この秋、世界の最大の政治イベントはなんといっても米国大統領選挙だ。来たる11月8日にトランプ候補かヒラリー候補のどちらが大統領に選ばれるか、それは中国にとっても今後の外交を左右する重要な分かれ道だ。経済、ビジネスにとっても無関係ではない。それだけに、両候補の発言や支持率の推移は中国でも逐一報道されている。

 トランプ氏は中国を「為替操作国だ」、「米国の仕事を奪っている」と声高に非難する一方で、基本的な政治方針が国内優先であるため、国際関係においてはそれほど厳しく中国と対立をしないのではないかとみられている。また、商業界出身であるため、取引上手な中国人にとって案外、与しやすい相手なのではないかともされる。米国のメディアも、トランプ候補が大統領になれば、むしろ中国にとって有利だとも伝えている。

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Make China Great Again!

 『ウォールストリート・ジャーナル』は、例えば中国で製造されているアップル社のiPhoneは統計上は米国の貿易赤字を大きくするが、実際には中国の製造企業の利潤よりアップル社が得る利益の方がはるかに大きく、中国に対する懲罰的な関税は米国企業の方がダメージを受ける可能性も高く、単純に貿易額だけで中国が米国経済にもたらす悪影響を判断すべきでないとトランプ氏の発言を批判している。また、投資専門情報サイトの「Barrons」は、トランプ氏が大統領になれば米国のアジア、とりわけ中東における影響力が低下し、それにより、習近平政権が推し進める「一帯一路」構想がより実現しやすくなるだろうとの見方から「Make China Great Again!」になってしまうとも報じている。

 つまり、米中経済の相互依存の構造や、地政学的な地域におけるパワーバランスといった国際的な複雑な現実を加味すると、トランプ氏の言っていることがそのまま政策に反映されれば、米国より中国有利になってしまうということが起こりうるとも伝えられている。

 他方、ヒラリー氏は対中外交ではオバマ大統領より厳しい姿勢でのぞむことが予想されており、なおかつ人権問題など中国にとって触れてほしくない価値観にかかわる問題も容赦なく突き付けてくる可能性が高い。中国にとってトランプ氏よりも手ごわい相手だ。しかし、長年の政治経験から政策決定者間の水面下での意思疎通がしやすいとされ、外交未知数のトランプ氏に比べると中国にとって予測可能であることへの安心感がある。