misplaced_guggenheim-932x888 1/10 アントン・レポネンのシリーズ作品「Misplaced → New York」は遥か遠くの場所に放られたニューヨークの有名な建築物の姿を描く。これはもちろんグッゲンハイム美術館だ。しかし、セントラルパークの近くではなく、火星のような場所に建っている。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_breuer-932x888 2/10 これはマルセル・ブロイヤーの建築物だ。かつてはホイットニー美術館として建てられたが、いまはメトロポリタン美術館の新しい分館として使われている。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_whitneymuseum-932x888 3/10 これが新しいホイットニー美術館である。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_iacbuilding-932x888 4/10 それぞれの合成写真には、レポネンの友人でありジャーナリストでもあるジョン・アールが書いた小話が添えられている。フランク・ゲーリーのIACビルの場合はこうだ。帆が張られたような形をしているIACビルは、フランク・ゲーリーの作品のなかで唯一、モンティ・パイソンの曲に影響を受けてつくられたものだ。「少年時代を陸に囲まれたアルバニアで過ごしていたとき、わたしはいつも疑問だった。『会計士シャンティ』の中で会計士のオフィスが地球の端に向けて出航したら何が起きていたんだろう? 粉々に砕け散ったのか? 虚空に消えたのか?」ゲーリーは思った。「わたしはそれが荒涼とした砂っぽい平野に着陸したのだと考えたい。それがIACビルによって共有したい光景なのだ」 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_unitednations-932x888 5/10 まとめるならば、この作品は写真と建築を結びつけたファン・フィクションだ。これは孤独な砂丘にそっと建っている、直角につくられた国際連合本部ビルである。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_metropolitanopera-932x888 6/10 メトロポリタン歌劇場はかつてリンカーン・センターにがっしりと根付いていたが、いまでは砂漠のような場所に建っている。レポネンは決して新しい所在地を明らかにしない。それは「全部を台無しにしてしまう」からだ。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_standardhotel-932x888 7/10 スタンダード・ホテルに添えられた小話は偽のユーザーレヴューだ。「最初わたしは困惑してしまった。「EFがスタンダードの場所ってこと?」わたしはココに戻り、文字通り大声で叫んだ。そこでUBERを呼んで24時間以上もかけて「本当の」スタンダード・ホテルに向かったのだ(わたしたちは「スタンダードはこちら」と書かれたゲットーな手書きの矢印に従ったけど、めちゃくちゃみすぼらしかった。間違いなく評価ランクは下げるでしょうね!)」 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_chryslerbuilding-932x888 8/10 象徴的なクライスラー・ビルディングは見知らぬ土地の雲の中に溶け込んでいる。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_8spruce-932x888 9/10 ゲーリー・フランクが手がけた別の建物、8スプルース・ストリートは砂漠の中に建っている。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN

misplaced_thenewmuseum-932x888 10/10 ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートは以前の所在地であるバワリー地区から引っこ抜かれたように見える。 PHOTOGRAPHS BY ANTON REPPONEN


フランク・ロイド・ライトは、グッゲンハイム美術館の設計に16年を費やした。その白い螺旋状の建物はいまも建築学の真の象徴として存在している。しかし、視覚的な“公害”がこの美術館を囲む遊歩道を台無しにしている。煙を出すホットドッグの屋台や山ほどある「I ♥ NY」ロゴグッズの路上販売。そして、観光客の群れがライトの作品を眺めようとする人の視界を邪魔している。

なにもグッゲンハイム美術館だけがこの問題に直面しているわけではない。「ニューヨークには非常に美しく設計された建物がたくさんありますが、1年以内に台無しになります」とアントン・レポネンは語る。「コンビニが醜悪な看板を掲げて建物の下にやってくるでしょう。スターバックスも来ます。クルマが停められ、ゴミが出ます」

レポネンは、写真と建築をつなぐファン・フィクション作品「Misplaced → New York」のなかでグッゲンハイム美術館を新たに描き出した。美術館をアッパー・イースト・サイドから引き抜き、赤黒い岩で埋め尽くされた火山の風景の中に落としこんだのだ。それは、まるで火星にグッゲンハイム美術館があるかのようでもある。彼は「Misplaced → New York」を旅行のガイドブックのようにデザインし、このサイトに載せた11枚の写真にはそれぞれ短い文章も寄せられている。

例えば、グッゲンハイム美術館に添えられた文章はこうだ。

グッゲンハイム美術館は、バスク地方から遠くドバイまで世界各地で誕生しはじめ、どこにでも存在するようになった。理事会は、近現代の美術について何も知らない未開の土地を探し求め、世界中に関係者を派遣している。そして、ここが最後の場所となったのだ。小切手を切って移民労働者を雇用し、X火山の平地に美術館が姿を現した。なお、チケットの売れ行きは芳しくない。

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トム・メインによるクーパー・スクエア41 PHOTOGRAPH BY ANTON REPPONEN

インタラクションデザイナーのレポネンは、2年前に大手の事務所を離れ、自分の会社をつくった志の高い写真家でもある。彼はこの合成作品を昨年の秋から制作し始め、Instagramアカウントが注目されたのちにこのサイトを開始した。

この作品集には、孤独な砂丘に佇む国際連合本部ビル、草原と岩に覆われた丘の中腹に新しく建てられたホイットニー美術館、ピンクの花に覆われた砂漠にそびえ立つクーパー・ユニオンのビルがある。レポネンの友人であるジャーナリストのジョン・アールが書いた短い文章は、不条理に傾倒している。

ブルータリストのマルセル・ブロイヤーによる建築を辺鄙な田舎に建てることはまさに冷酷(brutal)なことであった。しかし、その価値はある。窯の中で土器をつくろうとすること、つまりまだオーヴンの中にある七面鳥にソースをかけようとすることだ。これはまさに、ブヨが地面の小さな穴という穴から這い出し、わたしたちの眼球に特攻攻撃をしかけてくる夜のようでもあった。正直、どうやってこの土地にコンクリートを運びこんだのか覚えていないんだ。ラバを使ったのか? すべてがぼんやりとしていた。窓は1つしかない。ガラスが熱すぎて誰も触ることができないからだ。いや、そうじゃない、いまのはちょっとした冗談。ブロイヤーがそうしたがったのだ。わたしはこういうデザインが好きだ。キュクロプスの目でのようであり、フジツボか何かのようでもある。

レポネンの建築をもちいたシュールレアリズムは魅惑的で、画像をつなぎ合わせる緻密な面があり、また神秘的な面もある。ニューヨークで建物の写真を撮るときは、外観に一切の影が写り込まないよう太陽の動きに合わせて撮影時間を調整する。写真と景色を合わせるときは、10年にわたる彼の旅行写真から、建物と一致する影のある場面の写真を選び抜く。その場所は、コスタリカの火山からハワイ、ブラジル北部の砂漠まで広範囲であるが、「Misplaced → New York」は、その写真を「現在の場所:不明」と説明している。レポネンはわざとそうしたのだ。場所を明らかにすると「全てが台無しになる」と彼は語っている。