年俸制とは、社員の1年間の給与総額をあらかじめ決めて支払う制度のことです。例えば「年俸600万円」となっていれば、それを12ヶ月(または14ヶ月など)で分割して毎月支給されるのが一般的です。年俸制は、成果主義や職務給を導入している企業でよく見られ、外資系企業や専門職、管理職などで採用されることが多い形式です。
このとき、「年俸制だから残業代は出ない」「年俸にすべて含まれている」と勘違いをする人もいるでしょう。しかし、年俸制であっても労働基準法は適用されるため、法定労働時間を超える労働に対しては残業代を支給する必要があります。
結論からいえば、「年俸制=残業代が出ない」というわけではありません。労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えて働いた場合には、割増賃金(いわゆる残業代)を支払う義務があります。これは給与体系に関係なく適用されるため、年俸制であっても残業が発生すれば、原則として企業は残業代を支払う必要があります。
たとえ契約書に「残業代は支給しない」と書かれていたとしても、労働時間の実態がそれを上回っていれば、未払い残業代として請求の対象になる可能性もあります。
企業によっては、「年俸に○時間分の残業代を含む」と明記しているケースがあります。例えば、「年俸600万円(みなし残業代30時間分を含む)」といった表記です。
このような固定残業制(みなし残業制)を導入している場合でも、いくつかの条件を満たす必要があります。具体的には、以下のような点です。
・固定残業代の時間数と金額が明示されており、基本給と明確に区別されていること
・実際の残業時間がみなし時間を超えた場合は、その超過分を別途支払うこと
もし企業がこうした要件を満たしておらず、年俸に含んでいるからという理由で一切残業代を支払っていない場合は、労働基準法に違反している可能性が高いです。
注意したいのが、「管理職」や「裁量労働制」の扱いです。多くの人が「管理職だから残業代は出ない」と思いがちですが、これは誤解です。
労働基準法第41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当する「管理監督者」の場合(例えば、経営方針の決定に関与するレベルの役職)は、労働時間の規制から外れるため残業代が支給されないこともあります。
しかし、名ばかりの管理職で実体が伴っていない場合は、残業代を請求できる可能性があります。
また、裁量労働制が適用される業務(研究職や一部の専門職など)であっても、労使協定や制度の導入手続きがきちんと行われていなければ無効になることがあります。
年俸制の求人に応募する際は、求人票や面接時に以下の点をしっかり確認しておくことが大切です。
・年俸に残業代が含まれているかどうか
・含まれている場合、何時間分でいくらなのか
・その時間を超えた場合、追加で支給されるのか
・裁量労働制や管理監督者の扱いになっていないか
質問しにくいと感じる人もいるかもしれませんが、入社後のトラブルを防ぐためにはとても重要です。質問しても曖昧な回答しか得られなかったり、制度が不透明だったりした企業の場合は、慎重に判断するのがよいでしょう。
年俸制であっても、残業代が支払われるケースは多くあり、労働時間や制度の内容次第で適切に支給されるべきものです。もし、実体として長時間労働が続いているのに残業代が支払われない場合は、労働基準監督署などに相談することも視野に入れましょう。
転職活動中は、給与の金額だけでなく「内訳」や「労働条件の透明性」にも目を向けて、後悔のない選択をしましょう。
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー