デジタル庁が防災分野のデジタル変革(DX)を進めている。スマートフォン向けの防災アプリなどがさまざまな事業者から提供されていることを受け、アプリ間でデータを連携する仕組みを構築する。マイナンバーカードに基づくデータを活用した避難者情報の把握など、自治体の業務効率化も進める。地震や豪雨などの災害時に円滑な支援の提供につなげる。
「ワンスオンリー」の実現―。防災アプリなどでのデータ入力が一度だけで済むことを指し、デジタル庁がアプリやサービスのデータ連携基盤を構築する目的だ。
防災意識の高まりを背景に多くのアプリが提供されている。一方で、必要なデータの入力に手間がかかるほか、誤字やデータの揺らぎも少なくない。公的認証を取り入れていないアプリでは、利用者本人かどうかを保証できず、アプリ間でデータを紐付けられないという。
そこでデジタル庁は、企業や自治体で構成する「防災DX官民共創協議会」と連携し、データ連携基盤を実用化する。「2026年度を目標に整備に着手できるよう取り組みを進める」(平将明デジタル相)方針だ。防災アプリを利用する際には、マイナカードによる認証を通じたデータ登録を想定し、データが別のアプリにも引き継がれる仕組みにすることで入力や申請の手間を減らす。公的認証を生かしたデータ連携を念頭に置く。
10年前に鬼怒川の水害が発生した茨城県常総市で実証実験を行ったのに続き、水害リスクが懸念される東京都江東区でも3月に実証実験を予定する。災害情報の通知機能などを持つアプリをはじめ五つの防災アプリを対象に、データをやりとりして同基盤の効果などを検証する。「何度も同じ情報を入力する負担を軽減し、被災者の状況に応じた適切な支援につなげる」(平デジタル相)ことを狙う。
またデジタル庁は災害情報を地理空間情報として共有する「新総合防災情報システム」と、同基盤との連携も視野に入れる。これにより国や自治体が集約した災害情報を提供し、防災アプリなどで活用してもらう。
またデジタル庁は災害に備え、自治体による避難者支援業務をデジタル化により効率化する。マイナカードなどを利用して避難者の行動履歴を把握し、可視化することを見込む。避難者の見守りに生かせるかどうかも検証する。
24年の能登半島地震では石川県の要請を受け、交通系ICカード「Suica(スイカ)」を使い、避難者の状況を把握する仕組みが緊急的に構築された。避難所や入浴サービスの受付などに活用し、自治体の対応を後押しすることにつながった。災害時には行政職員も被災しており、DXを通じた業務負担の軽減ニーズは高い。デジタル庁は石川県での取り組みを検証し、マイナカードで同様の仕組みを整える方針だ。
被災者の迅速な支援や復旧に向けて、円滑にデータを活用するスキームや制度整備は重要な要素だ。デジタル庁には防災DXで主導的な役割が求められる。