ユーロ紙幣は、これまでに2つのシリーズが発行されています。2002年から使われている初代の紙幣(第1シリーズ)と、2013年から登場したEuropa(エウロパ)シリーズです。
Europaシリーズは、偽造防止機能を強化し、より耐久性のある紙幣として設計されました。現在、流通しているユーロ紙幣の多くはこのシリーズです。
Europaシリーズのユーロ紙幣のデザインを担当したのは、ドイツ・ベルリンを拠点として活動する紙幣デザイナーのラインホルト・ゲルシュテッター氏です。第1シリーズと同じく、ヨーロッパの一体感と中立性を意識したデザインコンセプトになっています。
2つのシリーズとも、紙幣の表面には窓や門、裏面には橋が描かれており、これらは国を超えて協力し合うヨーロッパの姿勢や、外の世界へ開かれた精神を象徴するモチーフです。
図表1
© European Central Bank. Image used in compliance with ECB Decision ECB/2013/10.
また、各紙幣には、ヨーロッパのさまざまな時代を代表する建築様式が取り入れられていますが、描かれている建物そのものは、全て架空のデザインです。
図表2
© European Central Bank. Image used in compliance with ECB Decision ECB/2013/10.
各紙幣に採用されている建築様式は以下のとおりです。
5ユーロ:クラシック様式
10ユーロ:ロマネスク様式
20ユーロ:ゴシック様式
50ユーロ:ルネサンス様式
100ユーロ:バロックおよびロココ様式
200ユーロ:鉄とガラスを使った19世紀の建築様式
欧州中央銀行(ECB)は、こうしたデザインについて、特定の国に偏らず、ヨーロッパ全体の共通文化を象徴するための意図的な選択だと説明しています。
日本の紙幣には、これまで一貫して実在する人物や文化財がデザインとして採用されてきました。過去には聖徳太子のように伝説的な人物が描かれていたこともありますが、近年の紙幣では実在の人物が選ばれています。
2024年に発行された新紙幣でも、その方針は変わらず、図表3のような図柄が採用されました。
図表3
国立印刷局 新しい日本銀行券特設サイトより筆者作成
表面に描かれている3人はそれぞれ、産業の育成、女性の社会進出、科学の発展といった分野で大きな功績を残した人物です。財務省の公式ホームページによると、現代においても社会が向き合う課題に深く関わる存在であることから、毎日のように人々が手にする紙幣の肖像としてふさわしいと判断されたとしています。
また、近年の紙幣刷新では以下のような点も重視されています。
●偽造防止の観点から、高精細な写真資料が入手可能であること
●肖像彫刻として使用するにあたり、紙幣にふさわしい品格があること
●人物が国民に広く知られており、その業績が認知されていること
こうした理由から、近年選定される肖像は明治以降の実在人物に限定されています。
紙幣の裏面には、日本の伝統や文化、自然の美しさなどが表現されています。新しい時代にも受け継ぐべき象徴として、各券種の色やイメージに調和する図柄が採用されているのも特徴です。
日々何気なく使っている紙幣には、実はその国ならではの価値観や理念が反映されています。ユーロ紙幣は、実在しない建物をあえて描くことで、多国間での公平性や統合を象徴しています。
一方、日本の紙幣は、実在の偉人や文化・自然を通じて、歴史や伝統、国としての姿勢を表現するスタイルです。
どちらの紙幣にも、その背景には国や地域の考え方が込められています。お札を手にしたとき、どんな思いやメッセージが込められているのかを少しだけ意識してみると、新しい発見があるかもしれません。
EuropeanCentralBank Design elements
財務省 紙幣の肖像の選定理由を教えてください
財務省 紙幣の裏面の図柄の選定理由を教えてください
国立印刷局 新しい日本銀行券特設サイト
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー