3月26日からボストンで開幕する世界フィギュアスケート選手権。
全日本選手権で初優勝を果たした新エース・鍵山優真(21)が4度目の世界選手権へ挑む。
2021年に初出場した世界選手権では、羽生結弦さん、宇野昌磨さん2人の“圧倒的な先輩”とともに北京五輪の出場枠をかけて挑み、銀メダルを獲得する。その経験から今回、鍵山は「初出場の2人がリラックスして試合ができる雰囲気を作りあげることができたら」と意気込む。
今大会のテーマ「失敗を恐れずに」を掲げる彼の今に迫った。
完璧を狙いすぎず、自分で自分を褒める2月のアジア冬季競技大会後、世界選手権に向けて調整している鍵山は「やっと自分のルーティンが見つかって、いい意識で練習も取り組めている。世界選手権に向けて自信も少しずつついてきて、準備もできている」と調子の良さを見せた。
メンタル面の流れも変わってきたという鍵山。
以前は調子が悪いと「ダメだ…」となっていたところ、「1、2回失敗したぐらいでは、『大丈夫、大丈夫』って思えるようになったり、うまくいったときは『よくできた!』と自分で褒めて自信をつけるようにしている」と語る。
7度目の全日本で悲願の優勝を果たした鍵山は、世界の頂点へ向けて試行錯誤する中、気づいたことがあるそうだ。
「今までは“全部完璧にやらないと”と思い過ぎていましたが、最近は意識を変えて、大丈夫よくできた!と自分を褒めてあげることで、良い練習につながる」
取材にいった日も、ジャンプの精度も高く次々と4回転ジャンプを成功。予定より30分ほど早く練習を切り上げるなど好調ぶりをアピールした。
もちろん優勝を狙っている世界選手権前最後の大会となったアジア冬季競技大会で、新ジャンプの4回転ルッツを初めて実戦で投入するも、転倒に終わってしまった。
「4回転ルッツに挑戦して、結果うまくいきませんでしたが、今年の世界選手権はもちろん優勝も狙っていますし、オリンピックの3枠もかかっている。4回転ルッツの確率が上がっていない状態でいれることはできない」と、父でありコーチの正和さんと話し合い、4回転ルッツを回避すると話した。
そして4回転ジャンプ3種類の構成に戻すも、基礎点を落とさないために最後のジャンプを3回転フリップ―3回転ループに変更。
しかし鍵山は「4回転トゥループに戻しましたが、大変なプログラム。ただ、より細かな表現やスピンにも意識がいくようになったので、全体的なクオリティーをあげる練習はできている。今の自分が100%出し切れる構成や作戦を練りながらやっています」と語った。
マリニンはやる気を上げる存在世界の頂点を目指す上で忘れてはならないのが、世界王者イリア・マリニンの存在だ。
去年は異次元の演技で歴代最高得点を叩き出した“4回転の神”は、今季全勝中と健在。
マリニンについて率直な思いを聞くと「マリニン選手に勝ちたいっていうのを一番には考えてなくて。とにかく“今季の自分に勝てるように”という思いで必死に練習している。視界に入るだけで意識しちゃうので(笑)。でも、自分の試合へのやる気やモチベーションを上げてくれる存在で、僕はライバルや仲間の存在に恵まれていると思っている。自分自身の120%をこなせたら、少しでも追いつけるんじゃないかな」と鍵山。
そんな鍵山は、演技後半のステップシークエンスが盛り上がるポイントだと話す。
「ステップに関しては最初から最後まで盛り上げるつもりでやっています。自分の世界だけに浸るのではなく、しっかりと決めるところは決めて、お客さんやジャッジのみなさんの顔をしっかり見ることを意識しています。そこをやり切るだけなので、最後倒れてもいいくらい、必死です」
マリニンからも「ボストンで披露したら盛り上がりそう」と言われたという、渾身(こんしん)のフリーを準備中だ。
これ以上ないくらいのガッツポーズをミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の出場枠をかけた今大会だが、前回の北京五輪の出場枠をかけた2021年の世界選手権が初出場だった鍵山は、当時のことをこう振り返る。
「自分が初めて出場した時は、圧倒的な先輩2人がいたので、僕は楽にというか安心して試合をすることができました。今度は逆の立場になり、(佐藤)駿とたっちゃん(壷井達也)が初めてで、自分がもう4回目になる。2人みたいな貫禄や安心感があると言われたら、僕自身はあまりそう思っていませんが、僕には僕のできることがあると思うので、少しでもみんながリラックスして試合ができる雰囲気を作りたい」
今回初出場となる佐藤駿、壷井達也と挑む世界選手権で、2人を支えられるようにと意気込む。
そんな鍵山が目指す理想の演技は、「やっぱり今季、昨季含めてもショート・フリーしっかりとノーミスで揃え切ることがなかなか難しくて、達成できなかった。それをしっかりとやり遂げたい。とにかく必死に失敗を恐れずに頑張りたい」と“最低限300点超え”を目標に掲げ、世界選手権までの練習に励む鍵山。
そして「これ以上ないってくらいのガッツポーズを出して終わりたい」と熱を込める。
自身も満足できたと語る去年末の全日本を超える演技に期待したい。
26日から行われる世界選手権では、男子は鍵山優真、佐藤駿、壷井達也、女子は坂本花織、千葉百音、樋口新葉。ペアは三浦璃来・木原龍一組、長岡柚奈・森口澄士組、アイスダンスは吉田唄菜・森田真沙也組が出場する。