「またお客が集まらなさそうな対戦になって可哀想」そんな風に私が同情していたのは金曜日、コパ・デル・レイ準々決勝の組み合わせ抽選の結果を知った時のことでした。いえ、今年は珍しく、この段階になってもマドリーダービーもクラシコ(伝統の一戦、レアル・マドリーvsバルサ戦のこと)も生まれず、4試合のどれもビッグマッチとは言えないんですけどね。12月には1部のエスパニョールを破って16強に進出したマドリッドの2部の弟分、アルコルコンは先週の1stレグでスコアレスドローだった後、この水曜にはアウェイで2-1と同じカテゴリーのコルドバを破って、初の8強入りという大手柄を達成。次こそ、人気チームをサント・ドミンゴ(マドリッド近郊にあるアルコルコンのホーム)に迎えてチケット完売と、フロントも意気込んでいたはずなんですけどね。

それが今回もクジ運に見放されたか、昨季まで一緒に1部昇格を争っていたアラベスと当たってしまうとは、いえ、その分、突破の可能性は高まったのは決して否定しませんよ。と言ったって、他の組み合わせがレアル・ソシエダvsバルサ、マドリーvsセルタ、アトレティコvsエイバルとなれば、一発勝負の決勝はともかく、それこそマドリーと当たって、アルコルコナソ(2009年のコパ32強対決でペレグリーニ監督率いるマドリーを総合スコア4-1でアルコルコンが破った大番狂わせのこと)の再現でもあれば別ですが、ほとんど準決勝を勝ち抜ける可能性はないかと。だったら、ファンも選手も望んでいたであろう、スター選手たちと対戦ができた方が良かったんじゃないかと思ったんですが、なかなか上手い具合にはいってくれないようです。

まあ、それは来週の話なので、今は置いておくことにして、先にマドリー2強の16強対決2ndレグがどうだったかをお伝えしておかないと。先週に続き、火曜に試合をしたのはアトレティコで、実を言うと、こちらも1stレグで0-2と勝っていたせいもあったのか、ビセンテ・カルデロンのスタンドはかなり寂しい様相を呈すことに。ただ、ゲームの方は前半こそ地味だったものの、後半はかなり忙しい展開で、いえ、4分にガイタンがエリア内右奥から出したラストパスをグリースマンがシュート、本人3試合連続となるゴールを決めた時には完全に勝負がついたと誰もが思ったんですけどね。

12分にリバヤにゴディンが後れを取り、同点ゴールを入れられても、その4分後にはコレアがGKとの1対1を制して2点目ゲットと、順調だったアトレティコでしたが、試合終了間際に事態が急変。ええ、すでに勝負の行方が見えていたせいで、選手たちが油断してしまったのもいけなかったんですが、残り1分にリバヤが自身2点目を挙げたラス・パルマスはロスタイムにもビエラのクロスをマテオが決め、その試合のスコアを2-3に。おかげでステイン監督も「si llegamos a evitar los suyos podía haber estado más abierto/シー・ジェガモス・ア・エビタル・ロス・スジョス・ポディア・アベール・エスタードー・マス・アビエルト(相手のゴールを避けられていたら、もっと可能性があったろう)」と後で嘆くことになったんですが、何はともあれ、結果を引っくり返される前に審判が終わりの笛を吹いてくれたのは助かりましたっけ(総合スコア4-3)。

え、それでもシメオネ監督は「Es mas positivo estar en cuartos que lo negativo de la derrota/エス・マス・ポシティボ・エスタル・エンクアルトス・ケ・ロ・ネガティボ・デ・ラ・デロータ(準々決勝にいられることの方が、敗戦によるネガティブな面よりポジティブ)」と、あまり失点を気にしていなかったようじゃないかって?そうですね、途中、左SBで先発したルーカスが太ももの筋肉痛で交代を余儀なくされ、ガビを入れて、中盤の右サイドでスタートしたファンフランを回すといったアクシデントもありましたしね。ゴディンやこの日はCBに戻ったヒメネスらの守備ミスもあったものの、とりあえず、ここを凌いだことで、準々決勝ではリーガの前節で0-2と勝ったばかりのエイバルが相手となりましたし、今週末もリーガの相手はベティスと、それ程の難敵ではなし。

更にその土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からの試合では、このコパ2ndレグを風邪で欠場したガメイロやアキレス腱の負傷がようやく治ったカラスコも戻ってきますし、最近はガイタンもいい働きを見せてくれますからね。トマスがアフリカ・ネーションズカップのために不在、チアゴもまだヒザを故障中と中盤の人材が不足しているのは変わりませんが、せっかく先週末は4位まで上がったリーガですから、ベティス戦でも手堅く勝ち点3を稼いで、3位のバルサにこれ以上、離されないようにしてもらいたいものです。

そして木曜にはお隣さんの試合だったんですが、1stレグではマドリーが3-0で勝っていたものの、興奮度ではこちらの方が遥かに上だったかと。だってえ、サンチェス・ピスファンを満員にしたファンを背に、前半9分にはもうセビージャが1点目を入れているんですよ。実はそれってオウンゴールで、サラビアのクロスをイボラの前でクリアしようとしたダニーロが見事なヘディングで決めたんですが、その後もまったく敵は攻撃の手を緩めず。1-0のままでハーフタイムに入ったのが奇跡のようでしたが、大丈夫、後半開始すぐにセビージャのCKから、GKカシージャのパンチングを拾ったアセンシオが敵エリアまで83メートルを13秒で疾走。最後は1人、追いついたビエットもかわし、そのシュートがGKソリアに当たって同点ゴールになってくれるのですから、有難いじゃないですか。

相手にとっては致命的なマドリーのアウェイゴールでしたが、その日のセビージャは後ろを振り返らないことに決めていたんでしょうかね。9分にはエスクデーロがクロスを上げると、前半終了間際に負傷交代したホアキン・コレアの代わりにピッチに送り込まれた、インテル・ミラノからレンタル移籍してきたばかりのヨベティッチがvolea(ボレア/ボレーシュート)でゴールに。夢のようなデビューを飾りましたが、32分にも彼らはイェデルのシュートをカシージャがこぼしたところをイボラが押し込んで、スコアが3-1になったから、こちらも緊張したの何のって。

だってえ、その日のマドリーは先週の結果に自信を持ったか、クリスチアーノ・ロナウドとモドリッチを連れて来ず、ハメス・ロドリゲスやイスコもケガでお休みだったんですよ。そのすぐ前に、パッとしなかったモラタに代わってベンゼマが入っていたとて、サンパオリ監督も後で「Tuvimos entre 13 y 15 ocasiones claras de gol/トゥビモス・エントレ・トレセ・イ・キンセ・オカシオネス・クラーラス・デ・ゴル(ウチには13から15回のはっきりしたゴールチャンスがあった)」と言っていたように、セビージャの勢いがこのまま続けば、あと2点ぐらい平気で取っちゃうかもしれないじゃないですか。

その最悪のケースに到った場合、誰が逆転のゴールを決めてくれるんだと心配になったんですが、いえいえ、他の選手たちも侮ってはいけません。まず38分には、ビエット同様、アトレティコからレンタルでセビージャにお世話になっているクラネビテルがエリア内でカセミロを倒し、PKを献上。うーん、この時、セルヒオ・ラモスがベンゼマからボールをもらっていたのには、ロナウドもベイルも、ハメスすらいないのをいいことに、またキャプテン権限で主役を張るつもりなのかなと思った私でしたけどね。

どうやら当人にはそれ以上の思惑があったようで、パネンカ風のPKを決めた後のパフォーマンスの凄かったことといったら、もう!ええ、ゴールを入れた側に陣取るビリス(セビージャのウルトラグループ)に向かって、自分の背中のネームを指したり、耳に手を当てて挑発したかと思えば、他の方向には両手を頭上で合わせてお詫びのポーズ。ラモスによると、「En ningún momento falté respeto a la afición/エン・ニングン・モメントー・ファウテ・レスペト・ア・ラ・アフィシオン(ファンに対しては一瞬もリスペクトを欠いていない)。実際、正面席とゴール裏南側には謝った。ボクを侮辱したり、もめたりしない人たちだからね」というのが、そのジェスチャーの理由だったそうですが、何ともややこしかったせいでしょうかね。正直、セビージャファンの大部分は怒っていたように見えましたよ。

それでもビリスのスタンドから、飛んできたペットボトルが彼に当たらなかったのは幸いでしたが、どうやら同じビッグクラブへの移籍組ながら、ラモスには「A Rakitic o Alves se le reciben como dioses. Conmigo, insultan a mi madre/ア・ラキティッチ・オ・アラベス・セ・レ・レシベン・コモ・ディオセス。コンミーゴ・インスルタン・ア・ミ・マドレ(ラキティッチやダニエウ・アウベスはまるで神様のように迎えられるのに、ボクは母親を侮辱される)」という不満もあったよう。うーん、ラモスの時は当時のデル・ニド会長に悪く言われたり、契約破棄金額を払っての移籍だったりしたのもありますが、アウベスとラキティッチはセビージャにタイトルをもたらしてからの栄転だったという背景もありますからね。

自分だけが悪役にされているという被害者意識もいかがなものかとは思いますが、優しいジダン監督は「No estoy contento y Ramos tampoco, no es agradable que te insulten/ノー・エストイ・コンテントー・イ・ラモス・タンポコ、ノー・エス・アグラダブレ・ケ・テ・インスルテン(自分もラモスも満足はしていない。侮辱されるのは気分のいいものではないよ)」と部下をフォロー。ただ、こうなると心配なのはこの日曜、リーガでのセビージャ戦で、マドリーはまたサンチェス・ピスファンに来ないといけませんからねえ。ラモスも毎回、ゴールを入れる訳ではないですが、イボラも「Lo bueno es que dentro de tres días hay revancha/ロ・ブエノ・エス・ケ・デントロ・デ・トレス・ディアス・イ・レバンチャ(3日後にはリベンジできるのはいいことだ)」と言っていたように、きっとまた激しいブーイングに耐えないといけないんでしょうね。

え、この時点で試合のスコアは3-2、総合スコアでは勝っているけど、マドリーの無敗記録は39試合で途絶えてしまったのかって?いやあ、それがあのチームの凄いところで、remontada(レモンターダ/逆転劇)の主役の常連、ラモスはPKパフォーマンスで満足したか、その後は静かだったんですが、ロスタイム2分にベンゼマが得点。それもマルセロとtaconazo(タコナソ/ヒールキック)ワンツーをして、エリア内に持ち込むと、最後はやはり、この日セビージャデビューをしたCBレングレに当たって軌道が変るシュートで同点ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。

ええ、これでスコアは3-3。そのまま試合が終了したため、ジダン監督は40試合の連続無敗スペイン新記録を達成することに。いやあ、まったくその辺は伝統のレモンターダ根性はダテではないというか、アトレティコに比べて、しっかりしているというか、感心するしかないんですけどね。日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの試合では、今度はロナウドを含めたベストメンバーで挑むことになると思いますが、果たしてこの記録、どこまで伸びるのやら。うーん、セビージャもお休みしたエンゾンジやマリアーノ、”ムード”・バスケスらが出て来るはずですが、常識的には消化試合のはずだったコパでさえ、このエキサイトぶりとなると、勝ち点差は4ながら、1位と2位のガチンコ対決となるリーガ戦はどんな凄い有様になるのか、誰にもわからないかと。

何だか、私も見るのが怖くなってきますが、順位的にはコパは敗退済みで、今週はずっと練習に励むことができたレガネスがアスレティックをブタルケに迎える土曜の試合もかなり重要。というのも、前節で引き分けたバレンシアが勝ち点3に迫っていて、下手をすると、レガネスは降格圏ギリギリの17位まで落ちてしまう恐れがあるから。いえ、相手は水曜にカンプ・ノウでバルサとコパ16強対戦の2ndレグを戦い、しかも3-1で負けて、総合スコア3-4の逆転敗退という精神的ショックも受けているんですけどね。とはいえ、エースのアドゥリスは後半まで温存されていましたし、まだそんなに冬期市場での補強が進んでおらず、得点力の低いマドリッドの弟分には厳しい戦いになるかと。

それでも彼らは幸いGKだけは獲得していて、12月に緊急加入したエレリンがレンタル元との契約条項で出場できなくても、前節のベティス戦に続いて、これが2試合目となるアルゼンチンから来たシャンパネが頑張ってくれるはずですが、いい結果が出せるかどうか。何せ、あと2試合でシーズン前半戦もお終いですからね。できれば、今週こそ、1部でのホームゲーム2勝目を挙げて、なるたけ危険なゾーンから離れた位置で折り返してくれると、私も嬉しいんですが…。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。