ドアの開き具合は周囲の状況に応じて自動調整

テスラの第3弾は7人乗り大型SUVのモデルXである。

いかにもアメリカンな発想は、2列目、3列目の乗降性のために、スライド式や通常の横開閉式ドアではなく、上方に翼を広げるファルコンウイングドアとしたこと。

すべてを開け放ったモデルXを見て、「日本国、そんなに広くはない」と口から出るほどウイングドアは堂々と開け広げられている。

ただし、すでに自動走行のパイロットアシスト始め、各種センサー類の使い方を知り尽くしているテスラだけに、ウイングが開くための条件、隣との隙間は30cm必要とか、天地の高さなどを感知しながら、まずは上方に引き上げてから開く。

ファルコンウイングは、ガルウイングドアよりも関節部がひとつ多く折れ曲がる、そこがポイント。だが家の車庫など天井が低いとクルマが感知するとそれ以上は開かず、前席ドアからの乗降になる。モデルX最大の個性だが、日本の使い勝手ではこうなる。

走りは、肩透かしを食らうほど呆気なく軽快で速い。それでいて接地感や安定感の高さは、バッテリーを床に敷き詰めた低重心感満点のテスラならでは。スポーツカーそのもののフットワークをこの背の高いモデルXがサラリと決める。

シートに身体がめり込む強烈な加速!

試乗車はモデルX P90DL。P90は90kWhのバッテリーを意味する。Dはデュアルモーター・AWDの意味だが、モデルXはすべてがAWD。LはLudicrous=ルーディクラス(馬鹿げた・冷笑)モード搭載を意味する。

このモードを選ぶと、全長5m、全幅2m越えのボディ、車重2.5トンの巨体が0-100km/h加速3.4秒!! 0-400m加速11.7秒!! 頭も体もシートバックにめり込む、ロケットダッシュ機能だ。瞬時に出た速度を一撃で沈めるブレーキ力も凄まじい利き味。スーパーカー然としたキャリパーとローターサイズを見れば納得できる。

速い加速に慣れている者でも、思わず大声で叫ぶその超絶な加速Gは、実際何に使うのか? 日本的感覚では意味不明だが、欧米では要人警護のために、猛然とダッシュして逃げる必要があるから、そのためか!?

何かの折にテスラという乗り物(モデルを問わない)に体験試乗頂けると、表現がオーバーじゃないことがおわかり頂けると思う。

そぼ降る雨のなかでの試乗は、東京都内から高速を経由して神奈川県の箱根まで。3名乗車はこのクルマにとっては空車に近いのか、アクセルひと踏みで無抵抗に転がっていく。一方、アクセルを戻すと、回生が強く働き減速Gも強い。結果、高速移動でのバッテリー消費量は少ない。ちなみに満充電での航続距離は467km。

自慢のオートパイロットをON。カメラとレーダーと超音波センサーが前後左右、車輌の周囲を監視する。水煙のなか、室内の、パソコン2台分はあるモニターに周囲の状況が映し出される。が、そこに忽然とバイクが映った瞬間の驚きとショック!! ドライバーの肉眼では存在を確認できていなかったからだ。

ステアリングを保舵する必要があるのは、ドライバーが正常にいるかの確認でもある。運転以外の他のことをちょっとやろう、と思わせるほどの安定走行。レーンチェンジはウインカー作動と同時に、変更する側のレーン状況を判断して、変わるというときは潔くスッと自動ステア操作。

箱根のワインディングもウエット路面だが、深い水たまりや川のように雨水が流れるコーナーをミズスマシ状態。スッ、スッと姿勢を変える。もちろん安定しているので、旋回途中でアクセルをガバッと踏み込む。

瞬間的に押し出されてアンダーステアになるが、即モーター出力を絞り、アンダーステアを打ち消すために4輪のブレーキを独立して制御。一瞬にして、もとの旋回ラインに戻してしまう、スーパーハンドリングSUVである。

一家に一台!! と言いたいが、価格は895万円〜。補助金が60万円になるので、行ける方はお試しアレ。

日本のEV勢がこの域に達するのと、テスラが庶民向けの「モデル3」で降りて来るのと、どちらが早いか? 期待と興味で盛り上がる。

(文:桂 伸一)