今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗!
西川淳さんが乗ったのは、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV、キャデラックXT4、ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ、BYDシールAWD、BMWアルピナB3 GTの5台だ!
メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV「個室新幹線」
誰が言ったか“個室新幹線”。風切音だけがかすかにシューンと聞こえる移動感覚を体験すれば誰もがそう思うはず。そんなわけでEPC会員にはまず後席を勧めたが、あまりに心地良さそうなのでちょっと悔しくなった。それで箱根ターンパイク入口で助手席に移ってもらったのだが、それがまたよかった。峠道では3トン超えの車重をものともせず、スポーティカー顔負けの“軽快さ”をみせたから。後席に座っていてはきっと気分が悪くなっただろう。
とはいえ、そんな強力な走りがマイバッハの真骨頂ではない。それは実力の片鱗、というか、基礎にすぎない。力を秘めているからこそ、ゆっくり走らせてドライバーやパッセンジャーが心地良くなれるわけだ。
何しろその乗り心地の良さはここ10年のメルセデスでは最良の部類。22インチという巨大タイヤの存在をまるで感じさせない。全てをクルマに任せて走らせたなら、追い越していくクルマたちをまるで下界の些細な出来事であるかのように泰然と見送れてしまう。正に“金持ち喧嘩せず”。
キャデラックXT4「想像以上にフツー」
キャデラックと聞くと未だ “身構える” 人も多い。ピンク・キャデラックとか、エルドラードとか、最新ならエスカレードなど、いかにもアメリカンな出立ちのモデルを見れば “構えたくなる” 気持ちもわかる。
けれどSUVのXTシリーズやセダンのCTシリーズは、ちょっと毛色が違って、東海岸風のグッとモダンな乗用車たち。それこそアウディやレクサスのような感覚でもっと気軽に付き合って正解だと密かに思っていた。
ラインナップで最もコンパクトなXT4などはその典型だ。ドライブ・フィールはあらゆる意味において乗用車としては “中庸”、つまり妙な極端さなどまるでなく、よくよく調和が取れている(ただし“左ハンドル・オンリー”であることを除いて)。動きは軽快で欧州車風だし、フレンドリーなパワートレインながら力も十分。
夜が似合いそうな顔つきや、33インチの巨大なメーターパネルなども気に入った。同乗したEPC会員は「想像以上にフツー」であることに感心していたけれど、日本のキャデラックにとってそれは今 “褒め言葉” だろう。
ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ「日本車の仲間」
アイオニック5に限らず韓国車に私が抱く想いはというと、ジェネラル・ブランド(VWやルノー、フィアットなど)を含めた欧州車に対する“憧れ”ではなく、日本車の仲間といった感情だ。自動車を産んだ先駆者たちを追い越せと共に頑張る義兄弟とでも言おうか。
というわけなので、凄まじいスピードで進化を続けるアイオニック5のような個性派の実用BEVを試すたび、ちょっと羨ましくなったりする。「これで十分に良いんだよね〜」といった価格に見合う充足感をもたらす乗り味といえば本来、日本車の特技であったはずだから。
ハードとしてのパフォーマンスに文句はない。そのうえ既成概念を打ちこわした内外装のデザインなど、好き嫌いはあったにしろ、時代に敏感なセンスに溢れている。残念ながら日本車はそんなところで未だ物足りない。
私は京都在住なのでタクシーのアイオニック5にもよく乗るからすっかり見慣れてしまっているけれど、大磯界隈で流していると結構注目を浴びた。“仲間”とはいえ、そこはやっぱりガイシャなのだ。
BYDシールAWD「そわそわさせる」
中国車に対する私の想いは、欧米車はもちろんのこと、韓国車ともまた違っている。不思議な存在だ。まるで新種のクルマを見せられている気分になったり、そしてそれがとてもよくできているから感心するほかなかったり、といった感じで、良い意味でいつもなんだか “落ち着かない”。日本車の進化の行方に対して漠然とした不安を抱かせる、というか、“焦り” にも似た気分になる。そわそわと。
BYDシールもまた、機能性やデザインにおいて、そういう手があったのかと驚かされる発見は今後中国車からその多くを得るのではないか、と思わせるに十分な実力の持ち主だった。中国車という匂いなどまるでない(あったとしても嗅いだ経験がないので知らないけれど)。
クルマ先進国で十分受け入れられる“グローバルカー” の新種である。強力な加速性能はフル電動だから当然、とはいえ、フツウに転がしていてもなんら不満はなく、大磯の街中から西湘バイパス、そして箱根ターンパイクまで、基本の動きは十分このクラスに見合ったものだった。
BMWアルピナB3 GT「とりあえず買おう!」
畏れ入りました! 動き出した瞬間から舗装の荒れた西湘バイパス、数々のスーパーカーで走り尽くした箱根ターンパイク、そして国道1号線まで、実用車としてのトータル・バランスではU2000万円マーケットにおいて最高の一台だ。
助手席のEPC会員も走り出した途端に乗り心地のよさに驚き、タイヤの見事な転がりに感心した。ブッフローエ最後、ボーフェンジーペン最後といったマニア垂涎の“謳い文句”も霞んでしまう。特に有料道路を優雅に流したときと、ワインディングロードを果敢に駆け上がったときの気持ちよさと言ったら! 前者はまるでコンパクトなロールス・ロイス風の滑らかさだったし、後者ではハコのスポーツカーかくあるべしといった豊穣なハンドリングがあった。
そのうえM謹製Sエンジンの回転フィールが胸をすく。遠めから聞こえるサウンドが耳に心地よい。アルピナでGTといえば究極を意味する。つまり最後の究極。周りのクルマ好きにはとりあえず買っておけと勧めている。もちろん、私も欲しくてたまらない。
「先駆者には敵わない」西川淳から見た、いまのガイシャのここがスゴい!
大磯ロングビーチの朝7時半。ガイシャが大挙し整列する光景を見て満面の笑みとならないクルマ好きはきっといまい。毎年のことながら眺めているだけで清々する。朝日をまともに受けた逆光シーン、最前列のスーパーカー以外に車種の判別も心許ない状況で、個々のモデルからは日本生まれには決して出せない、そして陽光に負けない強い光が発せられていた。
カラーやスタンス、スタイリング、プロポーションといった表層的な違いに加えて、遥々海を越え日本の好き者たちのためにやってきたという骨太な存在感がその源だ。哲学があると言い換えてもいい。自ら語る力を秘めているからこそ、自動車大国の日本にあっても各々の個性が際立って見えてくる。
だから乗ってみたい、手に入れたいと思わせる。たとえ港区でしょっちゅう見かける人気のドイツ車であっても、港区民は惹かれ続けるわけだ。先駆者にはやっぱり敵わないんだよなぁ(嘆)。
文=西川 淳
(ENGINE2025年4月号)
「私も欲しくてたまらない!」と西川淳(自動車評論家)が5台の注目輸入車に乗って絶賛したクルマとは?
ENGINE WEB 2025/05/03 06:00