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ドゥニ・ヴィルヌーヴ|DENIS VILLENEUVE
1967年生まれ。カナダの映画監督・脚本家。カナダ版アカデミー賞ともいわれるジニー賞の監督賞を計3回受賞。『プリズナーズ』(2013年)、『複製された男』(14年)、『ボーダーライン』(15年)と次々に話題作を監督。『メッセージ』の日本公開は17年5月が予定されており、さらにその次回作として『ブレードランナー2』が控えている。PHOTO: PICTURELUX / AFLO

ドゥニ・ヴィルヌーヴの名は映画『ボーダーライン』(原題:Sicario)によって知られている。そしてこの1年のうちにも、さらに多くの人が彼を知ることになるだろう。なぜなら彼こそが『ブレードランナー』の続編映画を劇場へともたらす人物だからだ。

その彼は、いまのところは『メッセージ』(原題:Arrival)の制作を終えたばかりだ。この作品は彼が最初に手がけたSF映画で、ヴェネツィア映画祭に出品された。

このフランス系カナダ人映画監督は、いわゆるアート系映画の出身だ。カンヌ映画祭で見出され、その後ハリウッドに捕えられた(彼はむしろ進んでハリウッドの手に落ちたようだ)。まずはインディペンデント映画『複製された男』(原題:Enemy)を手がけ、そののち、よく構成された非常に美しいスリラー『プリズナーズ』で頭角を現した。いま、『メッセージ』は彼の最初の“ビッグチャンス”となっている。少なくとも、『ブレードランナー2』の公開までは。

これは、12機の異星人の宇宙船が地球に着陸したときに軍隊に徴集された、女性言語学者の物語だ。宇宙船のうち1機は米国の領土に降り立っていて、彼女にはその中に入り彼らとコミュニケーションをとる方法を解明するよう命じられる。彼らは何をしに来たのか。それを、喧嘩っ早い軍人が攻撃の決断をする前に、あるいは彼らが地球人を攻撃する前に解明しなければならないのだ。

『メッセージ』は壮大な構想のサスペンスSFだ。愛好家向けの作品で、脚本は可能な限りもっともらしい出来事を準備している。

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──どのようにして、異星人たちが話す(そして書く)言語を生み出したのですか?

非常に長い研究を続けました。当初目指したのは、円形の文字をつくることでした。つまり、その言語の基本形は「円」にあります。当然のことながら完全にオリジナルで、同時にその構造は合理的なものでなくてはなりませんでした。映画の出発点となったショートストーリー(編注:テッド・チャン『あなたの人生の物語』)のように、図像的で非音標的な言語でなくてはならないと、わたしは自信をもって確信していました。

モントリオール出身の専門家、マーティン・バートランドは決定的なアイデアを携えてやってきました(わたしたちは、文字通り何千ものアイデアをふるいにかけたのです!)。彼のコンセプトは、日本の禅の円相のような、寄せ集めたインクの染みに見えるものでした。わたしたちはここから出発しました。それから、脚本家がこれに関する論理的構造をすべてつくり上げました。

わたしたちは、行き当たりばったりだったわけではありません。わたしたちは、この言語がこのようになっている意味、動機をすべてもった、ある種の“聖書”を書いたのです。劇中で言及されることはないのですが、わたしたちは処理不可能な〈言語A〉と、解明できる〈言語B〉とを考案しました。

──映画で最も困難だったのは、言語の発明でしたか?

いいえ。本当の挑戦は、わずかなシーンで娘と母の間の関係を表現できるようにすることでした。ごく小さな部分ですが、観る人にとっては、最後にはこれがどれほど決定的かわかるでしょう。数シーンに登場するだけのこの小さな女の子に、わたしたちは常軌を逸したキャスティングをしました。

『メッセージ』のトレーラー。本作は2016年11月11日より封切りが予定されている。日本での公開予定は2017年5月。

彼女は本当に素晴らしい女優です。自然に、そして直感的にカメラに訴えかけます。わたしが彼女に花を眺めるように頼むと、彼女の目には、それが世界で最も美しいものであるかのように映るのです! さらに、そうしたディテールをとらえることのできる撮影監督も必要でした。わたしはそれをブラッドフォード・ヤングに見出しました。若い監督ですが、彼はこれからきっと成功するでしょう。

──あなた自身は、エイリアンの存在を信じますか?

はい。もしわたしたちが独りぼっちだとしたら、それは本当に退屈でしょう。(地球の)外に、ほかの存在がいてほしいものです。

──映画のために、実際にありそうで、しかし斬新でオリジナルなものを生み出すのは簡単なことではなかったと想像します。

わたしがつくった異星人は100パーセントデジタルです。が、わたしは、かつて(映画制作が)そうだったように、実際につくることができたらと思いました。あらゆることを検討しましたが、それは不可能で、結果的にCGにしました。しかし、リアルな動きにするべく、大変な努力をしました。

──あなたはカナダの芸術映画の出身で、『プリズナーズ』『複製された男』を手がけています。今作はSFですが、ハリウッドは最初からこのような映画を望んだのですか?  それとも、彼らが求めたのは爆発やアクションだったのですか?

当初、パラマウントはこの映画をよく理解していませんでした。奇妙な動物のように考えていたようです。マイケル・ベイ(のつくる世界観)とは正反対ですからね。しかし、最終的には気に入ってくれました。

aflo_OWDG573038ヴェネチア映画祭にて、言語学者役を務めたエイミー・アダムスと、数学者役のジェレミー・レナー。PHOTO: REUTERS / AFLO

──あなたにとって、SFとは観客に何を提供するものでしょうか?

わたしにとってそれは、何よりも夢に近いジャンルです。現実の変形であり、現実から距離をつくり出し、面白い方法で探求させてくれます。わたしにとって、最良のSF映画を挙げろといわれれば3つで事足ります。『2001年宇宙の旅』、『未知との遭遇』、そして『ブレードランナー』です。

──さて、その名前が出ましたね。あなたはいま、ハリソン・フォードとライアン・ゴズリングを主役にして『ブレードランナー2』の撮影をしています。調子はどうですか?

快調ですよ。その責任は悪夢のようなもので夜も気が高ぶって目が覚めますが、大丈夫です。ライアンは本当に特別な人間で、それに彼もカナダ人です。彼は、疲れを知らないプロフェッショナルです。わたしは彼を、真のパートナーだと思っています。この映画で何をしようとしているかを彼に説明するために、わたしは彼に言いました。それは孤独で寒いなか、出口を探しながら暗闇をともに歩くようなものだろう、と。

──あなたのつくる『ブレードランナー』は、『メッセージ』と同じように想像力を刺激するもので哲学的、なのでしょうか?

そうだと思います。しかし、それについて話すことは奇妙な気持ちがします。プレイ中にどうやってゴールを決めるのか説明するホッケーの選手のような気分です。