「感化されちゃったのかしらね」そんな風に私が首を傾げていたのは日曜日。夜のニュースでプランデッリ新監督がデビューしたバレンシアがマリオ・スアレスの2得点でスポルティングに勝ったのを知った時のことでした。前日にあまりにゴールを見過ぎたため、マドリッド勢の試合のないその日は家でダラダラしていたんですけどね。

1年前、出場機会を増やすためにアトレティコを出て、セリエAのフィオレンティーナに移籍。そこから半年でプレミアリーグのワトフォードに移り、この夏にはバレンシアと忙しい日々を送っていた彼ですが、それがいきなり2ゴールも挙げて、親戚がヒホン(スペイン北部のリゾート都市、スポルティングのホーム)にいる父親から「no metes nunca un gol y metes dos al Sporting/ノー・メツ・ヌンカ・ウン・ゴル・イ・メテス・ドス・アル・スポルティング(ゴールなんてほとんど入れないのに、スポルティングには2ゴールも決めるのか)」と怒られているなんて、まるで冗談のように思えたから。

実際先週末のリーガはそこ、ここでゴール祭りとなりました。私は土曜日に、リーガ1部となってから初めてのブタルケ(レガネスのホーム)を体験。数年前、プレシーズンにアトレティコとの親善試合を見に行った時とは違い、bufanda(ブファンダ/マフラー)を片手にスタジアムに向かう人たちの後をついて行けば迷うことはないです。なので、予定が合えば、日本から来るファンにもマドリッドでのリーガ生観戦の新しいオプションとして利用できますが…。ちょっと心配なのはスタジアムのキャパ。1万1000人と少ないので、とりわけ昇格直後の今季は地元も盛り上がっていますし、バルサやレアル・マドリーなど、ネームバリューのあるチームとの試合チケットを取るのが難しいことでしょう…。

おかげでこのセビージャ戦もほぼ満員状態でしたが、スタジアムが小さいためピッチまでの距離がサンティアゴ・ベルナベウやビセンテ・カルデロンに比べ、圧倒的に近いという長所に。臨場感溢れる試合を楽しめましたが、せっかく積極的に攻めていたホームチームを応援していても、25分にはビエットのクロスからフランコ・バスケスがネットを揺らして、セビージャが先制。続いて58分にも、今度はこぼれ球をナスリに押し込まれていてはねえ…。やはり新参者と、ヨーロッパリーグ最多優勝記録5回をギネスブックに載せてもらえるようなチームとの差は大きいと痛感していたところ…。

マドリッドの弟分が根性を見せてくれたんですよ! それは66分、ボランチのティモルがエリア前から放ったシュートで1点を返すと、その3分後にはここ2試合で連続ゴールを挙げていたシマノフスキがGKセルヒオ・リコのミスもあって同点弾をゲット。それにはサポーターも大いに沸いたんですが…。最後は85分にサラビアがgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、2-3でセビージャが勝利。彼らは2015年5月以来のリーグ戦アウェイでの白星を掴むことになりました。

まあ、次は火曜日のCLディナモ・ザグレブ戦で、今度は清武弘嗣選手も伴って、再びアウェイでの勝利を目指さないといけない彼らですから、それはそれで景気づけになって良かったんでしょうけどね。直に見ると、決定力はあまりないながら、いいプレーをしていたレガネスの方はまたしてもホーム初勝利がお預けとなりました。ただ、これでアトレティコ、バルサ、バレンシア、セビージャと続いたビッグクラブ来訪の波もひとまず終了。となれば、10月末のレアル・ソシエダ戦からは少しずつ、いい結果も出せるようになるんじゃないでしょうか。

そしてブタルケを出た後、ビセンテ・カルデロンに向かった私でしたが、これはキックオフ時間が午後1時と6時半なら余裕で可能。途中、乗り換えが多いので、4時15分の時間帯に当たってしまうと、アトーチャ駅からタクシーなんて手を使う必要もあるかもしれません。おかげで私もその頃、カンプ・ノウでバルサがデポルティボに4-0と大勝していることなど気にかけることなく、ゆっくりスタジアムの近くのテラスでランチをとることができたんですが、まだ10月ですからね。折しもその日はDia de las Penas/ディア・デ・ラス・ペーニャス(ファンクラブの日)だったため、スペイン各地から到着するバスから、続々と降りてくるサポーターたちもその時点でアトレティコがセビージャ、バルサに続いて、3位に後退していたのはあまり気にしていなかったよう。

え、それはアトレティコの選手たちも同じじゃなかったかって? そうですね。でなければ、ファンたちが場内を白と赤の旗で埋め尽くしてカルデロンの開場50周年を祝う中で、17分に先制を許して最下位グラナダにリードされることはなかったかと。ただ、その先はとんでもない展開になって、FW4人体制という超攻撃的メンバーでスタートしていたアトレティコが反撃の口火を切ったのは33分。コケのCKを起点にゴディン、グリーズマンのヘッドは弾かれながら、こぼれたボールをカラスコが撃ち込んで、あっさり同点に追いついてしまいます。

さら45分にもカラスコのシュートがティトに当たってゴールとなり、アトレティコは勝ち越してハーフタイムに。すると60分にもグリーズマンがエリア奥から折り返したラストパスからカラスコが決めて、何とハットトリックを達成。どうやらこれはシメオネ監督から何度も、「Me dice que tengo que marcar mas goles, que me atreva mas a disparar/メ・ディセ・ケ・テンゴ・ケ・マルカル・マス・ゴーレス、ケ・メ・アトレバ・マス・ア・ディスパラール(もっとゴールを入れないといけない、もっとシュートしないといけないと言われている)」(カラスコ)ことが功を奏したよう。ええ、当人も感謝の印か、この時は監督のところまで一緒にお祝いしに走っていましたよ。

アトレティコの選手が1試合3得点をするのは、2年前のアスレティック戦でグリーズマンが達成して以来と昨今では珍しいことなんですけどね。ミックスゾーンで「estoy feliz por haber marcado tres goles por primera vez en mi carrera/エストイ・フェリス・ポル・アベール・マルカードー・トレス・ゴーレス・ポル・プリメーラ・ベス・エン・ミ・カレラ(キャリア初の3得点ができて嬉しい)」と言いながら、チームメート全員にメッセージを書いてもらったボールを抱えたカラスコの姿を見るにつけ、在籍最後の年はハットトリック以上のゴールを挙げない限り、インタビューに出て来なかったファルカオ(現モナコ)の姿を思い出してしまったものですが…。そういえば、奇しくも彼もアトレティコに来る前はモナコにいた選手。そんな縁でゴール量産体質が伝染してくれていたのだったら、本当にありがたいですよね。

え、その日一番のビックリは勝利が確実なアトレティコがそれからも攻め続けたことじゃないのかって? うーん、まあガイタンが、移籍後初ゴールを挙げたぐらいまではメデタシメデタシで済んでいたんですけどね。65分過ぎには、水曜日のCL戦を見据えてコケとグリーズマンがチアゴとフェルナンド・トーレスに代わり、場内を何周もする“ola(オラ/ウェーブ)”を楽しんでいるファン同様、あとは終了の笛が鳴るまで、私も気楽に見ていればいいと思ったんですが、いえいえ、とんでもない。

終盤にまたギアを上げたアトレティコは81分に再びガイタンが、その3分後にはコレアが、さらに87分にはトーレスが素早く出したスローインを起点にチアゴが決めて、とうとうスコアが7点まで行ってしまったとなれば、もうこれはお隣さんに匹敵するgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)力では? 後でシメオネ監督は「Les dijimos en la charla que trasmitieran pasion y ambicion a los chicos de la grada/レス・ディヒモス・エン・ラ・チャルラ・ケ・トランスミティエラン・パシオン・イ・アンビシオン・ア・ロス・チコス・デ・ラ・グラダ(ミーティングでは、スタンドにいるファンたちに情熱と野心を伝えなければならないと選手たちに話した)」と言っていましたけどね。その甲斐あってというか何というか、混雑を避けようと早めにスタジアムを出ようとしていた観客も完全に帰るタイミングを失っていましたっけ(最終結果7-1)。

そして次の時間帯ではレアル・マドリーがアウェイでベティスに挑んだんですが、結果的にアトレティコはゴールを入れ続けて正解だったことが後でわかります。いえ、元々、勝ち点数では同じで、得失点差で首位に立っていた彼らでしたが、グラナダ戦が終了した時点でその差が9に拡大。おかげで開始4分にクロースのFKから、ヴァランがヘッドで先制点を挙げた時には、私がビセンテ・カルデロンのミックスゾーンで聴いていたオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)のアナウンサーも「首位奪還にはあと8点ですね」などと、ふざけた調子で喋っていたものですけどね。口は災いの元とはまさにこのこと。

スタジアム近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に私が駆け込んで、TVの前に座れたのはハーフタイムだったんですが、31分にはベンゼマ、39分にはマルセロが決め、さらに前半終了間際にはマドリー伝家の宝刀、高速カウンターが発動。ジダン監督も後で「es para volverlo a ver y disfrutar/エス・パラ・ボルベルロ・ア・ベル・イ・ディスフルタル(また見て楽しむもの)」と言っていたように、敵のセットプレーのクリアからたったの14秒で5人が絡んでの12本のパスを繋ぎ、最後はイスコがフィニッシュして、すでに0-4になっていたから、驚いたの何のって。

おまけに後半もベティスはセフードのゴールで1点を返したものの、62分にはイスコがエリア左端からGKアダンの頭を超える技ありゴールを挙げ、78分には流れに乗り遅れかけていたクリスチアーノ・ロナウドもとうとうマイゴールをゲットして、最後は1-6で終わるんですもの。結局、アトレティコとの得失点差は3から4と1つ増えてはいるんですが、恐るべしは「4連続引き分けをした後だから、こんな試合をしなければならなかった。Metimos la intensidad necesarias/メティモス・ラ・インテンシダッド・ネセサリアス(ウチは必要なプレーの激しさを投入した)」(ジダン監督)という、マドリーの爆発力。

いや、だったらどうしてビジャレアル戦、ラス・パルマス戦、エイバル戦、そしてCLドルトムント戦で同じことをしなかったのかと突っ込みたくなる衝動は私にもあるんですけどね。普通にマジメな試合をすれば、お隣さんは根っからのゴレアダ体質。たまたま2年ぶり、2014年に当時は1部だったヘタフェに同スコアで勝って以来の大勝をアトレティコがしていたから助かったものの、いつもの1-0や2-1の渋い勝利だったら、コロッと首位が変わっていたんですから、世の中、何が幸いするか、まったくわかったもんじゃありませんよね。

そして週が明けると、またしてもCL到来なんですが、今度は一足早い火曜日にマドリーがレギア・ワルシャワとサンティアゴ・ベルナベウで激突。ただ、相手は2連敗しているグループの最下位、先週末のポーランド・リーグの試合にも負け、公式戦ここ7試合で5敗。調子が悪いこともあってか、マスコミは対戦そのものより、1節のドルトムント戦でホームスタジアムを大量の発煙筒で赤々と染め上げ、マドリーを迎える4節を無観客試合にされてしまった程、ウルトラなサポーターたちがポーランドから来襲することに戦々恐々しているようです。

まあ実際、ベティス戦の勝利でマドリーは調子を取り戻したと見られていますし、マルセロに続いて、今回はハメス・ロドリゲスも招集リストに復帰。超強力な相手でなければ、カゼミロとモドリッチのいない中盤もクロースとコバチッチで支えられることがわかりましたから、あとは第3のMFを2ゴール挙げたイスコのリピートか、ハメス、アセンシオ、ルーカス・バスケスらに代えてみるか、たまにはBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)の誰かにお休みをあげて、モラタにチャンスをあげるかぐらいが戦前予想のポイントですからね。火曜日午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのレギア戦は、マドリーにとっては楽な試合のうちじゃないでしょうか。

え、それでアトレティコの方は月曜日から早々に水曜日のロストフ戦に備えて、ロシアに行ってしまったんだろうって? そうなんですよ。一応、マドリー同様、今度の相手はグループ中、一番弱い相手のはずなんですけどね。ただ彼らは1節のバイエルン戦こそ、5-0で完敗しましたが、2節のPSV戦ではホームで2-2のドローをもぎ取っているだけに、そのPSVには0-1でかろうじて勝った経験を踏まえてシメオネ監督も用心しているのかも。

戦力的には今回、スペイン代表戦からグラナダ戦と打撲でプレーできていなかったサウールが完治して遠征に参加。幸い現地のロストフ・ナ・ドヌはまだ氷点下入りはしていないようなので、極寒に苦しむということはないようですが、さて。おそらく世間はバルサvsマンチェスター・シティに釘付けな水曜午後8時45分ですが、最近の攻撃力高めなアトレティコにはいけないと思いながら、私もちょっと期待してしまいますね。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。