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ディファレンシャブル・ニューラルコンピューター(DNC)のイメージ図。DeepMindの説明によると、「0か1の数字で運搬されてくる情報が、3つのロボットアーム(読む、書く、消す)によって、メモリ上で処理される」という。

グーグル傘下の人工知能(AI)企業で、「AlphaGo」によって人間の囲碁チャンピオンを打ち負かしたことで有名になったDeepMind(ディープマインド)が、データ処理と自己学習コードを結びつける次世代のAI技術を発表した。

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この新しいアルゴリズム「ディファレンシャブル・ニューラルコンピューター(DNC)」は、情報をメモリーに保存して、その知識を使って関連分野の問題を解決できる。同社はそのテストを、ロンドンの地下鉄を使って行った。

DeepMindは、グーグルが2014年に4億ドルで買収した(日本語版記事)企業だ。同社のコンピューター科学者たちは今回、彼らの新しいニューラルネットワークを訓練して、できるだけ速くロンドンの地下鉄網を移動できる経路を探させた。

今回の研究の筆頭著者であるアレックス・グレーヴスは『WIRED』UK版に対して、このニューラルネットワークは、ロンドンの地下鉄路線図から学んだことを記憶し、その知識をほかの似たような状況(例えばパリの地下鉄)に応用できると説明する。

「ロンドンの地下鉄路線図を与えると、このアルゴリズムはそれを記憶し、以後もし必要があれば、それを似たような状況でも活用できます」とDeepMindのほかの研究者19人を率いた彼は語る。効率のいい移動経路を見つけること自体は目新しくないが、その手法を「記憶するAI」は、これが初めてだという。

従来型のニューラルネットワークでも、最速の経路を見つけるために必要なすべての情報を学習することはできる。しかし、新しい環境でそれを行う場合、新しいデータを再び「入力」する作業が必要になるのだ。

「通常のニューラルネットワークに情報を与えても、それにその情報をいつまでも保存させることはできません。どこかの時点で上書きされるため、ニューラルネットワークはその情報を忘れてしまうことになるのです」とグレーヴスは語る。だが、彼らが開発したニューラルネットワークのメモリーであれば、その情報を「無期限」に保存することが可能だという。

「通常のコンピューターのように、DNCはメモリーを使って複雑なデータ構造を表現・操作しますが、その一方でニューラルネットワークのように、データからその作業を行う方法を学習できるのです」

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また別のケースでは、研究チームが家系図の詳細を入力すると、このAIは、ある人物が別の人物にとって「叔母」であるか「父」であるかなど、どんな関係であるかを解答できることが示されている。

ディファレンシャブル・ニューラルコンピューター(DNC)についての論文は、学術誌『Nature』に発表された。

今回の研究に並行して発表された意見論文で、独ヤコブス大学ブレーメン校のコンピューター科学者ヘルベルト・イェーガーは、このメモリーがDNCの論理的判断を可能にしていると述べている。

「グレーヴスの研究チームは、公共交通機関の経路をつくるといった論理的思考を必要とする課題をAIに経験させることによって、このシステムの性能を示した」とイェーガーは書いている。そして、これまでのコンピューターは、ある目的のために書かれた特定のプログラムをもつことでしか、これを達成できなかったと述べている。