「随分、人気者なったのねえ」そんな風に私が感心していたのは月曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設のスタンドでその日、合宿に入ったスペイン代表の初練習開始を待っていたところ、見学に来ている子供たちの間から、ひっきりなしに「サウル、サウル!」とコールが飛んでいるのに気が付いた時のことでした。いやあ、9月の代表戦では親善試合のベルギー戦にだけ参加して、2試合目はユーロ予選が佳境にあるU21代表の応援に行ったは良かったものの、自身のオウンゴールでチームはスウェーデンに勝てず。そのせいか、まだグループ首位勝ち抜けのチャンスがある今回のサンマリノ戦とエストニア戦にはセラデス監督もお隣さんのアセンシオを戻してもらったため、練習中のゴール運びを手伝うこともなく、A代表に専念することになったサウルですけどね。
さすがは地元アトレティコの選手、しかも現在、栄えあるリーガ首位チームのレギュラーとなれば、ファンからキャーキャー言われても当然よねと私も頷いていたんですが、あらまあ。コーチと何か話した後の当人はサッカーシューズを小脇に抱えたまま、グラウンドから引き上げてジムへ向かうところ。要はスタンド方向に歩いて来ていたせいで、誰でもいいからサインをゲットしたいとフェンスに貼りついている子供たちが呼んでいただけだったとは。とんだ早とちりをしたものですが、最近はどのチームも負傷者の話題が多いですからね。その夜には、たまたまマンチェスター・ユナイテッドの練習休みを利用して、マドリッドに遊びに来ていたアンデル・エレラが追加招集されたというニュースも伝わってきて、日曜のバレンシア戦でも途中交代していたサウルの状態が懸念されたものでしたが…。

まあ、代表関連はまた後で触れるとして、まずは先週末のリーガの試合がどうだったか、お伝えしていかないと。今回は珍しくマドリッド勢の先陣を切って、土曜の午後1時から新弟分のレガネスがグラナダと対戦したんですが、パコ・ヘメス監督解任後のプラナグマ代理監督には事態を改善することはできず。後半31分にシマノフスキがゴールを挙げ、アシエル・ガリターノ監督のチームが0-1でparon(パロン/休止期間)前、最後の一戦を勝利で飾ることに。レガネスには各国代表に出向する選手もあまりいないため、この2週間はじっくり練習に励んで、15日のセビージャ戦で1部ホーム初勝利を目指すことになります。

そして翌日曜にマドリッドの両雄の試合だったんですが、正午から近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行ってサッカーを見るのはどこか微妙。というのも、私も午後2時過ぎのスペイン昼食時間に合わせているため、まだお腹は空いてないし、いくら週末でも午前中からカーニャ(グラスビール)なんて日本人には無理だし、結局、カフェ・コン・レッチェ(カフェオレ)を頼みましたが、この国コーヒーは濃いですからね。さすがに2杯、3杯と続ける訳にはいかず、メスタジャ(バレンシアのホーム)での前半、アトレティコがいいリズムでプレーしながらも、なかなか点が取れないのを眺めつつ、フルタイムいてドリンク1つしか頼まないのも外聞が悪いかもと悶々と悩んだ末、最近始めたらしいフルーツテイストのアイスティなるものを試してみたところ、これがまあまあの出来。

何より、この国の普通の飲食店で出されるアイスコーヒー、カフェ・コン・イエロのようにホットの入ったカップから自分で氷入りグラスに注ぎ込む形式でなかったのには助かりましたが、まあそれはどうでもいい話で、前半終盤には先制点の絶好のチャンスがあったんですよ。ええ、42分にはその日、先発に抜擢されたコレアがエリア内でナニに倒され、PKを獲得。ところが、先日のCLバイエルン戦に続いてキッカーを務めたグリースマンがGKジエゴ・アウベスに弾かれてしまったから、やはり2度あることは3度ある? そう、これで彼は昨季のお隣さんとのCL決勝から、3回連続のPK失敗です。

おかげで0-0のまま、ハーフタイムに入ったアトレティコでしたが、後半はシメオネ監督が素早くリアクション。15分もしないうちにサウルをカラスコに、コレアをフェルナンド・トーレスに代え、グリースマン、ガメイロ合わせて、超攻撃的な4人FW体制にしたのが大正解でした。18分にはカラスコのスルーパスから、トーレスがシュート、これはアウベスに弾かれてしまったものの、こぼれ球を拾ったガメイロがグリースマンに流すと、リベンジとばかりに彼の弾丸シュートが決まって、とうとう全アタッカーが協力して、先制してくれたから、ホッとしたの何のって。

その後もアトレティコの攻勢は止まず、早くも2分後にはグリースマンがエリア内でマリオ・スアレスに引っくり返されて再び、彼らはPKをもらったんですけどね。さすがにこの時ばかりはシメオネ監督がベンチから大声で指示を送り、キッカーはガビに託されたんですが、おやおや、こんなことがあっていいんでしょうか。グリースマンとは反対方向に蹴ったキャプテンのPKもアウベスが弾いてしまったとなれば、もう成す術ありません。実際、後で聞けば、彼はこれまでリーガで41回PKを蹴られ、そのうち19回を止めている筋金入りのparapenalti(パラペナルティ/PK止め屋)だと言いますしね。3年ほど前、昨季からバレンシアにレンタル移籍しているシケイラ(この日はベンチ)が順番を無視して勝手にPKを蹴り、やはりアウベスに阻止されて、チームの反撃ムードを台無しにした時に比べれば、曲がりなりにもリードしているだけ、状況は全然マシですって。

え、前日はシメオネ監督が「彼はtobillo noble/トビージョ・ノブレ(高貴な足首)を持っている。だから先発するだろう」と言っていたにも関わらず、結局、ウルグアイに行く前にバイエルン戦での捻挫が悪化することを恐れてスタンド観戦になったゴディンはいなくても、基本的に守備は堅いアトレティコなんだから、そのまま0-1で勝ったんだろうって?それが、確かにナニの負傷交代に始まって、終盤はエンソ・ペレス、マンガラも痛みを我慢しながらプレーしていたバレンシアだったため、同点にされる可能性は低かったんですけどね。その日はビセンテ・カルデロン開場50周年を記念して、スタジアムを開放。ロッカールームやVIPエリアを回り、トロフィーと写真を撮った後、ピッチに設置された大型スクリーンで試合を観戦していた9000人余りのファンにも、帰る直前に思いがけないお土産ができたんです!

それはロスタイム2分、ファンフランが自陣から出したロングパスを追ったガメイロが、いやあ、こういうところにアトレティコに来てからのフィジカル強化トレニーングの成果が表れるんですかね。90分プレーしているというのに敵エリア内まで一気に駆け上がり、2点目を決めてくれたから、驚いたのなんのって。実際、水曜にはバイエルンよりチーム計で8キロも多く走る健脚自慢をしていながら、先に疲れていたのは1週間ぶりの試合だったバレンシアの方だったのを見るにつけ、体力があるのはいいもんだと心底、思ったものですが、その日はパルコ(貴賓席)で見学していたボロ監督を引き継ぐプランデッリ監督もチーム再建の第一歩はまず、選手たちにスタミナをつけることからですかね(最終結果0-2)。

そしてバルを出て、次にはサンティアゴ・ベルナベウへ向かった私ですが、いえ、もう先月のオサスナ戦でわかっていたので、直射日光地獄に備えて、その日は日焼け止めもしっかり塗って行ったんですけどね。今回のエイバル戦では午後4時15分のキックオフから試合終了まで、正面スタンド3階席はずっと日向のまま。おかげで後半にもなると、頭がもうろうとしてきたんですが、その原因には点が入ったのが序盤だけだったというのもあったかと。

そう、前日記者会見でジダン監督が「試合の最初から最後まで100%でプレーしてほしい」という願いも空しく、レアル・マドリーは「No estamos metiendo intensidad en el inicio/ノー・エスタモス・メティエンドー・インテンシダッド・エン・エル・イニシオ(ウチは序盤のプレーに激しさがない)」(ジダン監督)状態だったんですよ。その結果が前半5分、カパのクロスをフラン・リコがジャンプもせずにゴール前からヘッドで叩き込み、エイバルの先制点となって現れたんですが、幸い追いつくのに時間はそうかかりません。17分にはクリスチアーノ・ロナウドのクロスをベイルが力強く、頭でゴールに撃ち込んで、一旦は場内も満足したかに思えたんですが…。

いつまで経っても追加点が奪えないのではねえ。ちなみにその日は試合前のアップの時に先発予定だったハメス・ロドリゲスがふくらはぎに違和感を覚えて急遽、コバチッチと交代。ベンチで見学することになったのに加え、ベンゼマとバランも前半にケガをして、後半のピッチに戻って来なかったり、それより何より、ヒザの軟骨を痛めて休場していたモドリッチが月曜には手術をして全治1カ月に。何せここ数試合、マルセロが肉離れで出られないのに、ようやく終わった長いリハビリ後、コエントランも筋肉痛でベンチに入れなかったのはともかく、元から代役のいないカセミロも腓骨骨折ですから、まだ当分復帰に時間がかかりますからね。
となれば、「Estamos en una racha en la que con poquito nos hacen gol/エスタモス・エン・ウナ・ラチャ・エン・ラ・ケ・コン・ポキート・ノス・アセン・ゴル(ウチはほんの少しのことでゴールを入れられてしまう流れになっている)」上、「Nos esta faltando chispa en el ultimo cuarto de campo/ノス・エスタ・ファルタンドー・チスパ・エン・エル・ウルティモ・クアルト・デ・カンポ(ファイナルサードに火花が欠けている)」(カルバハル)では、エイバルに堅実に守り切られ、とうとう4試合連続の引き分けになってしまったのも仕方ない?うーん、ベンゼマはともかく、ロナウドもベイルも最後までピッチにいながら、彼らが得点できないというのは、本当に不思議なんですけどね(最終結果1-1)。
やはり鍵は試合後、ペペが「Solo la calidad no nos puede llevar a la victoria/ソロ・ラ・カリダッド・ノー・ノス・プエデ・ジェバール・ア・ラ・ビクトリア(質の高さだけ勝利を掴むことはできない)。戦士になって、相手の激しさと拮抗するプレーをして、タレントで差をつけなければ」ということなのでしょうが、来週半ばまでチームは控え待遇のイスコやナチョ、ルーカス・バスケスらまで、15人もの選手が各国代表に駆り出され、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場は開店休業状態。ジダン監督は「皆が戻って来てから、改善するつもりだ」と言っていましたが、そんな折、ケガしているハメスやバランまで招集免除にならないのは踏んだり蹴ったりだったかも。

一方、期待していなかった結果を出したエイバル陣営は、「Puntuar es una sensacion nueva para el Eibar, para mi/プントゥアル・エス・ウナ・センサシオン・ヌエバ・パラ・エル・エイバル、パラ・ミー(勝ち点を取るというのはエイバルにとっても私にとっても新しい感覚)」と、サンティアゴ・ベルナベウでキャリア初のポイントゲットをしたメンディリバル監督を始め、ドルトムント戦引き分け後にダニーロが「このツケを払うのはエイバル」と言ったのに苦言を呈していた、マドリーにも1年だけいたことのある元ヘタフェのペドロ・レオンら、選手たちも大喜び。うーん、だからって、人様のスタジアムのロッカールームでジャグジーに泥の付いたソックスやユニのままつかるなんてのは、衛生的にどうかと思いますけどね。一応、ベンチで出場機会のなかった乾貴士選手は浴槽に入っていませんから、とりあえず安心できるかと。

まあ大体、そんな感じで私の日曜は終わったんですが、まさかその夜に最大級の驚きが訪れることになるとは!ええ、バライドス(セルタのホーム)で戦ったバルサが昨季に続いて4失点で負けたんですよ。何せ、この日は9月にアトレティコが0-4で大勝していた相手だったため、期待もしていなかったんですけどね。前半3点も取られた後、後半に3-2まで追い上げながら、GKテア・シュテーゲンのゴールキックがパブロ・エルナンデスの頭を直撃してゴールを割るとは一体、誰に想像できる? 最後はCFと化したピケが自身のその日2点目を挙げ、4-3としたバルサでしたが、この節の嬉しい副産物はマドリーが宿命のライバルに抜かれなかったこと…じゃなくて、やはりアトレティコがお隣さんとの得失点差で堂々、首位として、この2週間を過ごせることでしょうか。

おかげでアトレティコからスペイン代表に招集されたコケとサウルもいつもより、ちょっと胸を張ってラス・ロサスに来られたと思いますが、実はバルサでもメッシやラキティッチらがケガで今回のW杯予選に参加できないのと同様、負傷禍の魔手はスペイン代表にも。いやあ、金曜にリストを発表したロペテギ監督は予感がしたのか、日曜には早くもレアル・ソシエダのCB、イニゴ・マルティネスを追加招集。エイバル戦にセルヒオ・ラモスがジダン監督のローテーションでベンチ入りしなかったため、あれこれ憶測されたものの、月曜にはハビ・マルティネスが代表医の診断だけ受けて、オクトーバーフェスト真っ盛りのミュンヘンにトンボ帰りすることに。

更に夕方の練習ではサウルに加え、バイエルンの同僚チアゴ・アルカンタラにも不具合があったため、アンデル・エレラを呼んだようですが、何せ今回は予選が2試合、しかも相手は夏のユーロでベスト16敗退を喫した強豪イタリア、そしてやはりユーロ出場国だったアルバニアですからね。いくら9月はロペテギ新体制でリヒテンシュタインに8-0と大勝しているとはいえ、できるだけ用心しておくに越したことはない?

そんなスペイン代表は、U21チームがサンマリノに発った火曜にもラス・ロサスでダブルセッションをして、水曜にはトリノ入り。このところジエゴ・コスタがチェルシーで好調なようですし、モラタも2年間お世話になったユベントスのホームでの試合ということで張り切っていますし、イタリアの選手をよく知るナポリのカジェホンが久々に再招集されているため、ユーロとは違って得点は期待できそうですが、さて。注目のイタリアvsスペイン戦のキックオフは木曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)、好ゲームになってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。