これがアウディQ8スポーツバック 55eトロン・クワトロに乗った自動車評論家のホンネ!!「2.6tのスーパーヘビー級だが、ありえないくらいのコーナリングスピードを発揮する」by 佐野弘宗

今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! アウディの近未来をリードする旗艦BEV、Q8スポーツバック 55eトロン・クワトロSラインに乗った佐野弘宗さん、森口将之さん、金子浩久さんのホンネやいかに?


「エンジンから解放されたクワトロ」佐野弘宗

アウディといえばクワトロ。道なき道をゆっくりと分け入るためだった4WDを、センターデフ付きフルタイム方式として、フラットダートや舗装路を速く安定して走るために初めて使ったのが1980年のアウディだった。つまりスポーツ4WDの元祖だ。



このQ8 e-tronはそんなアウディの近未来をリードする旗艦BEVなので、ご想像のとおり4WDである。ただ、BEVなので前後に独立してモーターを置いており、前後に機械的なつながりはない。

車重2.6t以上のスーパーヘビー級だが、しかるべき場所で走らせるとありえないくらいのコーナリングスピードを発揮する。けっこう積極的なトルク配分をしているのか、アクセルを踏むほど、元気に笑ってしまうくらいグイグイ曲がる。しかも路面に吸いつく安心感はそのまま。

そういえば、アウディのエンジン車は戦後から一貫してFFレイアウトであり、クワトロもFFベースらしく、基本的には安定志向だった。そんなエンジン車の呪縛から解放されたクワトロを味わうと、アウディはずっと前からこういうことをやりたかったのだろうな……と思う。




「前向きな思想にワクワク」森口将之

アウディはフロントにエンジンを縦置きし、クワトロシステムで4輪を駆動するというパワートレインをアイデンティティとしてきた。その威力はWRCなどで立証済みだけれど、高性能エンジンを積む車種ほどノーズが重くなり、乗り心地やハンドリングに影響が出るというジレンマも付きまとった。しかもカーボンニュートラルを目指すには、高性能は足枷だった。

そんな状況を思い浮かべながらこのクルマをドライブして、アウディと電気自動車はとても相性がいいと感じた。動力性能と環境性能を両立できるうえに、バッテリーを床下に置き前後のモーターで4輪を駆動するので、乗り心地やハンドリングを理想に近いレベルに持っていけているからだ。

電気自動車を敬遠する人が、日本には今も多いけれど、アウディは新しい技術に対して否定から入るのではなく、常にプラス思考で向き合い、取り入れている。その結果、このブランドが目指す理想に近づいているような気がする。なによりも前向きな思想が、僕たちをワクワクさせてくれる。




「加速は強烈」金子浩久

アウディの大型クーペスタイルBEV「e-tron」に各種のマイナーチェンジが施されて、「Q8 スポーツバック e-tron」となった。

内外装の改編のほか、バッテリー容量が大型化された。この「55」では、114kWhと増えて、航続距離が78km伸びて501kmとなった。フロントに1モーター、リアに2モーターが組み込まれ、300kW(408ps)のシステム最高出力によって4輪を駆動する。

もはや驚くことではないのかもしれないが、加速は強烈だ。コンフォートモードで走っても、その印象は変わらない。

欲を言えば、コンフォートモードでは路面からの細かなショックを柔らかく包み込んでもらいたい。西湘バイパスの舗装のつなぎ目や細かな段差などからのコツコツといったショックとノイズを車内に明確に伝えてきてしまっていた。また、回生を強めた時の効き方がギクシャクしていた。滑らかに回生するといいのだが。操作系統のインターフェイスも以前からのままで、馴染みがあって使いやすいが新鮮味に欠けている。他社のBEVが日進月歩なので、Q8 e-tronの次の進化を期待している。

写真=小林俊樹(メイン)/茂呂幸正(サブ)

(ENGINE2024年4月号)

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