「プリロード」を調整してもスプリングは「硬く」も「柔らかく」もならない!?

昔から多くのバイクが装備する、リアサスペンションの「プリロードアジャスター」は、調整するとサスペンションのスプリングを「硬く」したり「柔らかく」できるような気がしますが……実際は違う!?

多くのバイクが装備する、プリロードアジャスター

 いまどきの大排気量スーパースポーツ系やスポーツネイキッドのサスペンションは、様々な調整機構(アジャスター)を装備しています。また、いかに多種のアジャスターを備えているかが、スポーツ性の高さを表しているとも言えます。

1972年に発売されたカワサキ「900Super4」(通称:Z1)のリアサスペンションには「プリロードアジャスター」が装備されている

 反対に、かなり昔のスポーツバイクもで、リアサスペンションに「プリロード」の調整機構を備える車両は少なくありません。

 現行バイクの場合も、比較的小排気量のファン・バイクやクラシック系のバイクも、リアサスペンションのプリロードジャスターだけは装備しています。

 このことから、「プリロード」の調整機構はスポーツ性能に限らない大切な装備だと考えることができます。

プリロード調整しても、スプリングは「硬く」ならない

 バイクに付属するハンドブック(取扱説明書)を見ると、プリロードアジャスターは「スプリングの強さ」を調整する旨が記載されています。これは主にライダーの体重(重い/軽い、または2人乗り、荷物の積載量)に合わせて調整することを推奨しています。

 実際の作業は、サスペンションのスプリングの座金を専用のレンチ(車載工具)などで回して、スプリングの押さえ具合(セット長)を変えます。

 そのためプリロードの調整を「スプリングを硬くする/柔らかくする」作業と考えるライダーも多いのではないでしょうか。じつは、プリロード調整を行なってもスプリングの「硬さ」が変わることはありません!

スプリングの硬さ(反発力=バネレート)は、材質とスプリング全体の直径、線の太さとピッチによって決まる。

 スプリングの硬さ、すなわち反発力は「バネレート」という言葉で表します。そのバネレートは、プリロードがかかっていないスプリング単体の状態で、材質やスプリングの直径、線の太さとピッチ(巻の間隔)によって決まります。

 そしてプリロードをかけてスプリングを押し縮めても、バネレートは一定です。

 逆に言うと、スプリングの硬さを変えるには、材質や寸法などを変える、すなわち異なるスプリングに交換しないと無理なのです。

プリロード調整で、ナニが変わる?

 それではプリロード調整は何のために行なうのでしょうか? それは前述したように、ライダーの体重など「荷重の変化」に対応するためです。

 たとえば体重の軽いライダー(荷重:小)と重いライダー(荷重:大)がバイクに跨った状態を想像してみましょう。

 重いライダーの時はサスペンションが深く沈み込みます。その状態で走ると、サスペンションのストロークに余裕が少ないので、路面のギャップを通過する際にサスペンションが底突き(フルボトム)する可能性があります。これは乗り心地の悪さはもちろん、転倒の危険もあります。

 反対に軽いライダーの場合は、サスペンションの沈み込みが少ないのでフルボトムの危険はありません。しかし標準的な体重のライダーが跨った時よりもサスペンションが縮まないため、バイクの運動性能を決める「適正な車体姿勢」からズレてしまいます。

 そんな「沈み過ぎ」や「沈まな過ぎ」を補正するのがプリロード調整です。

 プリロードを英語で書くと「Preload」となり、「Pre=事前に」、「Load=荷重をかける」という意味になります。

 事前に荷重をたくさんかけて最初からスプリングを縮めておけば、重いライダーやタンデム時などに沈み込み過ぎず、サスペンションのストロークに余裕を持つことができます。

ライダーの体重や、ひとり乗りとタンデムではサスペンションに加わる荷重が異なり、沈み込む量も変化する

 反対にプリロードをかける量を減らせば、体重が軽くても適正な車体姿勢までスプリングを縮めることができるので、本来の運動性能を発揮できるとともに、足着き性も良くなります。

 というワケで、プリロードアジャスターはスプリングの硬さを変えるのではなく、リアサスペンションの「ストロークする範囲を決める」ための調整機構です。乗り心地や運動性能(曲がりやすさ)も変化するので、理解を深めるためにも積極的に調整することをオススメします。

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