悩ましき“充電器ガチャ”との闘い――納車4年目のテスラで挑む、「横浜→岡山」往復1500km旅【前編】

iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でレポートします。

 筆者の21年式Model 3 ロングレンジは、24年9月に初の車検を終え、走行距離が3万kmを超えました。推定バッテリー劣化率は、約5%〜11%(複数のサードパーティー製アプリによる推定値)で、満充電時の走行距離は名目で500km強ですが、実質的におおむね430〜450kmといったところです。

 本稿は、納車から3年以上が経過したModel 3による横浜と岡山の往復約1500kmの旅の模様です。EVでの長距離旅に不安をお持ちの方もいるようなので、経路充電にまつわる悲喜交々やエネルギーコストを中心に、前編・後編の2回に分けてお伝えします。ちなみに旅は2024年11月末に実施し、ドライバー1名乗車の一人旅です。

 ホームタウンである岡山への旅は、墓参りと年老いた母親のサポートが主たる目的です。普段はタイパを考慮して新幹線+レンタカーを利用しているので、「EV旅の秘訣は“満タン主義“との決別 テスラで『往復3000kmドライブ』」以来、約2年ぶりの1000km超えの長距離EV旅です。

●スーパーチャージャーは利用しないと決めた

 今回、往路においてのみ充電に関して1つのテーマを設定しました。それは、テスラ専用のスーパーチャージャー(SC)を使用せず、高速道路のサービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)に設置された公共の充電器(CHAdeMO)だけを利用して経路充電を行うというものです。

 理由は、SCの充電料金の値上がりにあります。2年前と比較して約2倍の料金になりました。以前は、高速道路から途中退出し、SCで充電後、再入場した場合の初乗り加算額を考慮しても、SC利用にメリットがありました。

 しかし、SC料金がCHAdeMOのビジター料金に近づいた今(それでもSCの方が安価なわけですが…)、低い充電能力であってもSA/PAでのCHAdeMO利用に一定の理があるがあると考えたからです。

 しかも、往路は高速道路の深夜割引制度を利用します。可能なら目的地のインターチェンジ(IC)までは、途中退出したくありません。退出したら割引がリセットされてしまいます。

●予想を上回る低電費に喜ぶ

 午前3時にSOC(State Of Charge)100%で自宅を出発しました。最初の充電ポイントは、約370km先の新名神高速道路の鈴鹿PA内のCHAdeMO充電器を予定しています。Teslaナビの「トリップアドバイザー」によると、バッテリー残27%で到着とあります。

 27%はある意味歓迎されるべき残量です。SOC27%からの急速充電スタートは、時間と充電量の対比において効率面で比較的良い結果をもたらしてくれます。バッテリーにも優しいですし。

 SOC27%だと鈴鹿PAまでの想定電費は、計算上約138Wh/km(7.18km/kWh)になります。ここで30分かけて約20kWh(約144km分)を充電し、さらに山陽道の岡山ICまでのどこかのSA/PAで、昼食がてらもう1回(30分)充電すれば岡山市の実家に余裕で到着可能という計画です。

 途中、仮眠(出発前に2時間程度寝ただけなので小一時間も爆睡…)やトイレ休憩を挟み、鈴鹿PAに到着したのは午前8時30分でした。ここは充電器が1基なので、先客がいたら待ちを覚悟しなければなりませんが、幸い空いていました。

 結果、バッテリー残量は36%と予想より良い結果でした。新東名高速道路では、マックス120km/hで走行する場面もありましたが、オートパイロットを使い平均80km/h強で走ったこともあり、122Wh/km(8.2km/kWh)と想定以上の電費を稼げたようです。普段から落ち着いた走りを心掛けているので、特に省エネ走行を意識したつもりはありません。外気温は、出発時、到着時共に17度前後でした。

 予想より低電費だったのでここで充電しないで約60km先の名神高速道路の草津PAまで攻めたとしても、計算上は二十数パーセントを残して到着するはずです。攻めてみようかと迷いはしましたが、空腹だったこともあり、鈴鹿PAで朝食がてら充電することにしました。

●横浜から岡山まで1回の充電で走破可能

 鈴鹿PAで30分間、電力量21.8kWh(充電ロスがあるので実質20.68kWh)、電費122Wh/kmとして約165km分の充電を行いました。SOCは66%まで回復したので、計算上は、SOC11%で実家に到着することができます。

 横浜を100%で出発し、途中30分の充電、しかも、50kWの低出力充電を1回実施しただけで岡山市に到着できる可能性を秘めたModel 3 ロングレンジの実力を実感しました。

 ちなみに、エアコンの設定は基本的に21〜22度です。天候に恵まれたので日が高くなるにつれ、全面ガラスルーフから差し込む太陽光のおかげで暑いくらいでした。そのため途中からエアコンをオフにしていました。このあたりも低電費の要因かもしれません。

 ガラスルーフのおかげで太陽光さえあれば、冬でもシートヒーターとハンドルヒーターだけで快適性を確保できます。夏は暑いですが…。

 EVはエンジンという熱源がないから冬はエアコン使用でバッテリー消費が激しいという言説をみかけます。それは事実ではあるのですが、極寒でなければ、エアコンをオフにして送風モードだけでも、メインバッテリーやインバーターを熱源とした温かい風が得られます。Tesla独自のオクトバルブ機構を使った熱マネジメントシステムの勝利といったところでしょうか。

 ちなみに、途中PAでの仮眠中もエアコンをつけっぱなしにできるので、ぬくぬく環境で過ごせました。エンジンを止めなければいけない内燃機関の車だとこうはいきません。さりとて、アイドリング状態のままというのは条例に反し、一酸化炭素中毒の危険をはらみます。

 旅の話に戻りましょう。ここで予定変更です。実家には「午後6時までには行く」と伝えてあったので、このままでは早く着きます。せっかくなので以前から訪れてみたかった、岡山県北部の津山市にある津山城跡に立ち寄ることにしました。直接実家を目指すよりも、約50kmほど余分に走行しますが、追加の充電は不要です。

 津山ICに到着する前にどこか適当なSA/PAで昼食を済ませておこうと考え、中国道の勝央SAに立ち寄りました。「高速充電なび」というアプリで確認すると、ここには出力40kWのCHAdeMO充電器が1台設置されています。アプリによるといつも空いているようですし。

 どのみち食事休憩を取るわけですし、実家には充電コンセントがありません。翌日の行動を考えこのSAで充電することにしました。しかし、ここでの充電は後味の悪い思いを残すことになりました。

●見掛け倒しの40kWにガックリ

 勝央SAのCHAdeMOは出力40kWとは名ばかりで、最大でも25kW(70アンペア)しか出ませんでした。30分間充電しても、実質電力量12.42kWhで距離にすると約96km分です。PA/SAのCHAdeMO充電器は、得られる電力量にかかわらず時間課金制です。これで鈴鹿PAと請求金額が同じなわけですから、「責任者出てこい!」(古っ)とボヤキたくもなります。

 以前、どこかのSAで出力40kW器を利用したときは、終止36〜37kWが出ていたので、勝央SA充電器の個別の問題のようです。しかも、操作パネルの液晶画面を保護するアクリル板の表面が劣化しており文字等が読み取れません。

 2度のミスを経て、勘を頼りに操作してなんとか充電を開始しました。こういうもろもろの不安定性や不確実性がCHAdeMOのユーザー体験をおとしめることになります。

 日経新聞によると、高速道路上の充電設備を管理・運営するe-Mobility Powerでは、主要幹線から順次新設備に入れ替えたり、2025年後半に、充電量に基づく従量課金制を導入しつつ、30分上限ルールも廃止するそうなので今後に期待といったところでしょう。

●9.26km/kWhの低電費を記録

 結局、勝央SAには、バッテリー残22%で到着し、30分充電して40%までしか回復しませんでした。それでも200km以上は走行できるのでラーメンを食した後「おかわり充電」はせず、早々に出発しました。

 1時間30分程度かけて津山城跡の石垣を丹念に見学し、国道53号線を使い岡山市の実家に向かいます。この約63kmの行程において、外気温は、11度まで下がりましたが今回の旅を通して、108Wh/km(9.26km/kWh)と最も良い電費を記録しました。

 最大の要因は、途中の峠越えはあるものの、全体的には海抜100メートルの地点から、岡山平野の北に位置する海抜10メートルの実家に向かう経路であるため、下り傾向が続くからだと思われます。

 実家には、バッテリー残29%で到着しました。翌日の墓参り、買い物、他界した父親が経営していた工場跡地の訪問など、翌日の予定をこなすには十分な容量を残しています。しかし、ここで母親のダメだしがさく裂しました。

●バッテリー残29%では「空」も同然?

 「電気が29%『しか』ないのは不安だ」というのです。らくらくスマホユーザーの彼女は、デイサービスやデパート等へ買い物に出掛けるときであっても、スマホのバッテリーが60〜70%を切ったことがないらしく、彼女からすると29%など「空」も同然のようで、「何か不測の事態があったらどうするのか」というわけです。

 筆者としては、用事を済ませた帰路、岡山駅近くでの買い物ついでに岡山SCで10分くらい必要最低限を充電してから実家に帰ればいいと軽く考えていただけに、バッテリー残量について一般的な受け止め方の違いを改めて認識した次第です。

 結局、翌朝は墓参りの前に、必要最低限ではなく十分に充電するということで納得してもらい、朝一番で岡山SCに立ち寄り、SOC24%から80%まで25分かけて充電しました。

 前回、愛車で岡山を訪れたときには、最寄りのSCは隣の倉敷市にしかなく、岡山SCは存在しませんでした。旅先の行動拠点付近にSCが新設されると利便性が増します。

●プレコンディショニングで充電効率を最適化

 前編の最後に、往路と復路(詳細は後編で解説予定)も含めた充電量やコストに関するデータを表にまとめたのでご参照ください。項目トップの「自宅充電」のデータは、鈴鹿PAまでの消費分や電費データを元に算出しています。その他の各経路充電については、それぞれの拠点の充電量や料金を元に次の充電拠点までの電費を参考にして算出しました。

 「ガソリン換算」の項目は、燃費13km/Lで1リットル186円で計算しました。以前、Teslaの公式レポートにおけるLCA(Life Cycle Assessment)評価のベンチマークにBMW 3シリーズがあったので、BMW JapanのWebサイトに記載された3シリーズのWLTCで算出しました。186円/Lは、資源エネルギー庁の2024年11月のレギュラーガソリン全国平均にハイオク分11円を上乗せしたものです。

 「燃料代節約」の項目では往復の路程全体では、ガソリン換算で8532円の節約を実現していますが、低出力に泣いた勝央SAのCHAdeMO充電では、マイナス276円とガソリンより高額になりました。時間課金による低出力器の不条理が露呈した格好です。その一方で、単価の安い自宅充電では、ガソリンより4分の1程度のコストを実現しており、深夜料金による自宅充電はまさに神です。

 各単価に着目すると、鈴鹿PAと勝央SAの充電量や単価が異なるのは、前述の通りですが、Tesla専用のSCにおいて、単価、航続距離、充電時間が一定でないのは、プレコンディショニングの有無や充電上限設定に伴う効率の差異が影響しているものと思われます。

 プレコンディショニングとは、効率よく充電を行うために移動中にバッテリーを適温にしてくれる機能です。ナビで目的地をSCに設定するとModel 3が自動的に行います。その分電力を消費するのですが、充電時の効率性を優先させ時短=コスト低減を実現することが可能です。

 例えば、岡山SCのコストが73円/kWhと他の2つのSCと比較して高いのは、実家から岡山SCまでの移動距離が約20分と短いために、十分なプレコンディショニングが行えなかったことが原因として考えられます。朝だったので気温が10度前後と低かったことも影響しています。

 実際、上の表に示した神戸北や遠州森町SCに向かう道中では、バッテリー残量との兼ね合いで到着予定時間の1時間以上前から、プレコンディショニングが始まっていました。

●トリップアドバイザーが最適充電量と時間を計算

 前述の「充電上限設定に伴う効率」について付記しておきましょう。急速充電は、SOCの上昇に伴い効率性が悪化します。つまり、同じ時間でもバッテリーに入る電力量が少なくなっていきます。SOC80%を超えたあたりから急激に悪化します。スマホの充電にも同様のことが言えます。

 復路の神戸北SCでは、翌日の行動を考慮し95%まで充電したため66円/kWhと高めの結果です。62円/kWhと最も安価な遠州森町SCでは、自宅まで到達できる量だけ充電すれば良いので、上限を60%に設定し充電時間14分で出発しています。これが功を奏し低コストで充電が可能となりました。自宅には、SOC17%で到着しました。

 このような、目的地までの必要にして十分な電力量や充電時間の計算は、Teslaナビの「トリップアドバイザー」が自動的に行ってくれます。他社のEVがこのような機能を備えているのかは分かりませんが、Model 3での長距離旅にはありがたい機能です。約3年前のTesla初心者だった頃、この機能のおかげで安心して遠出ができた記憶があります。

 後編は、横浜までの復路の様子を新東名高速道路の120km/h区間で意識的に制限速度上限をキープした際のハイスピード走行時の電費の話題などを盛り込みつつ、趣味の城跡巡りの写真も交えてお届けする予定です。ちなみに、スーパーチャージャーを使用せず、高速道路のSA/PAの充電器だけを利用した際のコスト比較も後編でお知らせします。

著者プロフィール

●山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla

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