今回のテーマは「第1回テレビ討論会」です。第1回目のテレビ討論会は、9月26日(以下現地時間)に東部ニューヨーク州ヘンプステッドにあるホフストラ大学で開催されました。本稿では、共和党のドナルド・トランプ候補及び民主党のヒラリー・クリントン候補の言語・非言語コミュニケーションに焦点を当てながら分析します。

ワシントンDCのレストランで、討論会を見る人々(GetttyIMages)

対照的なアンケート調査項目

 テレビ討論会を前にクリントン・トランプ両陣営がウェブ上で支持者を対象にアンケート調査を実施しています。クリントン陣営の調査項目は、テレビ討論会を観る予定か、討論会のパフォーマンスが投票に影響を及ぼすか、どの争点に関心があるのか、どちらの候補が勝つと思うかなど、有権者に対する意識調査に重点を置いています。

 一方、トランプ陣営の調査項目はより戦略的なのです。たとえば、討論会においてトランプ候補はクリントン候補に対する攻撃ないし持論の正当化に時間を多く費やすべきか、あるいは同等にするべきか、といった時間配分に関する質問があります。さらに、討論会でトランプ候補はクリントン候補を「嘘つきヒラリー」と呼ぶべきかといったスタイルに関する質問項目も含まれています。

 討論会の最中、トランプ候補は「クリントン長官」と何度も敬称で呼び、一度も「嘘つきヒラリー」と語りませんでした。同候補は大統領としての適性がないというイメージを弱めるために、礼儀正しい態度で臨み大統領らしさを演出していたのです。ところが、終盤でクリントン候補に日本と韓国に対する核保有容認発言を突かれ、そのうえ同候補のスタミナ不足に関する攻撃をかわされてしまうと、トランプ候補は苛立ちを見せてついに「ヒラリー」とファーストネームで呼び掛けてしまったのです。

流れを変えた一言

 討論会の前半50分間、トランプ候補は明らかにポイントを稼いでいました。激戦州オハイオ州、ミシガン州及びペンシルべニア州を取りあげ、ビル・クリントン元大統領によって署名された北米自由貿易協定(NAFTA)により雇用が喪失した点を強調したのです。自身の弱点である確定申告未公開に関しても、対策を練っていました。「クリントン候補が削除した3万3000通のメールを公開するならば、自分も確定申告を公開する」と提案をしたのです。