「いや、まだ早いでしょ」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、今週末のリーガ戦に向けて、マドリッド勢の新弟分レガネスが出したポスターを見た時のことでした。いえ、サングラスをかけさせた選手たちの写真に、「No los llaméis por su nombre, que viene Monchi y los apuntará en su libreta/ノー・ロス・ジャメイス・ポル・ス・ノンブレ、ケ・ビエネ・モンチ・イ・オス・アプンタラ・エン・ス・リブレタ(名前で呼ぶな。モンチが来て手帳に書きつけるぞ)」と添えられた文句はなかなか、考えているなという感じはするんですけどね。

確かに昨季まで11年間、1部で頑張っていたご近所のヘタフェなど、セビージャの敏腕スポーツディレクター、モンチ氏にマヌ・デ・モラル(現在は2部のヌマンシア)、エスクデロ、サラビアらをさらって行かれたこともあったため、レガネスのフロントがドキドキする気もわからなくもないものの、それでも彼らは今季昇格したばかりの新参者。私なんか、2節のマドリーミニダービー、アトレティコ戦を見ていた時だって、誰1人、聞き覚えすらない選手ばかりでお手上げだったというのに、一足飛びに前人未踏のヨーロッパリーグ3連覇を成し遂げた、CLにも出ている強豪からお声がかかる程の逸材がいるとは、とても思えなかったから。

まあ、そこは冗談のわかるモンチ氏らしく、「dile que van tarde, ya me sé los nombres y hasta donde viven jajaja/ディレ・ケ・バン・タルデ、ジャー・メ・セ・ロス・ノンブレス・イ・アスタ・ドンデ・ビベン・ハハハ/遅れていると伝えるように。もう私は名前もどこに住んでいるかも知っているよ」とツィートで返していましたが、それにしてもレガネスもツイていない。というのも、7節まで終わって勝ち点10の11位というのは上々の成績ですが、ほとんどのポイントはアウェイで稼いだもので、ホームではアトレティコの後もバルセロナ、バレンシアと予算の多いチームの来訪ばかりが続き、未だに地元サポーターの目の前で勝利を挙げられておらず。そしてこの土曜はセビージャとなれば、個人的には清武弘嗣選手が出るかもという期待はあっても、レガネスのホーム初白星を見るのは10月下旬のレアル・ソシエダ戦までお預けかもしれない?

え、それより日曜にあったスペイン代表のW杯予選2試合目はどうだったのかって?うーん、シュコドラでのアルバニア戦では相手の攻撃力も勘案して、ロペテギ監督は3バック制を採用。先週のイタリア戦で負傷して代表を離脱したジョルディ・アルバ(バルサ)の代わりに急遽、招集され、ロンドンから直接現地にやって来たモンレアル(アーセナル)がいきなり先発していたのには驚かされましたが、とにかく相手は全員で守っているんですものね。とりあえず、ピケ(バルサ)とセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)がいれば、大抵のことは大丈夫だろうと踏んだんでしょうが、実際、その3人のDFも攻撃参加していることの方が多かったかも。ただ前半のうちはボールを絶対的に支配しながら、好調ビトロ(セビージャ)の2本のシュートも決まらず、30分過ぎ頃からはスタンドで焚かれた大量のbengala(ベンガラ/発煙筒)のせいで、視界が悪いせいもあったんでしょうかね。試合は0-0のままハーフタイムに入ります。

そして試合の後半からは雨がジャンジャン降り出したんですが、そのせいで敵GKも気が散ったのか、9分にはゴールキックを自陣にいたビトロに蹴ってしまったから、渡りに舟とはまさにこのこと。ええ、イタリア戦でもGKブッフォンのミスを利用して得点した彼からスルーパスを受けたシルバ(マンチェスター・シティ)がジエゴ・コスタ(チェルシー)にボールを送り、そのフィニッシュで見事に先制点が入ったとなれば、もう安心じゃないですか。加えて、そのすぐ後にビトロに代わって入ったノリート(マンチェスター・シティ)が、こちらはエリア内で敵DFを切り返して17分にシュート。2点目を決めてくれるとは、トリノでは出番をもらえなかった彼ですが、プレミアリーグ組はとにかく頼りになりますね。

結局、そのまま0-2でスペインが勝ったんですが、実はこの試合では大きな問題が生じていて、その1つは後半33分に空中戦からの着地を失敗したラモスが左ヒザを痛めて交代となってしまったこと。代表のドクターによる「ヒザの捻挫で程度は1か2」という見立ては悪い方が当たり、マドリッドに戻って受けた検査結果は2、すなわち靭帯の部分断裂ということで、全治6週間となってしまったから、気の毒じゃないですか。

もう1つは、お騒がせ常連のピケが試合後のミックスゾーンで代表引退宣言をしたことで、いえ、この日の騒動の発端はとんだ濡れ衣だったんですけどね。というのも、アルバニア戦の早い時間から、彼のユニフォームの袖口にスペイン国旗の赤と黄の筋がないことに気づいた誰かが、「ピケはわざと袖口を切ったんじゃないか」と邪推。メディアやファンのツィートで愛国心がないだの何だのと拡散しまくって、凄いことになっていたようですが、それを聞いたピケの怒りようといったらもう。代表付きサッカー協会職員が切られた袖2本を持ってきて、記者たちに見せていたのはともかく、本人はわざわざラモスのユニを持って登場。

元々、半袖とは違って、長袖には国旗の色がないことを示しつつ、「he cortado la camiseta porque las mangas eran muy cortas y me molestaban/エ・コルタードー・ラ・カミセタ・ポルケ・ラス・マンガス・エラン・ムイ・コルタス・イ・メ・モレスタバン(袖が短くてうっとおしかったから、切っただけだ)」と説明したのには、だったら最初から半袖を着ればと思ったものですけどね。どうやらいつも長袖しか着ないピケとラモスにはそちらの用意しかなかったよう。

おまけにそのキャプテンの方は試合中、ずっと袖まくりしていたものだから、見ている方も比べようがなかったという不運な面もありますが、だからって、1年程前にはバルサの祝賀イベントで宿敵をおちょくった言動が原因で、スペイン国内の代表戦で大きなpito(ピト/ブーイング)を受けるようになっても、代表を辞める気は一切ないと主張。ところが、その日はいきなり「もうこれはコップから水が溢れる最後の一滴。El Mundial de Rusia va a ser mi ultima competicion con Espana/エル・ムンディアル・デ・ルシア・バ・ア・セウ・ミ・ウルティマ・コンペティシオン・コン・エスパーニャ(ロシアのW杯がスペイン代表として自分の最後の大会)」って、また随分、飛躍したことを言うじゃないですか。

うーん、これには協会もマズいと思ったか、オフィシャルウェブにすぐに声明(http://www.sefutbol.com/oficial-comunicado-polemica-acerca-camiseta-del-internacional-gerard-pique)を出して、アディダスのスペイン代表長袖ユニには何もついていないことを強調していましたけどね。ロベテギ監督も「Yo tambien entiendo a Pique/ジョ・タンビエン・エンティエンドー・ア・ピケ(私にもピケの気持ちがわかる)」と理解を示していましたが、何にしてもW杯は2年後とまだ遠い先のこと。

その日同時刻にプレーしたイタリアが土壇場のゴールでマケドニアに逆転勝ちして、グループ首位のスペインと同じ勝ち点で並び、ロペテギ監督も「Va a ser largo y duro/バ・ア・セル・ラルゴ・イ・ドゥーロ(長く厳しい戦いになるだろう)」と言っていたように、出場がすんなり決まるかどうかもわかりませんし、それまでにまた、「Lo tengo muy meditado, no es una calentura/ロ・tンゴ・ムイ・メディタードー、ノー・エス・ウナ・カレントゥラ(これはよく考えた末の決断、頭に血が昇ってじゃない)」と言っていた当人が心変わりをすることだってあるんですから、あまり大袈裟に捉えなくてもいいかと。

実際、もう今年の予選は11月のマケドニア戦だけで、アウェイだったイタリアと違い、会場もグラナダのヌエボ・ロス・カルメネスですから、そんなに苦労はしなさそうなスペインですが、やはり大変そうなのはFIFAウィルスにやられた各クラブの方。ええ、もちろんマドリー勢ではクリスティアーノ・ロナウドがアンドラ戦での4発に続き、フェロー諸島戦でも1ゴールとポルトガル代表で調子を取り戻してくれたり、ベイルが今度はウェールズ代表で跳躍力を披露。1メートルもジャンプしてジョージア戦でヘッドを決めたりと、悪いことばかりではなかったんですけどね。

コバチッチも、フィンランド戦でマンジュキッチが決めた決勝ゴールはアトレティコのブルサリコが上げたクロスが起点ながら、2試合フル出場して、自信をつけたはずですし、クロースもドイツで2連勝、3失点したものの、コスタリカはロシアとの親善試合に3-4で勝ち、遠出をせずに足慣らしのプレー時間を増やせたケイロル・ナバスにも収穫はあったはずなんですが…。

何せ、ラモスは当然ながら、モドリッチやカゼミロもまだ、この土曜のベティス戦にも来週火曜のCLレギア・ワルシャワ戦にも戻って来られませんからね。結局、大西洋横断無駄足旅行をしたハメス・ロドリゲスもこの週末は無理そうですし、となると月曜にU-21スペイン代表のエストニア戦で2ゴールを決め、5-0で勝って、来年のユーロ大会を懸けたプレーオフ出場権を手に入れるのに大貢献したアセンシオ辺りに出番が回ってくるかも。ここ4試合、引き分けで白星を挙げられてないジダン監督としては、またスタメン選びに神経を使うことになりそうです。

一方、それ程、代表戦週間の被害を受けなかったのはお隣さんのアトレティコで、大体、イタリア戦の後にスペイン代表から帰されたサウルのケガはparon(パロン/リーガの中断期間のこと)直前のバレンシア戦で受けた打撲だそうですし、2試合フル出場したコケもフルサリコと共に月曜はお休みをもらい、火曜には元気にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に出勤。ブルガリア戦ではフランス中を席捲したdoble G(ドブレ・ヘー)も、オランダ戦ではポグバのゴールで0-1と勝ったのを一緒に祝うだけでしたが、特に体に支障はなかったようですし、それはベルギー代表に行っていたカラスコも同様のよう。

スロベニアのGKオブラクもスロバキアとイングランドを無失点に抑え、1試合目のカザフスタン戦でモンテネグロの6点目を挙げたサビッチもデンマークに0-1で勝利するのに貢献。あと心配なのはヨーロッパの火曜深夜にウルグアイとブラジルでそれぞれ、コロンビア戦とベネズエラ戦をプレーするゴディンとフィリペ・ルイス、こちらは出るか出ないかわかりませんが、パラグアイ戦に臨むアルゼンチンのガイタン、コレアだけですが、幸いなことにこの1週間で、肉離れのリハビリをしていたヒメネスがかなり回復したとか。何せ、この土曜のリーガ戦も相手は最下位グラナダを迎えてのホームゲームですしね。せっかく得失点差ではありますが、前節には首位に立てましたし、このまま常勝気運を保っていってくれることを期待しています。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。