日本で暮らす外国人は、日本人に対してどのような印象を持っているのでしょうか。日本で暮らして約6年になる、トリニダード・トバゴ人のニコラスさん。日本のシステムは優れており、他者への気配りがとてもできる素敵な国だと考える一方で、「なぜ?」と思っている文化もあるといいます。とくに、教育現場に関わっているため、日本の子どもたちに対して感じていることがあります。
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日本は素晴らしい国 でも、働きすぎ!JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme/語学指導等を行う外国青年招致事業)を利用して、トリニダード・トバゴ共和国から移住してきたニコラスさん。今年の夏で、来日して丸6年になります。
日本での生活が長くなりましたが、素晴らしい国だと再認識する機会は今でも多いといいます。その一方で、「日本が改善すべき点」もまた、見えてきたそうです。
「気になっているのは、ライフワークバランスです。日本人は働きすぎだと感じますね。すべてを会社に捧げているイメージで、いつもオーバーワークにより疲弊している人が多い。休みの日は疲れているから家に引きこもってばかりで、家族とどこかに行こうとしない人もいると聞きます。仕事よりも家族のほうが大事では? と私たちは思うのですが、日本では違うのでしょうか」
日本でも、36協定などにより、以前よりも時間外労働や休日出勤について留意されるようになりました。それでも、世界的に見ると、日本はライフスタイルに合わせた働き方の選択肢がまだまだ少なかったり、有給取得率が低かったりと、ライフワークバランスを調整しにくい環境で働いている人が多いでしょう。
周囲に気兼ねなく有給休暇を取れるシステムや、リモートワークの活用など「もっとフレキシブルになるといいですね」と、ニコラスさんは言います。
若い世代へのサポートも見直すべきまた、日本の深刻な社会課題のひとつが、若年層の自殺率の高さです。日本における10〜39歳の死因1位は自殺。国際的にも、15〜34歳の死因順位の1位が自殺となった国は、G7のなかでも日本だけです。さらに、2024年の小中高生の自殺は過去最多となっています。
ALT(Assistant Language Teacher/外国語指導助手)やそのサポートとして、日本の教育現場に関わるニコラスさんは、日本の若者にかかる圧の高さに疑問を感じました。
「日本は、学生のうちから社会からのプレッシャーが強く、本当に大変だなと思います。とくに負担になっているのは受験でしょう。思考力が問われる問題が増えているといわれるものの、今でも記憶式のテストが多いですよね。こんなにストレスフルな受験制度はやめて、のびのびと教育を受けられるようにしたほうが、長期的に見て日本のためになると思うことがあります」
とくに、専門としている英語学習には、変化が必要だと感じているそうです。
「日本の授業は、覚えることが多いですが、実際に使えなければ意味がありません。もっと話せて、聞けて、覚えるよりも話すことを重視した、クリティカルな授業を増やすべきだと感じています」
日本の子どもたちも大変だった?現在は、熊本県にあるインターナショナル幼稚園で、小さな子どもたちに英語を教えているニコラスさん。トリニダード・トバゴの子どもたちに比べて、日本の子どもたちは幼い頃からとても「自立している」ように見えるそうです。
「母国では、通学時は車での送迎が当たり前で、学校の掃除も専門の清掃員が雇われていて、子どもが掃除をすることはありません。クラブ活動や部活動も入りたい人だけが入るし、塾に行く子どもはほぼいません。放課後になると、子どもたちは家族や友達とのんびり過ごすんです」
日本では、小さな子どもであっても学校や塾、習い事に行っている子が多く、しかも自分の足で行く子が多いことに驚いていました。さらに、日本の学校はカリキュラムがみっちりと詰まっているのに、教室やトイレなど学校の掃除をする時間もあることに、衝撃を受けたといいます。
「子どもでも、やらなければならないことがたくさんあるのに、きちんと集中力を保っている。これはすごいことですが……日本とトリニダード・トバゴ、どちらが子どもにとって幸せか、ベネフィットがあるのか、私にはわかりません」
日本の子どもたちの未来を心配しながらも、日本はとても素晴らしい国だと話すニコラスさん。日本の文化を尊重しながら、日々を楽しく過ごしています。
「私の一番の目標は、ハッピーに生きること。未来がどうなるかはわからないけれど、今は日本にいられることがハッピーなので、しばらくは日本に住み続けたいと思っています」
和栗 恵