接触を考えた樹脂製パネルなど独特の作り

日本人唯一のFIA世界選手権王者に輝いたことのある世界のラリースト、新井敏弘。今回、北米を中心に開催されているレッドブル・グローバルラリー選手権のLA大会にスポット参戦することになった。グローバルラリークロスは、サーキットのレースやオフロードのレース、ラリーの特性を合わせもったモータースポーツだ。

では新井敏弘選手が乗るSRTUSA(スバル・ラリー・チームUSA)の2016年式WRX STIをチェックしてみよう。

車両の最低重量はレギュレーションにより2860lbs(約1300㎏)と決まっている。エンジンは水平対向2リッターターボエンジンで580馬力/92N・mを発揮する。カーボン・トリプル・プレート・クラッチに6速ドグ・ミッションを採用。

オーリンズ社のサスペンションは非常に長いストロークを持ち、「(ロールすることでよく知られている)WTCCのマシンよりも柔らかいのでは?」と新井選手。ブレーキディスクはアルコン社製でパッドはエンドレスのものを使用。17×8のホイールにBFグッドリッチのRC02というGRCスペックのタイヤを装着する。

室内にはFIAラリークロス・スペックのロールバーが張り巡らされている。ドライバーシートの後ろ側には透明なアクリル板で仕切りが設けられている。この車両はリヤにラジエターを搭載しているからだ。

フロント部では泥などが入り込み十分な冷却性能が期待できないためのものだ。リヤドアの中央部に巨大なエアインテークが設けられ、そこからリヤトランク部に設置したラジエターに外気が導入され、トランクフードの車両後端部には大きくエア抜きの穴が設けられている。

外装は通常は軽量化を考えてカーボンを使用するところだが、マシンの接触も多いことから、粘性のある樹脂製パネルが使用されているのも特徴の一つだ。

SRTUSAは、デビッド・ヒギンズ選手、クリス・アトキンソン選手を擁しており、今回は新井選手を入れた3台体制でGRC最終戦に臨むこととなっている。

そのデビッド選手は新井選手と同じマシンであるが、クリス選手のマシンはちょっと異なる。デビッド選手と新井選手のマシンはSRTUSAが独自に製作したマシンだが、この車両はSTIが分析を行ない、STIの技術協力の下、SRTUSAが製作した車両となっている(吸排気のみは現行のまま)。2017シーズンを見据え、先行開発車両といえる。

STIはこの最終戦のデータを持ち帰り、残り半年弱で、さらにフィードバックを加えた2017モデルを作るという考えのようだ。

(文・写真:青山義明)