●血筋の力
 韓国ではこのように血筋を重要視します。時代と共に薄れてきてはおりますが、都市より地方ではいまだ有効です。

 主人公は悪を働きながら検挙されても血筋のよしみを利用して、のし上がります。警察や検察から取り調べを受けても、影響力のある権力者の中で慶州の崔氏を探し出し、その人が無視できない元老を間に入れ(贈り物をしながら)危機を乗り越えていきます。

 このようなストーリーは映画ならではの特別なケースですが、映画の最初の方で、こんなシーンがあります。

 主人公の妹の婚約者の前で「今はこんな暮らしをしているが、我々の血筋は慶州崔氏の○○派で由緒ある家柄であり政治家、上級公務員など著名人がたくさんいる……」と誇らしげに語り、お金もないくせに気前よくアパートの頭金にしろと、預金通帳とロレックスの時計を渡します。

 それを見ていた主人公の妻が「家のためにはケチるくせに血筋である妹には気前がいい」と言い、泣きながら席を立ちます。

 貧乏であっても崔・イクヒョンにとっては、慶州崔氏という名門の流れを汲んでいることは誇りです。そうでない苗字を持つ妹の婚約者に血筋のよさを示すのに口だけでは格好が付かないので、無理して通帳や高級時計をあげることにより、自分の話に箔を付けたに違いありません。それほど主人公にとって慶州崔氏は心の拠りどころなのです。


●もっと韓国を知るためのことば
 ピヌンムルポダ チナダ  血は水より濃い
 韓国の家系図に当たる族譜の歴史は古く、本格的に行なわれるようになったのは十五世紀中盤です。
 記録に残っているものは「文化」を本貫とする「柳」氏の「永楽譜」だそうで、現存するものでは安東を本貫とする「権」氏の家系が記されている「成化譜」だそうです。
 このように韓国は血の繋がりを大切にしますので、日本でも同じように使われている格言でも「血」の濃さが違います。ですから養子を取るときも日本と違い血の繋がっている者の中から選びます。


文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている? 』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)