iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。
2024年11月末に実施したModel 3による横浜と岡山往復1500kmの旅の復路編です。往路の様子、車両や走行環境の基本情報などは、往路編の「悩ましき“充電器ガチャ”との闘い――納車4年目のテスラで挑む、『横浜→岡山』往復1500kmの旅【前編】」をお読みください。
往路では低燃費をたたき出しましたが、復路では、新東名高速道路の静岡区間において、できる限り120km/hをキープして走行したことによる通常時との燃費の差にも言及しています。また、趣味の城郭址巡りの写真も併せて紹介していますので、お楽しみ頂ければ幸いです。
●60〜90km弱が電費的に最も有利な速度
墓参りなどを終え、道中城郭跡を巡りながら横浜に帰ります。気温13度、好天の下、午前10時頃、岡山市の実家を出発し、一路、兵庫県朝来市の竹田城跡を目指します。バッテリー残量は67%です。Teslaナビのトリップアドバイザーによると、距離152kmでバッテリー残33%で到着とあります。計算上の電費は、168Wh/km(5.96km/kWh)です。電費優等生のModel 3にしてはよくありません。
山陽道→播但連絡有料道路→国道を経由するルートで上り基調であることや、この日は風が強かったので、トリップアドバイザーがそのあたりの各種パラメーターを考慮した結果なのかもしれません。ちなみに、復路では充電計画を意識しないで、目的地までの距離とバッテリー残量を両にらみしながら都度、スーパーチャージャー(SC)を利用して横浜を目指すつもりです。
途中、1回のトイレ休憩を挟み午後0時17分に竹田城跡見学の拠点である「山城の郷」に到着しました。竹田城跡を見学するためには、ここから巡回バスに乗り換える必要があります。
ここまでの距離152kmを平均時速65km、電力量18.52kWhで走破した結果、電費は、122Wh/km(8.21Wh/km)でした。くしくも前編で紹介した横浜から鈴鹿PAまでの電費と同じでした。そのときと同様に普段通りの走り方で、特に省エネ走行を意識したつもりはないのですが、Model 3の場合、60〜90km弱が電費的に最も有利な速度レンジのようです。
「天空の城」などと呼ばれる竹田城跡ですが、山城だけにプチ登山状態です。普段、運動というと犬の散歩程度なので、さすがに疲労困憊でした。しかし、石積みの専門集団である穴太衆が手掛けた野面積の石垣は見応えがありました。
天守台からの眺望は抜群です。壮大な石垣とも相まって「日本のマチュピチュ」といわれるゆえんです。1600年に廃城となり建物は残っていません。
●3年も乗っていると次の充電ポイントが肌感覚で分かる
約2時間の滞在の後、その日の宿を予約してある滋賀県の彦根に向けて出発します。ただ、バッテリーは40%まで減っています。途中で充電の必要があります。TeslaナビでSCの場所を調べると、彦根までの道中において、神戸北SCと茨木SCの2つ選択肢が存在します。茨木SCはイオンモールの駐車場に設置されています。
夕刻のイオンモール駐車場やその周辺道路は混みそうな予感がするので、住宅街にある神戸北SCで遅い昼食がてら充電することにしました。コメダ珈琲店の駐車場の一角にSCが設置されています。北近畿豊岡自動車道、国道、舞鶴若狭道、中国道などを経由して神戸北SCを目指します。外気温は約13度です。
神戸北SCへはバッテリー残18%で16時20分に到着し、約40分かけて95%まで充電しました。意図して95%に設定したわけではなく、コメダ珈琲店で食事と休憩を済ませModel 3に戻ったら95%だったのでそこで充電をストップして出発したという流れです。
3年以上もModel 3に乗っていると残り95%あれば、明日の城跡巡りの予定をこなした上で、帰路、愛知県か静岡県のSCで充電すれば、横浜の自宅まで帰ることができると肌感覚で分かります。
午後5時過ぎにファミリーロッジ旅籠屋 彦根店を目指して出発しました。宿は滋賀県愛知郡にあるので、正確には彦根とは言えないような気もしますが、翌日の最初の訪問先である安土城跡に近いのでここを予約しました。
途中のSAで仮眠を取ったため、宿に到着したのは午後8時頃になっており、この日は約374kmを走り電費は、129Wh/km(7.75km/kWh)、バッテリー残量73%での到着です。ちなみに、全国チェーンである旅籠屋の中には、一泊500円で200V/16Aの普通充電に対応したところもありますが、彦根店にはその設備はありませんでした。
●セントリーモードでバッテリーが減らない不思議
翌日は、外気温9度の中を朝8時に宿を出発し約12km先の安土城跡を目指します。バッテリーは73%で出発です。宿の駐車場では夜の間、セントリーモード(監視機能)をオンにしていました。ちょっと不可解なのは、セントリーモードはそれなりに電力を消費するという認識でいましたが、モニターのパーセント表示は前日の到着時の73%のままです。
一説には、セントリーモード機能中は常に約250Wの電力を消費し続けるといいます。ということは、12時間駐車しておくと約3kWhを消費するので計算上は約4%減でもおかしくはないはずです。ストップ&ゴーの多い市街地なら約15〜18kmの走行分に相当します。
Teslaは、2024.38.Xのアップデートでセントリーモードによるバッテリー消費を抑制するソフトウェアの改良を加えたというニュースがありました。しかし、それがModel 3に適用されたのかどうかはわかりません。リリースノートを見ても、それらしいことは記載されていません。
安土城跡では、約2時間かけてゆっくりと城の縄張りや石垣の積み方を見分しました。整然と並ぶ天守跡の礎石から地上6階建ての荘厳な天守に想像を巡らせるなど、幸せな時間を満喫できました。
●トリップアドバイザーの予測も万能ではない
午前11時前に安土城跡を出発し、琵琶湖畔の道路から琵琶湖大橋を渡り、大津市坂本の日吉東照宮を目指します。この付近は、穴太衆と呼ばれる戦国時代に活躍した石工集団の野面積みの石垣をたくさん見ることができます。折しも紅葉の時期と重なりそれ目当ての観光客がたくさん訪れていましたが、筆者は紅葉には目もくれず、石垣ばかりを写真に収めて悦に入っていました。
穴太衆の郷を出発し、徳川家康が築いた琵琶湖の浮城として知られる大津市の膳所城跡の湖中の石垣を時間をかけて見分していたらあっというまに午後3時近くになっていました。予定では滋賀県長浜市の小谷城跡まで足を伸ばすつもりでしたが、今からだと到着時には日が暮れてしまいます。今回は諦めて横浜を目指して出発します。
午後3時頃に、膳所城跡をバッテリー残量59%で出発しました。トリップアドバイザーによると217km先の遠州森町PAの外駐車場に新設された新デザインのSCでの充電をアドバイスしています。新デザインのSCを体験してみたかったので、その設定のまま出発です。遠州森町SCには残り19%で到着と表示されています。もっと電力を消費するかと思っていたのですが、気温が18度もあったのでバッテリーにはちょうど良い外気温だったのかもしれません。
ちなみに、この原稿を書いている2月下旬、Teslaアプリのトリップアドバイザーで、同じ条件で検索するとバッテリー残10%で到着と表示されます。11月末と比較して気温が10度近く低く、強風注意報が出ているためと思われます。Teslaのトリップアドバイザーが気象などのパラメーターを考慮して、アドバイスしていることが想像できます。
途中、トイレタイムや仮眠を挟み遠州森町SCに到着したのは午後7時でした。名古屋付近では夕刻の渋滞に巻き込まれたことから、平均時速は67km/hで電費は139Wh/km(7.2km/kWh)、バッテリー残量16%で到着です。トリップアドバイザーの予測より3%減でした。
予測下振れの原因はよく分かりませんが、急速充電に備え走行中バッテリーをあたためるプレコンディショニングによる消費が一因だと思われます。Teslaのログサービスである「TeslaFi」を確認すると、この行程においてプレコンディショニングが行程の約2割の時間でオンになっていたことが記録されています。
遠州森町SCはPAの外部駐車場に設置されているので、スマートICから退出する必要があります。再入場による横浜青葉ICまでの初乗り加算分は1120円です。
同SCは、簡単な工事でPA内駐車場と接続できる、そんな造りになっている印象です。日本では26年中に発売を開始するソニー・ホンダモビリティーのAFEELAもスーパーチャージャーに対応するそうです。12基という強気の設置数は、将来、SA/PA内の充電設備の他社開放もあり得るというTesla日本法人の先手を打った戦略なのかと想像したりもします。
●電費が悪化した「120km/h区間」
遠州森町SCでは、トレイを済ませ14分かけて30.24kWhを充電し、60%まで回復しました。さて、ここから駿河湾沼津SAまでの区間で120km/hの電費テストを行います。速度120km/hをなるべくキープして走ります。
ただし、後からログを確認すると平均速度112km/hでした。夜はトラックが多く、彼らは真ん中の走行車線をおおむね100km/h程度で走っています。その度にタイミングを見計らって追い越車線に出てトラックを追い越すのですが、後続車もありどうしてもアクセルを緩める場面があり、完全に120km/hをキープするのは困難な状況でした。かといって、延々と追い越し車線を走るのはルール違反です。
この区間の電費は160Wh/km(6.25km/kWh)でした。外気温は14度でタイヤの空気圧は2.9barとTeslaの推奨値です。往路の同区間は平均80km/h強で122Wh/km(8.2km/kWh)だったので、約24%の電費悪化です。単純計算で比較すると、平均80km/hの場合500km走破できるところが、120km/hでは380kmまで下落することになります。
電費優等生のModel 3ですらこれですからEVにとって高速時の電費悪化は宿命的なものなのかもしれません。高速域になるとモーターの効率が悪化し、空気抵抗が速度の2乗に比例して増すので、致し方ないでしょう。そういえば、ポルシェのEV「タイカン」は2速のトランスミッションを搭載しEVの弱点を克服しようとしていますが、高速電費はどうなのでしょうか。
駿河湾沼津SAから一般道を含む横浜の自宅までは、平均73km/hと通常運転に戻した結果、121Wh/km(8.26km/kWh)と電費優等生復活です。自宅には、22時30分頃に残り17%で到着しました。この日は、493.25kmを電力量66.67kWhを使って、電費135Wh/km(7.41km/kWh)で走破した計算になります。ちなみに、66.67kWhは、我が家の電気代の3日分に相当します(含む車両充電、年間平均からの算出)。
●給油なら10〜20分で済むところを充電は2時間18分
ところで、前編で約束した、スーパーチャージャー(SC)を使用せず、高速道路のSA/PAの充電器だけを利用した際のコスト比較の答え合わせをしましょう。結果は、一時退出しないでCHAdeMOだけを利用した方が約1000円安価だということが分かりました。
もっと安価になると予測していたのですが、約1000円という差額に止まったのは、おそらく、TeslaのCHAdeMOアダプターの出力上限が50kWに制限されていることが原因だと思います。そのため、SC並の充電量を確保しようとすると、90〜150kWの大出力機の恩恵を受けることができず、30分×4回の充電が必要になり料金が高額にならざるを得ないからです。
いくらゆっくり旅を掲げる筆者とはいえ、SA/PA内での充電に2時間を費やすのはちょっと抵抗があります。1000円程度の差額なら、一時退出をして深夜割引のリセットを受け入れても、SCを利用した方がユーザー体験としては正解であろうという結論を得ました。
さて、旅の総括です。1500kmの旅全体の充電料金、ガソリン車とのコスト比較、充電時間比較などの情報は、以下の表をご覧ください。
普段は新幹線を利用しているので、今回は約2年ぶりのModel 3での帰郷でした。オートパイロット(AP)のおかげで運転の疲れを感じることなく、快適な移動が可能だったのは言うまでもありません。
ただ、エネルギー補給に費やす時間比較という点では、ガソリン車だと回数も少なく合計10〜20分で済むところを、5回、2時間18分を充電に費やしているので、そこはEVの欠点と言えます。ただ、充電中は、SA/PAやSC近くのお店で食事を取ったりトイレ休憩をしているわけですから、単純に時間だけを比較するものではないという思いもあります。
そもそも、60歳代も後半になり70歳という通過点が見え始めた今、長距離移動において、目をつり上げて120km/hで攻めたり、パンパンに膨らんだ膀胱をだましながら1分1秒でも目的地に早く着こうなどとは思いません(笑)。実際、トイレ休憩のためだけに立ち寄ったSA/PAでも、土産店を徘徊したり、景色を楽しんだりして、気がついたら30分程度は普通に滞在しています。
そういった意味では、年を重ねた人のクルマ旅において、EVという選択肢は決してネガティブな体験ばかりではないでしょう。ゆっくり旅を実践する上で、振動や静寂性など、ガソリン車より優位な面も多いわけです。前編でも紹介しましたが、車中で仮眠をとる場合もエアコンが使えるので安眠できます。冬季や夏季の車中泊だって可能です。筆者は、7月の蒸し暑い長野でエアコンを効かせた車中泊を経験しています。
高速道路上の充電設備を管理・運営するe-Mobility Powerでは、昨今、以前とは比較にならない勢いで、90〜150kWhの高出力充電器を1つのスポットに対し複数器新設しています。また、サードパーティーが設置する市中の急速充電器も増加しています。従って、充電渋滞も起こりにくく、そういった面でのストレスや心配は改善されつつあります。Teslaの場合で言うと、国内のSCも120拠点を越え、今後も続々とオープンする予定です。
筆者の場合、長崎までModel 3で往復3000kmの長旅の経験があります。その後、九州を再度観光で訪れていますが、そのときは飛行機とレンタカーを利用しています。定期的な帰郷の際も新幹線を利用します。その方がタイパという面で有利だからです。
しかし、愛車での長旅は、公共交通機関を利用するのとは、まったく異なる体験を得ることができます。時間を犠牲にするだけの価値がそこにはあります。これからも、時間を作りModel 3を駆って長旅を楽しみたいと思います。
●【追記】冬期の航続距離は2割減
2024年末に兵庫県宝塚市に住む親族に不幸がありました。家族3人での移動であることや荷物があり、Model 3で横浜から出掛けてきました。好天に恵まれたものの、さすがに年末ということもあり、外気温は本稿の旅よりは日中で10度近く低いというEVには不利な条件でした。
結果的に電費は、往路で146Wh/km(6.84km/kWh)、復路で155Wh/km(6.45km/kWh)と本稿の旅との比較で2割程度悪化しています。3名乗車であることも影響(本稿の旅は1名乗車)しているとは思いますが、冬期は航続距離が減ずるという、これもEVの現実です。
著者プロフィール
●山崎潤一郎
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla