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フジテレビが贈る、シェアハウスで暮らす男女6人の共同生活を記録するリアリティショー「テラスハウス」(制作:イースト・エンタテインメント)。

若者たちの間で高い人気を誇る番組だが、単なる恋愛バラエティと侮ってはいけない。「テラスハウス」は、いまや日本だけで視聴されているわけではない。2015年に日本上陸を果たした世界最大の動画配信サーヴィスNetflixが日本発のオリジナルコンテンツ第1弾として選んだのが「テラスハウス」であり、番組は現在世界190カ国に配信されている。

そして2016年11月、フジテレビとNetflixは「テラスハウス」の舞台をハワイに移して新シーズンをスタート。世界のオーディエンスは「テラスハウス」のどこにおもしろさを見出しているのか? そこに日本のコンテンツをグローバルに発信するためのヒントがある。

「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」の海外向けのトレイラー。番組はNetflixにて配信されているほか、地上波ではフジテレビにて毎週月曜日24:55〜25:25放送中。制作:フジテレビ/イースト・エンタテインメント。

本題に行く前に、「テラスハウス」を簡単に説明しておこう。

「テラスハウス」が始まったのは2012年。「『テラスハウス』は見ず知らずの男女6人が共同生活する様子をただただ記録したものです。用意したのは素敵なお家と素敵なクルマだけ。台本はいっさいございません」。番組のはじめに、彼らの生活を見守るスタジオキャストのひとりであるタレントのYOUがそう語るのがお決まりになっている。要は、6人の男女の「リアルな」共同生活を視聴者が楽しむという建て付けのリアリティショーだ。

共同生活のなかで住人たちが笑ったり泣いたりする姿を、カメラは伝えていく。住人は自己申告でいつでもテラスハウスを「卒業」することができ、1人が去ると新たに1人が入居する。そうしてメンバーは常に男女3人ずつに保たれる。

2012年、湘南を舞台に始まった番組は、14年9月で地上波放送が終了。15年2月に映画版『テラスハウス クロージング・ドア』が公開されたのち、15年9月、舞台を東京に移して「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」(以下、BOYS & GIRLS IN THE CITY)と題された新シーズンが再開された。

この「BOYS & GIRLS IN THE CITY」が、日本上陸を果たした動画配信サーヴィスNetflixの日本版オリジナルコンテンツ第1弾として、フジテレビとの連携のもと世界に向けて配信されることになった。ハワイで始まった「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」(以下、ALOHA STATE)は、フジテレビとNetfixが組んで贈る「テラスハウス第2弾」というわけだ。

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新シーズンの舞台はハワイだ。なぜハワイか?

「前回の東京編では住人たちの日常に近い場所に家があったので、次は日常から離れたところがいいと思ったことがきっかけです」と「テラスハウス」のチーフプロデューサーを務めるイースト・エンタテインメントの松本彩夏は語る。「普段の生活を捨てなければ住めないという環境をつくることで、何かを犠牲にしてそこに住むことで生まれるメンバーの結束感に期待しています」。「テラスハウス」は湘南で生まれたからこそ「やはり海のイメージが似合う」、というのもハワイが選ばれた理由だ。

住人となる若者たちの出自は日本国内にとどまらず、対話のなかで自然に英語が出てくるのも番組がよりグローバルな設定になったことの表れといえるかもしれない。といっても、メンバーの大半は日本育ち。あくまで「いつものテラスハウス」が楽しめる内容になっている。

ディテールに宿る固有性

そんな「テラスハウス」を、世界最大のSVOD(Subscription Video on Demand)プロヴァイダーはなぜ日本オリジナルコンテンツの第1弾として選んだのか?

「『テラスハウス』が広く愛されているプログラムであることには間違いありません」。『WIRED』が2015年に行ったイヴェントにて、Netflixの代表取締役社長グレッグ・ピーターズがそう答えているように、何よりも「テラスハウス」が日本で高い人気を誇る番組であることが最大の理由だ。

番組にはファンサイトがいくつもあり、新しい住人が入るたびに彼らのSNSアカウントには多くのフォロワーがつく。視聴者は「住人たちに感情移入をして恋愛模様・人間関係を見るのがおもしろい」という“共感派”と、「台本がないというのは本当か?」「リアリティショーにもかかわらずキレイな部分しか見せていない」という“ツッコミ派”に分かれるが、ドラマ評論家の木村隆志はこうした「賛否両論の図式」がいちばん盛り上がる、とその人気の理由を説明する。

例えば「BOYS & GIRLS IN THE CITY」のラストでは住人がカメラの前では演技をしていたことを認めて炎上したわけだが、ネット上には出演者を擁護する声もあれば、「騙された」「ショック」というコメントも溢れかえった。結局のところ、共感派もツッコミ派も、番組をハラハラしながら見ていたのだ。批判的な意見があがるのも、人気の高さの裏返しというわけだ。

新シーズン「ALOHA STATE」の製作を決めたのは、Netflixでの配信から1年を経て、「テラスハウス」が日本のみならず世界のオーディエンスに受け入れられたことがわかったからだとNetflixのコンテンツディレクター、ジュリアン・ライハンは言う。「『テラスハウス』はまさにモダンな日本の文化を表す番組であり、われわれの予想を超えて海外のファンを獲得することになりました」

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Netflixコンテンツディレクターのジュリアン・ライハン。ワーナー・ブラザースを経て、2015年、Netflix Japanを立ち上げるためにNetflixに加わる。取材はNetflix Japanオフィスの、「House of Cards」という名前の会議室にて行われた。

では、海外では「テラスハウス」はどう受け止められたのだろうか? いくつかのメディアのレヴューを見てみよう。

まずは、『WIRED』US版だ。筆者のデイヴィー・アルバは、番組のクオリティに関しては「Terrible」(ひどい)と手厳しい。「古くさいジェンダーのステレオタイプが満載」とも言う。けれども、だからこそ「つい見てしまう」のだと彼は語る。まるで体に悪いジャンクフードのようだと思いながらもついやめられなくなってしまうひとつの要因を、恋愛をめぐるやりとりに現れる、ちょっとした文化の差異だったりすると分析する。筆者は、Netflixをはじめとする「未来のテレビ」は、「世界が勝手に向こうからやってくる」と評している。つまりいながらにして、これまでのテレビには映し出されることのなかった、リアルな世界を垣間見ることができるのだ。

そうした魅力を、『The Verge』はさらに好意的に語っている。筆者のダミ・リーは、英国のリアリティクッキングショー「The Great British Baking Show」を引き合いに出しながら、こうした「日常性」の描出から得られる感興を「旅をしているようだ」と語る。

「『テラスハウス』は、『The Great British Baking Show』同様、アメリカのリアリティショーに見られるような足の引っ張り合いやなじり合いがない。(中略)これほど“リアリティ”の部分をとらえたリアリティショーは見たことがない。住人たちはパーティも行うけれど、その前には食料品を買いに出かける。パーティのあとには食器を洗ったりもする」

まるで旅先で地元の家庭に呼ばれたときのような面白さが、これらの番組の面白さ、ということなのだろう。

米国のメディアは、「テラスハウス」をその内容やクオリティよりも、米国のそれとは異なるリアリティショーとしての「文法」の違いや、そこを通して垣間見える「文化の違い」を魅力と感じている。わめき合いや罵り合いといった派手なシーンの代わりに描かれる、買い物や食器洗い、洗濯といった何気ない描写のなかに、彼らは「新しい世界」を見ているのである。

こうした海外の反応は、Netflix Japanにしてみれば狙い通りだったといえる。

「われわれがオリジナル作品でつくろうとしているのは、その国でなければ生み出せないよさをもつ作品、自らの文化のうえに築いているコンテンツです」と語るのは、フジテレビとともに「ALOHA STATE」の製作を担当するNetflixのコンテンツマネジャー坂本和隆だ。

「『テラスハウス』を通して日本の文化を感じられるところが、海外のオーディエンスには新鮮に映ったのでしょう。こうした日本だからこそつくれる作品、ドメスティックに掘り下げていくコンテンツのほうが、ときにグローバルに突き刺さることもあるのです」

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「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」の初期メンバー。左から、エビアン・クー(26)、澁澤侑哉(18)、ローレン・サイ(18)、鮎澤悠介(18)、フランク奈緒美ロレイン(23)、エリック・デ・メンドンサ(27)。PHOTOGRAPH COURTESY OF FUJI TV / EAST ENTERTAINMENT

オリジナリティは国境を超える

この2〜3年で配信国を世界190カ国にまで広げ、8,600万人の利用者を誇るNetflixがいま力を入れているのが、「ナルコス」(コロンビア)や「マルセイユ」(フランス)、「ザ・クラウン」(英国)、「クラブ・デ・クエルボス」(メキシコ)、「3%」(ブラジル)に代表される、米国外を舞台とした“非US作品”の製作だ。

世界に進出するこのSVODの巨人が、コンテンツメーカーとしての日本にかける期待はとりわけ大きい。その証拠に、「コンテンツチーム」とNetflixが呼ぶ彼らのコンテンツ製作部隊は、ロサンゼルスを除けば東京オフィスにしかいないという事実がある。

「ものづくりができる環境が充実している地域は、世界を探してもそんなに多くはありません」と坂本はその理由を説明する。「そのなかで日本は実写にもアニメにも強く、かつ漫画や小説にも豊富な原作がある。そして何より、トップレヴェルのクリエイターが集まっています」

しかし同時に、日本ならではの課題もある、と坂本は続ける。

「日本はもともと、海外とのコミュニケーションに関してはそれほど得意な国だとはいえないでしょう。言語に関しても、異文化への理解という意味でも、日本はときとして非常にドメスティックでもあります。Netflixというグローバル企業が日本のクリエイターの方々と一緒になることで、日本ならではの作品を、グローバルなヴィジョンをもってともにつくっていけるかどうかがわれわれの挑戦になります」

日本ならではの固有性を、グローバルで通用するストーリーのなかで表現すること。この一見相反する要素をひとつにまとめることが、日本のコンテンツを世界に発信するための鍵といえる。「テラスハウス」に学べることがあるとすれば、グローバルに展開するからといって作品を海外志向に変えることは、作品が本来もっていたよさを損ないうるということになるだろう。

配信後、Redditではさっそく多くの海外からの視聴者が「ALOHA STATE」についてコメントを寄せていた。あるユーザーは、恋愛経験の少ない男性メンバーがやっとの想いで気になる女性メンバーをデートに誘った回の感想に「ようやくテラスハウスらしくなってきた。なんてビタースイートなエピソードなんだ」と書いている。設定はグローバルになっても、日本の若者たちのリアルな日常を(とりわけ恋愛模様を)垣間見ることができるという番組のオリジナリティをテラスハウスが保ち続けていること、そして、それこそが海外のオーディエンスに求められているものであることがわかる。

「それがしっかりとした固有性をもつ作品であるならば、国境を超えて伝わっていくのです」とNetflixのライハンは言う。ほかの国やほかのクリエイターにはつくれない、自分たちだけの固有性とは何か。世界に通用するコンテンツをつくるためには、外に答えを求めるのではなく自身の内側に耳をすまさなくてはならないということを「テラスハウス」は教えてくれている。