜のことを考えないといけなかった)」というもので、CLドルトムント戦が待ち受けているため、当然の温存策だったんですが、やっぱり選手の方は気に染まなかったんでしょうね。

ピッチから出てジダン監督の挨拶には応えたものの、相手の目を見なかっただとか、前節退場させられたため、ベンチ入りできなかったチーム付き役員、チェンド氏の代役のハビ・コル氏に「Yo hago todo para hacer el 2-1... y a tomar por culo/ジョ・アゴ・トードー・パラ・アセール・エル・ドス・ウノ…イ・ア・トマール・ポル・クロ(自分は2-1にするのに全力を注いだのに…それでバカを見ろって)」と不満をブチ撒けたとか、ベンチで「Foda-se! Veinte minutos, 20 minutos/フォダセ!ベインテ・ミヌートス(ファックユー! あと20分だぞ、20分) 」と繰り返し悪態をついていたとか、うーん、最近のTVカメラは本当に油断ならないっちゃありません。

まあ、その辺は当人が後で監督と話合ってくれればいいことなので置いておくとして、30分過ぎにはモラタもイスコに代え、ゲームをコントロールしての逃げ切り体勢に入ったマドリーでしたが、計算外のことが起きたのは39分。そう、右サイドからのパスを左サイトのコーナー際まで必死で追ったタナがクロスを上げると、今度はビセンテがヘッドで落とします。それを拾ったアラウホがGKカシージャスから跳ね返ったボールも上手い具合にキープし続け、最後はライン上から押し込んで、とうとうラス・パルマスが同点に追いついてしまったのですから、さあ大変!

こんな展開になると、先日のCLスポルティング戦での土壇場FK同点ゴールのようなこともありましたからね。今季はまだ2ゴールしか挙げていなくても、ロナウドがずっとピッチにいたい、ファンもいてもらいたいと思う気持ちはわかるんですが、後悔先に絶たず。その日はロスタイム3分、最後のチャンスでヘッドしたのがセルヒオ・ラモスではなく、イスコだったという不運もあって、試合は2-2のまま、ラス・パルマスに「Sumamos un punto con el que no contabamos/スマモス・ウン・プントー・コン・エル・ケ・ノー・コンタバモス(ウチは勘定に入れていなかった勝ち点1を手に入れた)」(ステイン監督)という喜びを与えて、チームは本土に戻ることに。

え、この2試合、マドリーが引き分けてしまったのはカセミロが負傷で出られなかったのが関係しているんじゃないかって? そうですね、どちらの相手にも失点していますから、守備のカバーがクロースやモドリッチでは間に合わないといった感じもありますが、もしや真相はその日、ドイツから発信された「Lauft derzeit nicht so gegen gelbe Teams, oder?(黄色をまとったチームが苦手?)」というツィートにあったかも。いえ、送り主はドルトムントですから、先制口撃してきているだけでしょうが、何せ2度あることは3度あるとも言いますからね。

おまけにマドリーはジグナル・イドゥナ・パルク(ドルトムントのホーム)で今まで5試合して1勝もしてないと聞くと、火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)のグループリーグ2節が心配ですが、どうなることやら。ちなみに月曜に現地入りしたチームには今季、初めて負傷明けのコエントランが加わっていますが、2試合目の帯同となるケイロル・ナバスがいよいよカシージャに代わって正GK復帰となるかと共に、スタメンは当日までのお楽しみ。現在、バイエルンと勝ち点差3のブンデスリーガ2位につけるドルトムントでは先週中、ケガで出場が危ぶまれていたバルトラ、シュールレ、オバメヤングらがプレー可能なことが前日練習で確認されています。

そしてリーガに話を戻すと、翌日曜にはCLグループリーグ参加32チーム中、唯一金土以外に試合を割り振られたアトレティコがビセンテ・カルデロンでデポルティボと対戦。いえ、彼らも水曜のバイエルン戦を見越してのローテーションではツイていなかったんですけどね。ただそれはお隣さんとは違って、結果ではなく、負傷者発生という形で表れることに。だってえ、サウルとサビッチをパルコ(貴賓席)観戦にして、アウグストとヒメネスを先発させたところ、前者は開始17分にヒザの靭帯断裂で担架退場。ベンチで温存されていたガビが急遽、入ったものの、35分にはヒメネスも太もものケガでやはり担架で運ばれていくって、無茶苦茶、運が悪くない?

それでもCBは今季初出場となったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)、ルーカスがしっかり務めてくれたので、別に試合に実害はなかった上、前半終了直前にはデポルティボのファイカルがコケとガイタンを立て続けに強烈なタックルでふっ飛ばし、イエローカード2枚をもらって退場。後半丸々、数的優勢で戦えることになったアトレティコの課題は、シメオネ監督も「siempre nos han costado los que vienen a encerrarse/シエンプレ・ノス・アン・コスタードー・ロス・ケ・ビエネン・ア・エンセラールセ(自陣に閉じこもる相手には常に苦労した)」と言っていたように、人海戦術の守備をこじ開けて、点を取ることだけだったんですが…。
後半、「Como no vamos a intentar perder tiempo con 10?/コモ・ノー・バモス・ア・インテンタール・ペルデル・ティエンポ・コン・ディエス(10人でどうして時間稼ぎをしないでいられる?)」(ガイスカ・ガリターノ監督)と、テンポが落ちまくったデポルティボを鬼のように攻めたてたアトレティコの努力が実ったのは、最後の交代枠でカラスコからガメイロを投入した後の24分のことでした。いやあ、それまでシュートがゴールバーに当たったり、ほんの僅かで外れてしまうなど、開幕アラベス戦を彷彿させる展開に、もうその頃には私も腰が落ち着かなかったんですけどね。ファンフランのスルーパスを受けたガメイロがエリア内右奥からボールをゴール前に出したところ、ドンピシャでグリースマンがヒットしてくれるのですから、何とも頼りになるエースじゃないですか。

え、彼についてはシメオネ監督も「昨季のヨーロッパで最高の選手」と褒めてやまないながら、キャプテンのガビなどはバロンドールに「yo votaria a Messi/ジョ・ボタラ・ア・メッシ(自分ならメッシに票を入れるよ)。グリースマンもあとちょっとで彼と争えるようになるといいね」と、まだまだ厳しい見方をしていないかって? そうですね、今年からまたバロンドールとFIFAワールドプレーヤーの賞が分かれるそうなので、先日のレキップ(フランスのスポーツ紙)では1面で、受賞者を選ぶ各国の記者向けに「グリースマンに投票しよう」キャンペーンを実施。

それには当人も大感激したようですが、自身でも「Si saliese tercero en el Balon de Oro no seria una decepcion/シー・サリエセ・テルセーロ・エン・エル・バロン・デ・オロ・ノー・セリア・ウナ・デセプシオン(バロンドールで3位になっても失望はしないよ)。ボクがいい方向に進んでいるってことだからね」と言っていたように、大事な決勝でゴールを入れられる選手になるまで、まだ今は精進が必要だとわかっていてくれるのは、アトレティコにとって、とてもありがたいことじゃないでしょうか。

そして試合の方は、待望の1点を奪った後のアトレティコがレバンドフスキやミュラー、アルトゥロ・ビダル、ドグラス・コスタ、ロッベン、チアゴ・アルカンタラらの来襲を意識してか、どちらかというとスリープモードに近い動きになってしまったんですが、幸い終盤のモスケラのシュートもゴディンが顔面クリアしてくれたため、大事には至らず。そのまま1-0で勝利すると、前日、メッシ負傷離脱にまったく影響を受けず、ヒホン(スペイン北部のリゾート都市)でのスポルティング戦に0-5と大勝した2位バルサとは勝ち点差1、首位マドリーとの勝ち点差は2で、アトレティコも3位の定位置につくことができました。

え、デポルティボに勝つのがこんなに大変なアトレティコが、ブンデスリーガ5連勝中のバイエルンを相手にしたら、とても勝負にならないんじゃないかって? まあ、セオリーではそうなんですが、先週ミッドウィークのバルサ戦のように、ガンガン攻めてくる敵を守り倒すのは得意な彼らですからね。再びアンチェロッティ監督の下でプレーするようになったシャビ・アロンソも、月曜にマルカ(スポーツ紙)に載ったインタビューでは、昨季CL準決勝での対戦で一番驚かされたのはサウルと告白。「イニエスタやモドリッチなら完璧にできるんだけど、MFには時に難しいこと、la conduccion y traspasar lineas/ラ・コンドゥクシオン・イ・トランスパサール・リネアス(ドリブルと敵のラインを越えること)」をして、1stレグの決勝点を挙げたプレーを褒めていたように、たまにはひょんな弾みでゴールが入ることもあるとなれば、そんなに悲観はしなくていい?

まあ、どちらにしろ水曜午後8時45分からの試合はグループリーグなので、今回は気が楽なのは確かですが、とりあえず、アトレティコの欠場者は全治7カ月になってしまったアウグストと代表戦後には戻ってこれそうなヒメネス、まだランニングを始めたばかりのチアゴも難しいかと。ちなみに月曜のリハビリトレでは、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場グラウンドに並べたバイシクルを和気藹々と漕いでいた選手たちですが、コケによると、「バイエルンは強くて、難しい試合になるのはわかっているけど、ボクらはグループリーグを突破したい。Para ello tenemos que hacer un gran partido y ganar/パラ・エヨ・テネモス・ケ・アセール・ウン・グラン・パルティードー・イ・ガナール(そのためには凄い試合をして勝たないと)」と意欲は十分あるようなので、私もキックオフを楽しみに待つことにしましょうか。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。