◇コラム「大友信彦のもっとラグビー」
「ロサンゼルス五輪で金メダルを取る。それは毎合宿、集合のたびに全員に確認しています」
サクラセブンズことラグビー女子7人制日本代表の兼松由香ヘッドコーチ(HC=愛知県一宮市出身、愛知教育大卒)は明言した。3月7日、熊谷市で行われた合宿での言葉だ。
サクラセブンズの躍進は目覚ましい。昨年のパリ五輪では9位だったが、12月に開幕した今季のワールドシリーズではここまで4戦してすべて8強入り。それも7位→6位→5位と順位を上げ続け、2月のバンクーバー大会では準々決勝で米国を破り、史上初の4強入りを果たした。協会もファンも夢見てきた「五輪のメダル」も目の前だ。
と思ったら、兼松HCは全然満足していなかった。冒頭に紹介した言葉通り、目指しているのは「金メダル」なのだ。
ホラを吹くなという声が聞こえてきそうだ。日本女子は、7人制ラグビーが初めて五輪種目に採用された16年リオデジャネイロのときも「金メダルを取る」と公言して臨んだが10位と惨敗。21年東京五輪では全敗の最下位に沈んだ。だが今回はひと味違うようだ。選手として16年リオ五輪を経験した兼松HCは話す。
「今のチームはユースの時から世界に勝ってきた選手がそろっている。世界で勝つ日本女子のラグビーを体現している選手たちなんです」
女子ラグビーの若手の充実は目を見張らせる。バンクーバー大会の準々決勝で劇的サヨナラトライをあげた最年少19歳の谷山三菜子(日体大1年)は、佐賀工2年の22年12月、ニュージーランド(NZ)で開かれた「ワールドスクールセブンズ」でNZとオーストラリアを連破して優勝したU―18日本女子の主将。昨季の大会は準優勝に終わったが、今季(24年12月)は「グローバルユースセブンズ」と名を変えた大会で、後輩たちがまたもNZ、豪州を連破して優勝した。彼女たちに「海外トップには勝てない」というネガティブな先入観はない。
そして、実績は周りにも影響を与える。
8月にW杯を控える女子15人制日本代表の長田いろは主将は「ずっと配信を見て応援してました。感動したし、めちゃめちゃ刺激になった。私たちもやらなきゃ」とキッパリ。レスリー・マッケンジーHCも「私たちもプール戦を突破して、準々決勝も勝って4強入りしたい」とW杯の目標を上方修正した。
歴史を書き換える競争が始まった。リーグワンの熱戦の陰で、飛躍を期すラ組女子たちの足取りに注目したい。
▼大友信彦 スポーツライター、1987年から東京中日スポーツ・中日スポーツでラグビーを担当。W杯は91年の第2回大会から8大会連続取材中。著書に「エディー・ジョーンズの監督学」「釜石の夢〜被災地でワールドカップを」「オールブラックスが強い理由」「勇気と献身」など。