“薄氷の勝利”という言葉がピッタリ当てはまる試合だった。後半アディショナルタイム5分、フリーキックのこぼれ球をMF山口蛍が豪快にボレーで沈め、イラク代表を下し、勝ち点3を獲得した。

ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の初戦となった9月のUAE代表戦では、同じ埼玉スタジアム2002で1-2と逆転負け。よもやの敗戦により、一気に緊張感が増した。そして迎えたイラク戦…決して内容は褒められるものではなかったが、勝ち点3を得ることができた。

この試合の目的は何だったのか。キレイなサッカーを見せることだったのか、イラクを圧倒することだったのか、スペシャルなゴールを決めることだったのか──この試合で最も重要なミッションは、勝ち点3を獲ること。それ以上でも、それ以下でもないことを考えれば、結果は100点と言えるだろう。

試合後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「美しい勝利ではないが、勇気の勝利」とコメントした。そして「本当に価値の高い勝利」とも語っている。グループ最大の敵とも言われているオーストラリア代表とのアウェイ戦を控える日本にとって、勝って臨めることは大きな後ろ盾となる。

ハリルホジッチ監督は、イラク戦でMF香川真司(ドルトムント)、DF長友佑都(インテル)をスターティングメンバーから外し、トップ下にMF清武弘嗣(セビージャ)、左サイドバックにはUAE戦、タイ戦に続きDF酒井高徳(ハンブルガーSV)を起用した。

これまでの実績などを踏まえてメンバーを組んだUAE戦は、コンディション不良の問題を露呈。結果的に敗戦を喫することとなった。同じ轍を踏むことをしなかったことは、良い判断だったと言えるだろう。

また、先制点も清武らしさから生まれたゴールだったとも言える。長い距離を走り、FW本田圭佑に選択肢を与え、FW原口元気に走り込ませる時間も作った。前線の4人が連動した見事な崩しだったと言える。

しかし、試合全体を見れば、内容面では満足行くものとは言えなかった。攻撃のスイッチが入るタイミングがなく、良い形で前線にボールが入っても、周りの動きが足りずにボールをロストする場面も散見された。“フィニッシュ”というものへのこだわりは、日本がもっと持つべきもの。シュートシーンでパスを選択する場面も少なくなかった。結果的にフィニッシュの形に持ち込めないのであれば、シュートを打った方が、相手守備陣には脅威になる。現に、イラクのシュートに肝を冷やした場面は多かった。

次は前半戦の山場であるオーストラリア戦。アウェイでの戦いを考えれば、今度は負けてはいけない試合になる。第3節のサウジアラビアvsオーストラリアが引き分けに終わったことで、上位2カ国との勝ち点差は1となり、次節の結果次第では日本の首位浮上もある。

そういった意味でも、イラク戦の“勝利”という結果は、素直に喜ぶべきだろう。この戦いは、W杯の出場権を懸けたもの。内容ではなく、結果を残さなくてはいけない。すでにホームで1敗を喫しているのだから、なおさらだ。

試合の内容はトレーニングで突き詰めることができても、勝ち点は3パターンしかない。満足行かない試合内容であっても、土壇場で最高の勝ち点を獲れたことが何よりも重要だ。ギリギリで掴んだこの勝利は、結果として、そしてメンタル面、選手の経験値としても、今予選の大きなターニングポイントになる可能性があるだろう。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》