2025年大阪・関西万博はシンボルの大屋根リングや、国内外のパビリオンなどユニークな建築物が多い。膜構造物を手がける太陽工業(大阪市淀川区、能村祐己社長)は、同万博で20を超える建築物に関わった。1970年大阪万博で「膜」技術を開花させた同社は、今回も新たな膜の開発や特定施設を請け負うなど、裏方でさまざまな挑戦を行った。(大阪・広瀬友彦)
「膜材の設計技術、施工技術、評価方法が広がり、多くの新しい取り組みができた」。大阪・関西万博で多様な膜構造物の設計を統括した、太陽工業技術サポート課の平郡竜志氏は強調する。大屋根リングに採用された膜屋根は3分の2の工区を担い、膜面積で約6000平方メートル分を施工した。壮大な木造建築物に合う「天の川」をイメージした膜屋根を実現。汚れが付きづらい素材を使い、新しい設計システム構築で納期短縮にも貢献した。
世界最大面積で鮮やかな色彩を持つ西陣織で包まれた、飯田グループホールディングスと大阪公立大学の共同パビリオンにも関与。細尾(京都市中京区)が、ポリエステル繊維で西陣織を作り、太陽工業は織物から建築に使える膜構造物に加工した。建物内の複雑な鉄骨の骨組みもグループ会社で担当。大分県の協力会社で一度鉄骨を組んで検証後、万博会場に運んだ。「手間は相当かかったが、建物のインパクトは強い」と平郡氏は自信を見せる。
万博だからできる建築物の挑戦で、平郡氏は若手も抜てきした。落合陽一テーマ事業プロデューサーのパビリオン向けに鏡面仕様の膜を開発。京都府内の工場で10回ほど試作を繰り返した。設計や製作、施工は20代の若手が中心となり「今回の万博で成長できたと思う」と平郡氏は目を細める。
万博のサウナ施設を施工し、グループで運営まで手がける万博史上初とみられるサウナ施設も、太陽工業グループとして手がけた。軽量で自然光を透過する膜を使い、花びら形の施設の設計・施工から、期間中の運営も手がける。大阪ヘルスケアパビリオンの膜屋根にも採用した「ETFEフィルム」を使い、独自のクッション状にした。能村社長がサウナ好きだった縁もあり、実現に至った。サウナは11の儀式を参加者14人で体験する。
平郡氏は「開幕前は万博に対してネガティブな意見が多かった。来場者にはいろんなモノを見て体感し、万博を判断してほしい」と訴える。能村社長は「万博で当社のプレゼンスを高め、30年にサウジアラビアで開催する万博にも仕事でつなげたい」と意欲的だ。