今回のテーマは「大統領候補テレビ討論会の見所(1)」です。2回にわたってテレビ討論会の見所を探っていきます。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によりますと、各種世論調査が行った支持率の平均値(2016年9月5−17日)で民主党のヒラリー・クリントン候補のリードはわずか0.9ポイントです。中西部オハイオ州、南部フロリダ州及び中西部アイオワ州といった激戦州では共和党のドナルド・トランプ候補がリードを奪っています。その原因は、クリントン財団への巨額献金者に対する便宜供与疑惑、クリントン候補が「トランプ支持者の半分は嘆かわしい人々」と発言した問題及び有権者の間に広まった健康不安にあると見られています。

 選挙戦が接戦になった中で、第1回目のテレビ討論会が開催されます。今回のテレビ討論会は、記録的な視聴者数をとるのではないかと言われています。本稿では、まずテレビ討論会における大学の役割について紹介します。次に、2016年米大統領選挙におけるテレビ討論会の見所をクリントン候補の健康問題と絡めて述べます。そのうえで、討論会においてどのようにして健康不安を払拭できるのかについて説明します。

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テレビ討論会と大学の役割

 大統領候補テレビ討論会は3回行われます。1回目のテレビ討論会は、9月26日(以下現地時間)にホフストラ大学(東部ニューヨーク州ヘンプステッド)、2回目は10月9日にワシントン大学(中西部ミズーリ州セントルイス)、3回目は10月19日にネバダ大学(西部ネバダ州ラスベガス)で開催されます。以下で、どのような形式で討論会が実施されるのかについてみていきましょう。

 1回目のテーマは「米国の方向性」「繁栄」「安全保障」の3つです。それぞれに30分が割り当てられ合計90分で行われます。今回は、ニューヨークにおける爆発事件の影響を受けてか、安全保障が含まれています。2012年米大統領選挙の1回目のテーマは、経済、財政赤字、社会保障、医療保険、政府の役割及び統治で、すべて内政でした。12年と比較して、今回のテーマは、曖昧で具体性に欠けるという批判が一部から出ています。

 2回目のテレビ討論会は、市民集会の形式をとります。米ギャラップ社が選んだ「決めかねている」有権者が討論会の会場でトランプ・クリントン両候補に直接質問をします。その質問に対して、両候補が2分間で回答をします。司会者も質問を行います。1回目と同様、合計90分で対話が行われます。12年米大統領選挙における2回目の討論会では、会場の有権者から11問、司会者から10問の質問が出ました。3回目のテーマは未定です。

 一方、副大統領候補のテレビ討論会は1回です。10月4日にロングウッド大学(南部バージニア州ファームビル)で開催されます。こちらもテーマは未定です。

 さて、テレビ討論会では大学が大きな役割を果たします。ホフストラ大学は、4年前もテレビ討論会の会場を提供しました。米国では各大学がテレビ討論会の会場になって知名度を高めようと大学関係者が大統領候補討論会委員会に働きかけをします。名乗りを上げた大学には、予算と安全性の確保が求められます。実績を作ると複数回指名されます。12年副大統領候補のテレビ討論会の会場となったセンター・カレッジ(南部ケンタッキー州ダンビル)も2回開催しています。テレビ討論会が開催される大学の学生は、テレビ討論会に関わる業務に当たります。

 12年米大統領選挙において筆者はすべてのテレビ討論会の会場に足を運びましたが、学生がメディア関係者に大学名が入ったショルダーバッグ、Tシャツ及びコップなどの商品を無料配布していました。討論会当日は、キャンパスで共和・民主両党の候補者を支持する学生がプラカードを掲げて支持を訴えます。討論会の会場に入るチケットは、一般の有権者ではなく会場提供をした大学の教職員並びに学生が優先されます。米大統領選挙の特徴は戸別訪問もそうですが、討論会においても学生が政治参加できるシステムが形成されていることです。