実写感あふれる。一頭一頭のいななき、蹄音が聞こえてきそうだ。天栄村牧之内の青龍寺観音堂の奉納幕は幅9メートル弱に及ぶ。400頭もの馬が描かれ、村重要文化財に先月指定された▼江戸時代の1852(嘉永5)年に奉納された。けい養されていた場所や飼い主が墨書きされ、会津や浜通りの地名も確認できる。当時、地域を治めた白河藩は馬産を重要産業と位置付けた。地名の「牧」は、放牧場を表す。明治期から昭和初期にかけて、秋の競りが開かれた。名馬を求めて全国から馬の仲買人が集い、地域経済は潤った▼馬と村のつながりは今も続く。村内の小高い丘にある「ノーザンファーム天栄」は、サラブレッドの国内有数の調教施設。JRAでのデビューを控えた若駒、レースが間近に迫った現役馬が、息を切らして坂路を駆け上がる。海外で活躍したアーモンドアイ、イクイノックスも「卒業生」だ。世界中の勝負を支えているといって過言でない▼施設見学は何と、ふるさと納税の返礼品となり、ファンが次々やって来る。中央競馬は間もなく春の「GⅠ」シーズン。天栄の澄み切った青空とはるかな歴史を思えば、大レースを駆け抜ける優駿がいとおしく映る。<2025・3・28>
優駿の里(3月28日)
福島民報 2025/03/28 09:06