【正解のリハビリ、最善の介護】#69
よくある介護の悩み(4)
トイレ=排泄に関する相談も多く寄せられます。自分で排泄の管理ができなくなると、汚染が進んで清潔を保てなくなり感染症などのリスクがアップします。何より「人間の尊厳」に関わってきますので、介護する家族にとって精神的に大きな負担になっているケースも少なくありません。本人の自尊心を保ったり、介助者の負担を軽減するためにも、できる限り自立を支援することが重要です。
「ひとりでトイレに行けなくなった」という場合、いくつか原因が考えられます。①脳卒中をはじめとした何らかの病気やケガによって脳や身体の排泄に関わる機能が障害されて起こるケース②フレイルやサルコペニアにより運動機能が低下してトイレに行けない、便座に座れない、下着の着脱ができないために起こるケース③認知症が進んでトイレの場所や使い方がわからない、尿意や便意を感じなくなる、排泄行為自体を理解できないケースなどです。
まずは、なぜトイレができなくなったかをきちんと評価して治療を行います。急性期の病気やケガによる障害であれば、適切な治療とリハビリを実施し、覚醒を良くして体力を向上させる訓練を行えば改善できます。フレイルやサルコペニアが原因になっている場合も、立たせて、歩かせて、トイレを繰り返し訓練すると、100歳でも自分でトイレができて自宅退院される方がおられます。このため、当施設ではすべての大部屋の隣にトイレを設置しています。
■認知症が進行している場合は難しい
ただし、病気やケガで脳の大部分が壊れて高次脳機能障害があり、何年も経過している場合では回復は厳しくなります。また、90歳以上の加齢によって肛門周囲の括約筋や骨盤底筋が衰えて、肛門や尿道の締まりが緩くなり漏れてしまうケースも難しいといえます。
認知症が進行してトイレに行けなくなっている場合も、尿意や便意、排泄そのものが理解できなくなってしまうため、改善は困難です。そうなると、どうしても尿や便を失禁してしまうことになり、治療ではなく介護となります。そうした方には、簡単に着脱できるおむつ=リハビリパンツとパッドを装着し、失禁したら自分で交換できるかどうかを試します。自分で取り換えられるようであれば自宅退院できますが、ひとりで交換できない方は家族やヘルパーの介助が必要です。それが可能なら、自宅での介護ができます。ただ、それも難しいとなると、施設での長期療養となるのが一般的です。
介護では、尿や便を失禁しても不潔にさせないために、おむつを何時間おきに交換すればいいかを把握することが大切です。最近はおむつの質が良くなっていますから、1日4〜6回くらいの交換で問題ない印象です。
ただ、起床後、朝、昼、晩の3食後、就寝前にそれぞれ交換すれば5回ですから、これだけでも介助者にとっては大きな負担でしょう。実際、家族によっては1日1回とか2日に1回しか交換しないというケースもあります。そうした家庭で介護を受けていた方が当院に入所されると、かなり汚染が進んだ状態ですので、まず入浴で清潔にして臭いをとることが最初の仕事になります。
冒頭で触れたように、汚染が進んで不潔になると生活がひどく荒れてしまいますし、感染症などの病気にかかるリスクもアップします。本人がトイレに行けず排泄管理ができなくなり、家族の負担が増大して自宅での介護が限界となったら、施設への入所をおすすめします。
(酒向正春/ねりま健育会病院院長)